春場ねぎの同名コミックを原作とするTVアニメ『戦隊大失格』(TBS系/毎週日曜16時30分)が4月7日より放送開始される。本作で主人公の戦闘員Dを演じる小林裕介は役柄の立場もあり、あえて収録現場でほかのキャストと少し距離を置いていたという。そんな理由があるとは知らず、現場で小林に積極的に話しかけていた桜間日々輝役の梶田大嗣は小林を尊敬し、現場でも頼っていたとのこと。錫切夢子役の矢野優美華も事務所の先輩である小林を信頼していた。そんな3人に作品についてや、アフレコ現場での様子をうかがった。

【動画】小林裕介&梶田大嗣&矢野優美華、『戦隊大失格』ファンへメッセージ

戦闘員Dは斜に構えている中学生くらいのノリ

――原作コミックを読んだときの印象を教えてください。

小林:ヒーロー対悪の組織という構図で、悪側に主の視点がある作品を僕はあまり見たことがなかったので、まずはそこに惹かれました。ヒーロー側も一筋縄ではいかぬ組織で、正義とは、悪とは何かを考えさせられる物語です。

矢野:戦闘員Dの逆転劇を描いていくアンチヒーローものかと思いきや、読み進めていくうちにテーマはひとつじゃないかもと思うようになっていきました。文学的な深さみたいなものもあって、社会風刺的な要素もある作品だと感じました。

梶田:自分にとっての正義とは何なのかを改めて考えるきっかけになった作品です。誰かが「この人は悪者だよ」と言っても、実際に会ってみないとその人の本質って分からないんですよね。一方で、「自分の正義はこれ」と思うものがあるなら、その決めた道を進むことの大切さも教えてくれるような作品でもあると思いました。

――ご自身が演じるキャラクターの紹介をお願いします。

小林:戦闘員Dは名前の通り、いわゆるモブ戦闘員です。擬態能力が他の個体よりも優れているくらいで、戦闘力は決して高くありません。他の個体と少し違うのは、組織の幹部が言っていた「世界征服」をやり遂げたいという意思が強い点。ただ、その「やり遂げたい」という想いは「絶対に叶えてやる」というより、「斜に構えている中学生くらいのノリで一戦闘員レベルの理想」と、さとうけいいち監督から現場でおっしゃっていただきました。僕の中では彼が幹部ぐらいの気持ちでいると思っていたので、監督の言葉を受けて、戦闘員Dの見方がまた少し変わりましたね。

矢野:夢子は竜神戦隊ドラゴンキーパー(通称:大戦隊)のイエロー部隊No.2の実力を持っているんです。戦闘力も高いのですが、目が真っ暗で、何を考えているのか分からない、ミステリアスな子なんですよ。でも、パフェパンケーキなどの甘い物が好きで、ちょっと抜けているかわいい部分もあると私は思っていて、夢子のかわいいところをみなさんにも見つけて欲しいなと思っています。

梶田:桜間日々輝は明るく真面目でまっすぐな熱い男です。ただ熱血というだけではなくて、Dくんとの出会いを通じて自分の進むべき道をしっかりと見定めて、無駄な争いで傷つく世界を変えていきたいという気持ちがあるんです。これだけ聞くと好青年のように思えますが、彼のまっすぐさはちょっと常軌を逸しているところがあって…。でも、何かを変えようと本気で思っている人って、どこか常識では測れないところがあると思うんです。演じるうえでは、ふつうの好青年に見えないよう意識していました。

戦闘員Dの歪みに共感した

――お互いが演じるキャラクターへの印象も教えてください。

矢野:私のなかの主人公って、すべての人々を幸せにするとか、自分のことよりも他人のために行動するというイメージがあったんです。でも戦闘員Dは周りの人がどうこうではなく、「自分がこうありたい、こうしたい」というのが主軸になっていて、がむしゃらにそれを実現しようとする姿が結果的に周りの人を動かしていくんです。ちょっと歪んでしまっているけど、逆にその歪みに共感できました。

梶田:分かる。

小林:日々輝は多くの人が思い描くであろう典型的な熱血ヒーロー。ただ、彼のバックボーンを知ったうえでそれを貫いていることを改めて考えると、僕のなかでは歪んだ正義のように感じて。何かが崩れている気がする危うさも感じました。夢子は何を考えているのかずっと分からない。1話から何とも言えない空気を醸し出していて…怖いっす(笑)。心の闇をいちばん抱えているのかもしれません。

矢野:日々輝くんは真っすぐです。自分の思ったことが正しいと信じていて、それを相手が受け入れてくれることで相手も幸せになるはずと信じている。意外と自分の身近にもいるタイプかもと感じました。濃いキャラクターだけど、そんなにファンタジーな感じはしない、人間らしい子だと思っています。

梶田:Dくんは応援したくなる主人公。勝ち目のない戦いに対してあがいていく姿を見て「がんばれ」と言いたくなるんです。夢子は、ミステリアスでパーソナルな部分が見えづらい。矢野さんとは昔から知り合いだったのですが、昔からお芝居がすごく上手で。普段は明るくて、お茶目な方なんですけどね。

矢野:お茶目(笑)。私たち、同じ養成所で2年間一緒に勉強していたんです。

梶田:実はそうなんです。だからこそ「負けたくない!」という気持ちもあったのですが、パーソナルな部分を活かしつつ夢子のミステリアスな部分を見事に演じている姿を見て、「あぁ、やっぱりすごいな」と思いました。

――おふたりのお芝居は先輩の小林さんから見ていかがでしたか?

小林:梶田くんは、もうまんま梶田くんだったよね。

梶田:それ、褒めてます!?

小林:うん、褒めてる。やっぱ自分をそのまま投影できるのが役者としていちばんいいと僕は思っているので。矢野に関しては…事務所の後輩ということもあってこれまでも色々と相談を受ける機会があったんです。そのなかでキャラクターに没入していく感覚は人一倍だと分かって。逆に「こうあるべき」と思って視野が狭くなるところがあったので、本作のアフレコで「もうちょっと視野を広く持った方がいいんじゃない?」とアドバイスしたんです。そこからは視野を広げつつも、彼女が思う夢子の魅力を芝居にさらに詰め込んでいっていると感じました。後輩を褒めるのもなんですが適応力があって、いい役者だなと思っています。

矢野:やったー! これ、音声データをずっと残しておきたいです(笑)。

■本作は戦闘員Dのリベンジ物語

――現場の雰囲気はいかがでしたか?

小林:さとう監督からは「ずっと敵地にいる緊張感を持っていて欲しい」と言われていました。それもあって、僕は「はじめまして」のキャストさんにも挨拶せずにいたんですよ。「無礼な奴と思われていないかな」とモヤモヤを抱えた状態でのアフレコだったので、疑似的にではありますが、緊張感を持って臨めた気がします。

梶田:そうとは知らず、グイグイいっちゃいました…。

小林:ちょっと困ったよ(笑)。でも、梶田くんはとても話しやすい人柄で、一緒に作品を作っていく上ではやりやすかったです。矢野は事務所の後輩なので、こうして共演できたのが嬉しかったですね。ただ、「大丈夫かな」と現場でチラチラ見ちゃって。通常の現場と比べて肩の荷が1.5倍くらい重かったです(笑)。

矢野:これだけの大役をいただけたのが初めてだったので緊張していたのですが、ふたりも知っている方が現場にいたので、安心してお芝居ができました。それでも、アフレコのときは不安になっちゃって…。そういうときは裕介さんに「不安だから隣に座ってください!」ってお願いしていました。裕介さんがいない日はマイク前で反復横跳びしたり、明らかにテンパっていましたね(笑)。

梶田:それはテンパっているね(笑)。僕も知り合いだった矢野さんがいたので、少し安心して現場に臨めました。ただ、矢野さんが裕介さんとの橋渡しをしてくれるかなと思っていたら、矢野さんは「裕介さん! 裕介さん!」って現場で頼りっぱなしで(笑)。

矢野:完全に周りが見えなくなっていました(笑)。

梶田:でも、裕介さんは本当に優しいんです。さきほどはなるべく馴れ合わないようにしていたとおっしゃられていましたが、僕が緊張していたら背中を叩いて「頑張ろう!」って言ってくださって。先輩の配慮で、自分の芝居に集中して臨むことができました。

――作品を楽しみにしているファンへメッセージをお願いします。

矢野:映像も音楽もキャストのお芝居もハイレベルなものになっています。関わるすべての方々が「いいアニメにしたい」と思って臨んだ集大成になっていると思いますので、ぜひご覧ください。

梶田:本作の魅力は、何といっても個性豊かなキャラクターたちによる群像劇。それぞれがそれぞれの正義と悪、自分の信念を持って行動しています。「自分の正義とは一体何なのか」この作品が、それを見つめ直す良いきっかけになるかもしれません。

小林:本作は戦闘員Dのリベンジ物語だと監督がおっしゃっていました。タイミングがかみ合って彼の思惑通りに事が進むこともあれば、全く違う形で裏切られてしまうこともあります。先の展開が容易に想像できないストーリーを楽しんでください。

(取材・文:M.TOKU 写真:小川遼)

 アニメ『戦隊大失格』は、TBS系ほかにて4月7日より放送。

(左から)梶田大嗣、小林裕介、矢野優美華  クランクイン! 写真:小川遼