6日にコパ・デル・レイ(国王杯)・決勝戦を控える中、アスレティック・ビルバオの主将MFイケル・ムニアインが、エルネスト・バルベルデ監督とともに前日会見に臨んだ。5日、スペイン紙『マルカ』が伝えている。

「非常に完成度が高く、バランスの取れたチームだ。若さと経験のミックス、度胸と個性のある選手たち…。僕がこれまでプレーしたなかで、最高のチームのひとつだと思っている」と“王様”は語る。2009年夏に16歳の若さでトップチームデビューを果たして以降、現代フットボール界と隔絶された、純血主義を標榜するアスレティック・ビルバオの体現者として第一線で活躍してきた。あれから約15年、31歳になったイケル・ムニアインが主要大会(2度優勝したスーペルコパ・デ・エスパーニャは該当せず)では5度目のファイナルに立つ。

 直近のラ・リーガは敗れたものの、公式戦ここ5試合で3勝1分1敗と好調のアスレティック・ビルバオ。前日会見に出席したムニアインは「気分は最高だ。やりたい試合に向けた準備ができている。チームは良い勢いにあるから、これに乗りたい」としつつ、「どのクラブであれ、誰もがタイトルを渇望している。僕にとっては5度目の決勝戦なんだ。これまでは勝つことができなかった。試合前にトロフィーに触れるか? いや、触れないよ。そういうのは関係ないと思うからね。今日まで4度決勝戦を戦ったけど、3回は触らず、1回は触った。でも、全てで負けている」と胸中を明かした。

 自身5度目の決勝戦となるムニアインだが、過去4度とは明確に異なる状況に置かれている。まず間違いなく、先発イレブンに名を連ねることはないだろう。2011-12シーズンのヨーロッパリーグ決勝戦、2019-20シーズンの国王杯決勝戦、2020-21シーズンの国王杯決勝戦はスタメン出場、また2014-15シーズンの国王杯決勝戦でも前十字靭帯断裂の大ケガによる負傷離脱さえなければ、スタートから出場していたはず。つまり、ムニアインが“戦術的な要素”からスタメンを外れるのは、今大会の決勝戦が初めてということだ。一昨夏に3度目の就任となったバルベルデ監督は、FWゴルカ・グルセタを頂点としたFWニコ・ウィリアムズ、MFオイアン・サンセト、FWイニャキ・ウィリアムズからなる前線のユニットで、強度とスピーディーなスタイルを洗練させてきた。その過程で、これまで“タメ”や“独特のリズム”で違いを生み出してきたムニアインが弾き出されることに。現に今シーズン、プレータイムは758分にとどまっている。

 それでも、例え試合に出られなくても、カピタンとしての振る舞いには目を見張るものがある。普段のトレーニング対する姿勢もだが、印象的だったのは、トップチームデビューを果たしたばかりのMFウナイ・ゴメスに率先してアドバイスを送ったとされることだ。自身のプレータイムよりも、同ポジションのカンテラーノのために行動できるところが、仰慕される理由のひとつだろう。今現在、ワン・クラブ・マンとして終えると見なされてきた将来を巡って、周囲が騒がしくなりつつある同選手は「個人ではなく、グループに焦点を当てたい。それはとてつもなく、信じられないほどの喜びになるだろうから。まずは試合だ。この先どうなるかはわからない。これまでの決勝戦と同じように受け止めているつもり。まるで初めてかのような興奮と、野心を抱いてね」と告白。続けて「かつての決勝戦とは役割が違う。全てに対して、準備をする必要がある。誰がプレーするにしても、状況は明確。チームに利益をもたらすために、各々が自分のプレーをするんだ。僕がチームを助けている姿を思い浮かべている。今はそれしか頭にはない」と強調した。

 さらに、今大会の優勝は“継承”という側面も持っていると口にしたムニアインは「このクラブの哲学が(自分の体には)脈々と流れているよ。僕らのようなベテランが、若手選手のアスレティックでの成長を手助けする必要があると。それが、このカップ戦優勝という夢を叶えることによって促されるのなら、なおさら良いね」と披瀝。また「長年に渡って学んだことがあるとすれば、それは旅を楽しむことだ。何度もがっかりしたこともあったけど、それも旅路であり、情熱を持って生きることで、格別なものになる。今度は僕たちが、そういうことを若い選手に伝えていきたい」と述懐している。

 4度の準優勝(ピッチに立っていたのは3回)、2度の前十字靭帯の大ケガと彷徨した日々も、飽くなき情熱で、意味のある旅路に変えてきたムニアイン。自身の苦悩や落胆、さらには次世代への継承をも抱える“王様”が進んだ先に見る景色は、ラ・カルトゥーハの夜空にクラブにとって40年ぶりとなる国王杯のトロフィーを掲げる瞬間なのだろうか。注目の一戦は、日本時間7日の5時にキックオフを迎える。

前日会見に出席した主将ムニアイン [写真]=Getty Images