歌舞伎俳優の市川團十郎4月4日(木)、都内で行われた歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」の取材会に出席した。

歌舞伎座の5月公演として開催される「團菊祭五月大歌舞伎」(5月2日初日~26日千穐楽)は、“明治の劇聖”とうたわれた九世市川團十郎と五世尾上菊五郎の偉業を顕彰するために始まった、長年ファンに愛される五月興行恒例の祭典。今回は昼夜二部制で行われ、昼の部では、九世團十郎に当てて河竹黙阿弥が書いた傑作『極付幡随長兵衛』を上演。江戸時代初期の浅草花川戸に実在し、日本の侠客の元祖と言われた幡随院長兵衛を主人公にした物語で、團十郎は襲名以降、初めて長兵衛役を勤める。

『極付幡随長兵衛』幡随院長兵衛=市川團十郎(当時 十一代目市川海老蔵2014(平成26)年5月歌舞伎座 写真提供:松竹(株)

長兵衛役は、2013年2月に死去した父・十二世團十郎から最後に教わった役。亡くなる前の2012年12月、稽古の様子を撮影したDVDを入院中の父に見てもらったといい、「私の本名の『堀越寶世へ』と手紙をつづってくれた。私がやっている幡随長兵衛への思いですとか、周りの部分はこういう風にしてもらったらいいと丁寧に書いてくれた。あまり褒めることはしない父でしたが、その時はめずらしく『悪くないんじゃないか』と」と回想。「その時のように、今回も頑張りたい」と決意を語った。

『幡随長兵衛』では、水野十郎左右衛門役の尾上菊之助と共演することが決定。取材会では、かつて“平成の三之助”として注目を浴びた尾上松緑の名前も挙げ、「今回も3人で何かやりたいという思いが強かったのですが、叶いませんでした」と少々、残念そうな表情。それでも、「菊之助さんとは先日も『勧進帳』で共演しましたし、松緑さんとは誕生日プレゼントを贈り合う仲で、皆さんが思うほど、仲は悪くないです(笑)。歌舞伎のために、何ができるのか、考え合える仲間でありたい」と絆を語った。

同じく昼の部では、四代目市川左團次さんの一年祭追善狂言として上演する歌舞伎十八番の内『毛抜』を上演し。團十郎は後見として、左團次さんの長男で、粂寺弾正役を勤める市川男女蔵を支えることに。「左團次さんには大変お世話になりました。市川宗家のためにどうあるべきか、考えてくださる方でしたし、左團次さんへのご恩を返さないといけないと思いまして、後見として見守らせていただきます。今回が限りではなく、これからもやれることをやりたい」(團十郎)。夜の部『伽羅先代萩』では、悪の魅力あふれる仁木弾正を演じることになっている。

『伽羅先代萩』仁木弾正=市川團十郎(当時 十一代目市川海老蔵)2017(平成29)年5月歌舞伎座 写真提供:松竹(株)

取材・文・撮影:内田涼

<公演情報>
歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎

2024年5月2日(木)~5月26日(日)
昼の部:11:00~
夜の部:16:30~
【休演】8日(水)、16日(木)
会場:東京・歌舞伎座

<昼の部>
一、鴛鴦襖恋睦(おしのふすまこいのむつごと)
おしどり

河津三郎/雄鴛鴦の精:松也
遊女喜瀬川/雌鴛鴦の精:尾上右近
股野五郎:萬太郎

二、歌舞伎十八番の内 毛抜(けぬき)
四世市川左團次一年祭追善狂言

粂寺弾正:男女蔵
腰元巻絹:時蔵
小野春風:鴈治郎
小原万兵衛:松緑
八剣数馬:松也
秦秀太郎:梅枝
錦の前:男寅
若菜:萬次郎
秦民部:権十郎
八剣玄蕃:又五郎
小野春道:菊五郎

後見:團十郎

三、極付幡随長兵衛(きわめつきばんずいちょうべえ)
河竹黙阿弥 作「公平法問諍」

幡随院長兵衛:團十郎
水野十郎左衛門:菊之助
女房お時:児太郎
出尻清兵衛:男女蔵
唐犬権兵衛:右團次
近藤登之助:錦之助

<夜の部>
一、伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)
御殿
床下

〈御殿〉
乳人政岡:菊之助
栄御前:雀右衛門
沖の井:米吉
八汐:歌六

〈床下〉
仁木弾正:團十郎
荒獅子男之助:右團次

二、四千両小判梅葉(しせんりょうこばんのうめのは)
河竹黙阿弥 作「四谷見附より牢内言渡しまで」

野州無宿富蔵:松緑
数見役:彦三郎
頭:坂東亀蔵
女房おさよ:梅枝
浅草無宿才次郎:萬太郎
伊丹屋徳太郎:巳之助
浜田左内:権十郎
うどん屋六兵衛:彌十郎
隅の隠居:團蔵
牢名主松島奥五郎:歌六
藤岡藤十郎:梅玉

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2450356

公式サイト:
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/874

無断転載禁止)

市川團十郎。歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」取材会より