厚生労働省から令和5年の『賃金構造基本統計調査』の結果が発表され、最新の会社員の給与事情が明らかになりました。今回は大卒学卒者の平均給与を紐解いていきましょう。

大卒時の平均給与が最も高い「鉱業、採石業、砂利採取業」だが…

厚生労働省令和5年賃金構造基本統計調査』によると、新規学卒者(未就業入職者のうち新卒の者)の平均給与を学歴別でみていくと、高卒で月18.68万円、大卒で月23.73万円、大学院卒で27.60万円でした。

大学新規学卒者について、男女別にみていくと、男性が24.03万円、女性が23.43万円。新卒の段階では、大きな男女差はみられません。

業種別にみていくと、最も平均給与が高いのは「鉱業、採石業、砂利採取業」で28.82万円。対して最も低いのが「サービス業(他に分類されないもの)」で21.99万円。新卒1年目であるものの、すでに7万円の給与差が生じています。

*廃棄物処理業、自動車整備業、機械等修理業、職業紹介・労働者派遣業など

【業界別「大卒新入社員」の平均給与】

鉱業、採石業、砂利採取業:28.82万円

建設業:24.06万円

製造業:23.34万円

電気・ガス・熱供給・水道業:22.67万円

情報通信業:24.44万円

運輸業、郵便業:24.84万円

卸売業、小売業:23.51万円

金融業、保険業:22.67万円

不動産業、物品賃貸業:23.69万円

学術研究、専門・技術サービス業:24.19万円

宿泊業、飲食サービス業:22.03万円

生活関連サービス業、娯楽業:22.49万円

教育、学習支援業:23.54万円

医療、福祉:25.14万円

複合サービス事業:20.55万円

サービス業(他に分類されないもの):21.99万円

ただし新卒時の給与水準のままとは限りません。業種別に全年代の平均給与をみていくと、最も高いのは、「電気・ガス・熱供給・水道業」で41.02万円。「学術研究、専門・技術サービス業」が39.66万円、「金融業、保険業」39.34万円と続きます。一方で最も平均給与が安いのが「宿泊業、飲食サービス業」で25.95万円。

高給を目指すのであれば、新卒時の給与だけでなく、その後の上昇幅にも注目することが重要です。

都道府県別に「大学新規学卒者の平均給与」をみていくと

続いて、都道府県別(男女計)にみていきましょう。トップは「秋田県」で26万7,700円。続く「山口県」は25万8,000円。「静岡県」「佐賀県」「埼玉県」と続きます。

一方で最も安いのは「鳥取県」で20万2,400円。続く「岐阜県」は20万7,000円。「長崎県」「徳島県」「高知県」と続きます。

都道府県別「大学新規学卒者の平均給与」上位5、下位5】

1位「秋田県」26.77万円

2位「山口県」25.80万円

3位「静岡県」24.98万円

4位「佐賀県」24.60万円

5位「埼玉県」24.49万円

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43位「高知県」21.11万円

44位「徳島県」20.95万円

45位「長崎県」20.81万円

46位「岐阜県」20.70万円

47位「鳥取県」20.24万円

1位と47位で6万円もの給与差が生じていますが、それ以上に気になるのが、昨年45位(20万2,200円)だった「秋田県」がトップになったこと。そこで、秋田県の大学新規学卒者を業種別にみていくと、「医療福祉」が平均33.57万円とずば抜けていることに気づきます。また「鉱業、採石業、砂利採取業」「電気・ガス・熱供給・水道業」「宿泊業、飲食サービス業」についてはデータはなし。元々、大学新規学卒者が少数なうえに、一部の業界、企業で給与水準が極端にあがったことで、全体の水準を上げたものと考えられ、来年以降の動向に注視する必要がありそうです。

【業種別・秋田県「大学新規学卒者の平均給与」】

医療福祉:33.57万円

卸売業小売業:24.56万円

サービス業(他に分類されないもの):23.2万円

情報通信業:23.18万円

建設業:22.38万円

金融業保険業:21.98万円

製造業:21.78万円

学術研究専門・技術サービス業:20.80万円

教育学習支援業:20.72万円

生活関連サービス業娯楽業:20.31万円

運輸業郵便業:19.92万円

複合サービス事業:19.74万円

不動産業物品賃貸業:16.24万円

いずれにせよ、入社1年目の段階で、業種や地域などにより、すでに大きな給与差が生じていることが分かりました。

――でも、仕事はお金よりもやりがいでしょ

――いや、福利厚生かな

――残業が少ないのが一番

などと、給与を二の次に考えていた人も多いのでは。株式会社ディスコが2023年度新入社員に行った『入社1年目社員のキャリア満足度調査』によると、新入社員の実に4割が転職を志向。そして転職を検討する理由は「収入を上げるため」が最多で36.5%でした。

*転職活動はしていないが検討中39.3%、現在転職活動中3.7%

どれほど“お金”にこだわるか、その度合いは人それぞれではあるものの、仕事である以上、対価となる給与は思っている以上に重要。社会人になってから、気付くことのひとつかもしれません。

[参考資料]

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』

株式会社ディスコ『入社1年目社員のキャリア満足度調査』