モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。4月3日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「上下水道、国土交通省の一元管理スタート」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。


※写真はイメージです



◆上下水道の一元管理がスタート 60年ぶりの機構改革

上水道の整備・管理が4月1日(月)付で、厚生労働省から、これまで下水道の整備や管理を担ってきた国土交通省へ移管。国土交通省による上下水道の一元管理が始まりました。

吉田上水道の整備や管理の業務を厚生労働省から国土交通省に移したことには、どのような狙いがあるのでしょうか?

塚越:まず上水道とは、飲み水に適した水を供給する水道と、そのための水道管やポンプといった設備全般を指すものです。上水道に関連する業務は、これまで厚労省の管轄でした。一方の下水に関しては国土交通省の管轄です。

なぜ上水道厚労省管轄なのかというと、上水道厚労省の管轄だったのは私たちの健康にとって、とても重要だったからです。明治時代の初期(19世紀後半)には、汚染した水で感染症の「コレラ」が流行して、多くの人の命を奪いました。日本国憲法にも「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と書かれているとおり、公衆衛生は私たちが健康な生活を送ることにとって重要です。

そこで1957年に「水道法」が制定され、全国に水道が普及します。1950年には、26.2%だった水道普及率が高度経済成長もあり一気に拡張され、2021年末の時点で98.2%まで普及しています。これによってコレラや赤痢などの水系感染症患者は激減しました。つまり、水道は人間の健康に関わるものという認識だったので、上水道の普及を担当したのが今の厚生労働省(当時の厚生省)ということです。

ただ、現在は水道管が老朽化し、維持管理が難しい自治体があります。そこで、地方整備局を持つ国交省に事業を移管することで、インフラ整備や災害対策を進めようとなったわけです。上水道と下水道で管理が国交省に一元化されることになりますが、こうした改革はおよそ60年ぶりです。つまり水道は公衆衛生というより、インフラ整備の対象になるということです。一方で、上水道業務のうち水質や衛生に関する業務は環境省に引き継がれます。

◆老朽化する水道管 今のペースだと更新に100年以上かかる?

吉田:水道管の「老朽化」の現状は、どうなっているのでしょうか?

塚越:上水道は急速に普及したため、課題がたくさんあります。厚労省によれば、2020年度の段階で法定耐用年数の40年を超えた上水管の割合は「20.6%」。また、全国の主要な水道管の耐震適合率(耐震化率)について、2022年度末時点の全国平均は42.3%で、前年から1.1ポイントしか上昇しておらず、補強が進んでいないことが見て取れます。

全国平均で42.3%ということですが、都市と地方では格差がありますし、さらにこれは主要な水道管の割合なので、全体で見るとちょっと厳しい状況です。

では水道管の維持は誰がしているのかというと、上水道業務は主に市町村などが、独立採算制の公営企業として運営しており、基本的に税金ではなく私たちの水道利用料でやりくりしています。ただ、その事業者は全国に1,300ほどあるものの、電気やガスに比べて規模も小さく、職員も少ないです。

災害が生じると結構大変で、例えば能登半島地震でも上下水道の管路の破損によって、一時は断水が最大13万戸超におよんだということです。昨今は設備の老朽化で、年間2万件を超える水漏れや破損事故が生じており、大規模な災害が発生すると長期の断水も多くなります。

さらに人口減少や節水家電の普及で水道収入は低下しており、基本的に水道収入で人件費や維持費を賄っているため、財源不足で老朽化対策がなかなか進まないということです。

さらに、水道管の更新には1kmあたり1億〜2億円かかるとのことで、現在のペースだとすべてを更新するのに140年かかると言われていますが、その間に全部が老朽化してしまいます。今回の管理移管によって、関係者からは国交省から災害対策などの名目で資金が増え、整備が進むのではという期待の声もあるということです。

国土交通省による一元管理のメリット

ユージ国土交通省が管理することで、水道管の老朽化対策は進むと思いますか?

塚越:そうですね。移管の理由の1つに、一元的に支援ができることが挙げられています。もともと国交省は道路や河川の管理もしているので、インフラ整備のノウハウが活かせるということです。ネットワークのある国交省市町村支援を円滑におこなえると考えられます。

また災害に対しても、国交省への移管によって通称「災害負担法」(公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法)という法律に水道事業が追加されます。この法律は災害復旧費用に対する国の補助に関するもので、従来が2分の1ところ、法律が適応されると基本的に補助が3分の2になります。つまり災害があったときに国からの補助が増えます。

◆「水道水をそのまま飲める国」は世界で10ヵ国程度あるが…

ユージ上水道の管理を国土交通省がおこなうことについて、塚越さんはどうご覧になりましたか?

塚越:基本的にはいいことなのかなと思います。しかし、「公衆衛生」と経済の両立がどうなることかな、という思いもあります。国交省は民間にいろいろ任せようという動きをしているようなのですが、今すぐ全部を民間に任せることにはならないにせよ、いずれそうなったらどうなるでしょうか。水は健康にとって大事なので、そこの調整がこれから大事かなと思います。

いずれにしても世界で水道水をそのまま飲めるのは10カ国程度なので、日本は恵まれています。しかし、お金の話で曲がり角にきているので、「水と空気は無料」という時代が続くのは厳しいかなと、頭に入れておいてほしいです。


吉田明世、塚越健司さん、ユージ



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4月3日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年4月11日(木) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/
国土交通省による「上下水道」一元管理スタート、災害対策・水道管老朽化対策におけるメリットは? 専門家が解説