いまや軽量級屈指のスーパースターとなった井上。彼のもたらす収益はライバルたちにも影響を与えている。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

 稀代の天才ファイターがもたらす影響は計り知れない。ボクシング世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)のそれだ。

 来る5月6日東京ドームWBC1位のルイス・ネリメキシコ)とのタイトルマッチを行う井上。同会場でボクシングの世界戦が実施されるのは、1990年にヘビー級王者のマイク・タイソン(米国)がジェームス・ダグラス(米国)と対戦して以来3度目。まさに歴史的な一戦と言える。

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 それだけに世界からの関心度は高い。すでに米スポーツ専門局『ESPN』と英衛星放送『Sky Sports』という大手放送局が生中継を決定。放映権料など日本開催ながら莫大な収益が生まれると予想されている。

 実際、井上との試合が生み出す“ジャパンマネー”はライバルたちの人生を一変させてきた。22年12月にバンタム級4団体統一戦を行なったポール・バトラー(英国)もそのうちの一人だ。

 試合結果は文字通りの惨敗だった。当時WBOのバンタム級王者に君臨していたバトラーだったが、ゴングが鳴ると同時に防戦一方。試合後に井上が「勝つ気があるのか」と苛立ちを隠さなかったほどに打ちのめされると、11ラウンドに強烈な左ボディーからの猛ラッシュを受け、リングに沈んだ。

 為す術なく敗れ、王座からも失墜したバトラー。だが、敵なしの王者だった“怪物”に挑んだ価値はあった。来る5月11日に行われるノルベルト・ヒメネス(ドミニカ共和国)との一戦に向け、米ボクシング専門サイト『Boxing Scene』の取材に応じた35歳は、井上との試合をしみじみと振り返っている。

「正直に言って今の自分はボクシングをする必要はない。幸いにもイノウエのおかげで住宅ローンは1円たりとも借りていない。だから、無理をしてまで、このスポーツをやっている必要はないんだ。でも、もう一度、タイトルを獲りたいし、頂点に立ちたいからやっているんだ。そこはお金とは何の関係もない」

 昨年7月に東京・有明アリーナで行われたスティーブン・フルトン(米国)とのWBC&WBO世界スーパーバンタム級2団体統一戦は、両陣営の合計で約10億円という軽量級史上最大の収益を生み出したとされる。

 コロナ禍だった21年6月のマイケル・ダスマリナスフィリピン)戦以降、日本開催を続けている井上は、米メディアや一部の選手から批判も受けているが、そこには怪物の恩恵を受けようとするライバル側の思惑もあると言えよう。

 バトラーの証言が示すように、国際的に見ても異次元の市場価値を誇る井上。その存在はやはり稀有だ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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