現行デザインのマイナンバーカード
現行デザインのマイナンバーカード

デジタル庁が発表した次期マイナンバーカード。デザイン刷新、名称も変更されつつ、これまでの問題点はどのように改善されるのか? そして本年度中に開始されるという運転免許証や各種証明書との連携などマイナンバーカードの新機能を解説します!

★新マイナンバーカードはここが変わります!
新デザインでは氏名の【漢字】と【フリガナ】が併記され、これまでトラブルの原因となっていた"フリガナと漢字が一致しない問題"を解消させる。現行カードの【性別】表記はなくなり、データとしてICチップに内蔵。このほか、ICチップには【氏名】【生年月日】【住所】【カラーの顔写真】データも内蔵され、それらを新スマホアプリで読み取りも可能となる予定だ。

【画像】新デザインのマイナンバーカードほか

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■次期カードはトラブルが完全消滅!?

3月18日デジタル庁は『次期個人番号カードタスクフォース最終とりまとめ』として、2026年以降に登場予定の次期マイナンバーカードのデザインや新機能などを発表。2024年度はマイナンバーカード運転免許証の一体化、iPhoneシリーズへのマイナンバーカード機能の搭載など、アップデートが盛りだくさん。

そんなマイナンバーカードの最新事情を、ITジャーナリストの三上 洋さんに解説してもらいます!

――まず、デジタル庁が発表した次期マイナンバーカード最終案のスペックとは?

三上 券面の表記的な違いは、【フリガナ】と【ローマ字】が表示されることです。これまでマイナンバーカードの氏名欄は【漢字】、もしくは希望した場合には【点字】表記されているだけで、フリガナはありませんでした。

一方、日本の銀行口座は【カタカナ】表示が基本なので、マイナンバーカードとの照合ができませんでした。これにより、他人の銀行口座がひもづけられるミスや、子供のマイナンバーカードに親の口座をひもづけるなどのイレギュラーが発生していたのです。

フリガナの記載は次期マイナンバーカードだけではなく、現行のマイナンバーカードも、24年度の戸籍法の改正後は、カードの更新時にフリガナが表記されるようになります。

これまでのマイナンバーカードにまつわるミスは、行政側のデータの照合・入力といった人海戦術的な作業から発生することが多く、カードにフリガナを表記するだけでも、これらのミスは発生しにくくなると思われます。

新デザインのマイナンバーカード(表)
新デザインのマイナンバーカード(表)

新デザインのマイナンバーカード(裏)
新デザインのマイナンバーカード(裏)

――このアップデートは歓迎されるやつです! ほかにも表記的に変化する部分は?

三上 新券面からは【性別】の表記がなくなります。これらを読み込むためのスマホ用の新アプリも配布される予定で、専用の端末を持たずとも各種契約や行政機関での本人確認がスムーズに行なえるようになります。また、券面の生年月日を和暦から西暦表記に変更、【日本国 JAPAN】の表記も追加されます。

――デジタル庁の発表だと、マイナンバーカードの名称変更も盛り込まれていますよね。

三上 そもそも「マイナンバー」と「マイナンバーカード」が混同され続けているという問題があります。マイナンバー日本国内に住民票のある人、全員に付与される番号です。それに対してマイナンバーカードは、〝マイナンバーが記載された公的身分証明証〟であり、ICチップと暗証番号によって本人確認ができるカードです。

基本、マイナンバーカードは身分証としての位置づけなのですが、その部分が周知されていません。現在でも「国民を管理するためのカードだ!」と感じている人がいるほどです。

なので、身分証明証

――そんな中、河野太郎デジタル大臣が自身のXで「マイナンバーカード運転免許証の一体化は、2024年度中にスタートします」と発表。これはマイナ保険証のようにいろいろと混乱が予想されるのでしょうか?

三上 運転免許証に関しては現在のカード型と、マイナンバーカード一体型の併用が可能です。なので「カード型の免許証が使えない!」というトラブルは発生しません。

――運転免許証の一体化によるメリットは?

三上 運転免許更新で「優良運転者講習」があります。これをオンラインで受講することが可能になります。すでに、一部の都道府県では試験的に行なわれています。

――メリットとしてはちょっと地味かと!

三上 はい(笑)。結局、更新時は警察署や免許更新センターに行く必要もありますから。ただ、マイナンバーカード運転免許証の一体化は、将来的にはその機能を〝スマホに内蔵する〟というロードマップになっています。なので、スマホに内蔵されてからが機能向上の本番でしょう。

マイナンバーカードと運転免許証が2024年度中に一体化!
マイナンバーカードと運転免許証が2024年度中に一体化!

運転免許証はマイナンバーカードと一体化されるだけではなく、マイナンバーカード機能をスマホに実装する「モバイル運転免許証」として早い段階で実現予定。今年6月からは医師、歯科医師、薬剤師など各種国家資格もデジタル化される予定となっており、iPhoneシリーズへのマイナンバーカード機能の搭載が待たれている
運転免許証はマイナンバーカードと一体化されるだけではなく、マイナンバーカード機能をスマホに実装する「モバイル運転免許証」として早い段階で実現予定。今年6月からは医師、歯科医師、薬剤師など各種国家資格もデジタル化される予定となっており、iPhoneシリーズへのマイナンバーカード機能の搭載が待たれている

――でも、まだiPhoneでマイナンバーカードの機能が利用できませんよね。

三上 河野大臣は自身のXで「iPhoneはもうちょっと待ってね」と投稿しています。この〝もうちょっと〟の具体的なスケジュールは不明ですが、早ければiOSのアップデートが行なわれる今年9月。

内容的にはすでにAndroid端末で行なわれている「スマホ用電子証明証搭載サービス」と同じで、『マイナポータルアプリ』からの各種証明書の申請、それをマイナンバーカードなしでコンビニで交付するなどがメインとなる予定です。

――最後に、三上さん的に心配な部分とは?

三上 これまでのマイナンバーカードにまつわるトラブルは、大半が人為的ミスです。マイナンバーカード自体にはセキュリティ上の致命的な欠陥もありません。次期マイナンバーカードは人為的ミスを防止できるアップデートかつセキュリティ面をより強化した仕様となっています。

私としては次期マイナンバーカードよりも、全国平均4.6%(今年1月)というマイナ保険証の利用率のほうが問題だと思っています。マイナ保険証の根本的な問題は、紙の保険証の廃止ありきで進め、「任意取得」のマイナンバーカードに一体化するという方針自体に矛盾があることです。

この問題をクリアする思い切った方針転換をしないとマイナ保険証は普及せず、トラブルを解決するアップデートを行なうことも難しい。次期マイナンバーカードではカードの仕様よりも、政治的判断が重要になると思います。

――何かと叩かれることの多いマイナンバーカードですが、新カードとシステムはトラブルゼロでお願いします!

取材・文/直井裕太

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