4月、新入社員が今年もやってきました。そこで「驚きの新入社員」の記事の中から、反響の大きかったトップ10を発表。第10位の記事はこちら!(初公開2019年4月11日 集計期間は2018年4月~2023年12月まで)
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 新年度が始まったばかりで、ネットではすでに「新入社員だけど、もう会社辞めたい」という書き込みも見かける。

 それを見て「去年入ってきた新入社員は3カ月も経たないうちに辞めましたね」とため息を漏らすのは、電子部品メーカーに勤める会田正樹さん(仮名・33歳)。社内ではグループリーダーを務める会田さんが、その新入社員と会ったのは昨年のことだった。

 新卒(大卒)が1年で辞めてしまう率は11.9%(2018年10月、厚生労働省発表)。会田さんも、すぐ辞めた新人を何人か見てきたが、去年の新入社員・Y川(23歳)は特にすごかったという。

入社式に母親と…嫌な予感がした

「まず最初に驚いたのが、母親と一緒に入社式に来たことです。親同伴で来るなんてネットだけの噂かと思っていたので本当にいるのかよ……と、ドン引きを超えて、もう失笑でしたね。僕も一応、式で軽い挨拶をしたですが、式が終わるや否やその母親が僕のところに来て『どうかよろしくお願いします』と言ってきたんです。その必死になっている母親の横で、当の本人は我、関せず……みたいな顔をしていました」

 母親と入社式に来た男、それが会田さんとY川との出会いだった。最近は、入社式に親同伴OKの会社も増えているそうだから、全体に過保護化しているのかもしれない。

「Y川は、見た目はちょっと暗そうなどちらかというと陰キャ寄りな印象。まぁ、この業界はそういう奴も少なくないのでそこは特に気にしませんでした。で、入社して数日経ったある日、僕より1つ下で新入社員の研修などを行うチームリーダーがいるんですけれど、そいつが業務後に僕に相談があると言ってきたんです。で、話を聞いてみると『Y川が仕事中にすごい寝ている』と……。

 入社して数日で寝るとはいい度胸だなと思いましたが、まぁ最近まで学生だったし慣れるまで時間がかかるのかなと思い、後日Y川には『気を付けてね』と軽く注意したんです。Y川は『あ、すいません』とボソッと言うだけで反省の色がまるで感じられませんでしたけれどね。これがさとり世代か……とちょっとイラッとしながらも、僕もウルサイ上司と思われたくないので、その時はそれで終わったんです」

 しかし、それで終わらなかった。次に報告を受けたのは提携している会社からだった。

「取引先のマネジャーから突然電話が来て『会田くんのとこの新人のY川って子が、研修中に寝るんだよね』と言われたんです。オイオイ、勘弁してくれよ……と思いながら、またもやY川を呼び出して『取引先で寝るのはマズイよ』と注意すると、またもや『あ~、すみません』の一言! さすがの僕も『次はナイからね』と釘を刺しておいたんです」

 さすがにY川も反省したのか、それからは寝ることがなくなったという。しかし……。

◆寝坊をきっかけに退職

「忘れもしません。あれは去年のW杯の日本vsポーランド戦。試合が夜の11時からだったので就業後、部下達に『サッカー見て遅刻するなよ~(笑)』と注意していたんです。僕はその日、仲の良い友人たちとスポーツバーで試合を見ていて、試合が終わったあと家に帰りました。

 帰って少し寝て出社するとY川の姿が見当たらない。その日、僕とY川は提携先の工場に出向する日で、提携先の送迎車が迎えに来ていたんです。送迎の運転手にも『Y川くんって子来ないね』と言われて……。『そうですね~』なんて言いながら、内心『アイツ、殺してやろうか……!』と思っていましたね」

 結局、Y川から連絡が来たのは正午を過ぎてからだった。

「昼休憩中に僕の携帯に電話がかかってきて『すみません、寝坊しました』と言うんです。理由を聞いたら案の定、サッカーを見ていて家に帰れなくなって朝まで飲んでいたとのこと。自分の会社で遅刻するならまだしも出向での寝坊はさすがにナイと、僕も『お前、フザけんなよ!』とかなり強めに説教をしたんです。

 Y川は『すみません。今から行きます』と言ったのですが、提携先の工場は車でしか来れないような場所。自力で来るのはさすがに無理なので『もうイイ。今日は休んでいいよ』と言って電話を切りました。それから、Y川の姿を見ることはありませんでしたね」

 入社してわずか3カ月足らずで飛んだ新入社員。そんな新入社員を多く見てきたと会田さんは語る。

「見た目がチャラ男みたいのだったらまだ対応もできるけれど、最近はY川みたいに見た目はオタクだけれど不真面目みたいな奴が多いので、どう注意していいか分からないんですよね。新人が研修期間を経て使えるようになるまで、会社は給料やら研修費用で約120万円を使うんですよ。どうせ飛ぶんだったら初日で飛んでくれたほうがまだ負担が少なくてマシですね……」

 今後入ってくる新元号「令和」の新入社員達は、果たしてどのように育っていくのだろうか。〈取材・文/カワノアユミ〉

【カワノアユミ】
東京都出身。20代を歌舞伎町で過ごす、元キャバ嬢ライター。現在は夜の街を取材する傍ら、キャバ嬢たちの恋愛模様を調査する。アジアの日本人キャバクラに潜入就職した著書『底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる』(イーストプレス)が発売中。X(旧Twitter):@ayumikawano

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