エース伊藤匠七段、大混戦逃げ切り鮮やかすぎる逆転勝利!関東B・渡辺明九段絶賛「今大会のベストバウト」/将棋・ABEMA地域対抗戦

 永世称号を持つ名棋士からも思わず「今大会のベストバウト」とお墨付きが出る名局が誕生した。日本全国を8つのブロックに分けた団体戦で行われる「ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治」本戦トーナメント準決勝第2試合、関東B 対 中国・四国が4月6日に放送された。第2局では、まもなく始まる叡王戦五番勝負で自身2度目のタイトル戦出場となる伊藤匠七段(21)と、振り飛車党のエース菅井竜也八段(31)が対戦。最終盤まで勝敗の行方がもつれる大熱戦に、視聴者からも絶賛の声が相次いだ。

【映像】今大会ベストバウトと言われた名局・最終盤

 伊藤七段は、八冠保持者の藤井聡太竜王・名人(王位、叡王、王座、棋王、王将、棋聖、21)と同学年。開催を間近に控えた叡王戦では、この天才棋士と3度目のタイトル戦を戦うことになっている。段位こそまだ七段ながら、もはやタイトル戦の常連候補にもなっており、藤井竜王・名人の八冠独占状態を切り崩す可能性を持つ棋士の一人に数えられている。

 勢いに乗る若手棋士だが、超早指しの今大会でも絶好調。タイトル経験者もずらりと並ぶ関東Bにおいて、チームを予選突破に導いた立役者にもなった。するとこの試合でも先発棋士の1番手を任され、第1局では剛腕にして曲者の糸谷哲郎八段(35)と対戦。圧倒的な早指しでプレッシャーをかけられる中、しっかりと耐え切って勝利。チームを勢いに乗せる1勝目を持ち帰った。

 そして続く2局目が大激闘だった。中部・四国の2番手、菅井八段は現役棋士の中ではNo1.と言っていい振り飛車の使い手。伊藤七段の先手番で始まった一局は、伊藤七段が居飛車・穴熊、菅井八段が三間飛車・美濃囲いという対抗形になった。序盤は経験豊かな菅井八段がペースを握るものの、伊藤七段もABEMAの将棋ソフト「SHOGI AI」が示す最善手を連発し、徐々に挽回。終盤の入口を迎えても形勢はほぼ互角だった。

 ここから激しい切り合いにもつれ込むと、抜け出したのは菅井八段。一気に勝率90%まで追い込んだと思えば、さらに進んで一時は伊藤玉に即詰みが生じるところまでになった。ただ、ここで伊藤七段にとって幸いしたのが、菅井八段の持ち時間の少なさ。秒に追われたところで寄せ切れなかったところ、一気に形勢が逆転。千載一遇のチャンスを逃さなかった伊藤七段が、再逆転は許すまいと正確な指し手を続けて見事な逆転勝利を飾った。

 終局直後の伊藤七段は「終盤かなり負けにしてしまって、なんで勝てたのかよくわからない将棋でした」と驚くほど。解説の黒沢怜生六段(32)も「二転三転した将棋で、終盤にドラマが生まれました。秒読みの将棋は非常に難しい。手に汗握る大熱戦でした」と振り返った。

 この1勝を含めて計3勝を挙げた伊藤七段の活躍もあり、関東Bは決勝に進出。試合後、監督・渡辺明九段(39)は、全9局を振り返った上で「どれも手に汗握る将棋。特に伊藤匠君と菅井さんの、最後の終盤戦は今大会のベストバウトにあがるくらいの、素晴らしい将棋だったかな」と大絶賛していた。

◆ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治 全国を8ブロックに分けた「地域チーム」によって競う団体戦。試合には監督とチームから選ばれた出場登録棋士の4人の計5人が参加可能。試合は5本先取の九番勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。試合は1試合以上出場する「先発棋士」と、チームが3敗してから途中交代できる「控え棋士」に分かれ、勝った棋士は次局にも出場する。先発棋士は1人目から順に3人目まで出場し、また1人目に戻る。途中交代し試合を離れた棋士の再出場は不可。大会は2つの予選リーグに4チームずつ分かれ、変則トーナメントで2勝すると本戦進出。ベスト4となる本戦は通常のトーナメント戦。
(ABEMA/将棋チャンネルより)

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