北朝鮮外務省は5日、国連人権理事会第55回会議で北朝鮮の人権状況改善を求める決議が採択されたのを受けて次官談話を出し、「内政干渉行為を断固糾弾、排撃する」として猛反発。

同理事会では4日、欧州連合(EU)が提出した決議案を17年連続で採択した。決議は北朝鮮強制労働などの人権侵害を通じて違法な核・ミサイル開発を進めていると問題視しているほか、北朝鮮当局が血道を上げる「韓流摘発」の非道性にも言及している。

2020年12月に制定された反動思想文化排撃法――別名「韓流取締法」の最高刑は死刑であり、諸外国では考えられないことだ。また死刑にならずとも、違反者はきわめて非人道的な扱いを受ける。

たとえば、違反者は身体がボロボロになるほど凄惨な取り調べを受けることが少なくない。拷問を受けているであろうことは明らかだ。公開裁判に引き出されてくると、見守る人々は息を飲むという。

2022年5月には、韓国映画を見たことがバレて逮捕された女子大生2人が、そうした目に遭わされた。特に彼女たちの場合、見た作品がマズかったと言えるかもしれない。

2017年に公開された韓国映画『コンフィデンシャル/共助』。北朝鮮の捜査員が韓国に派遣され、現地の刑事とともに犯罪グループを追うスパイアクションだ。北朝鮮の捜査員は人気スターのヒョンビンが演じており、決して北朝鮮の人々を卑下するだけの作品ではないのだが、コミカルな役作りがされていただけで、当局の不快感を誘ったようだ。

公開裁判で、うなだれて震える2人の姿を見た人々は「見てはいけないものを、なぜ見たのか」と憐れむばかりだったという。

また、こうした非人道的な扱いをされるのは、10代の高校生も同様だ。女子高校生らがひどい姿で引き出されたという証言はいくつもあるし、男子高校生に至っては複数人が処刑されたとの報道もある。

金正恩総書記とその家族、側近たちも含め、現在の北朝鮮に、韓流をいっさい見ていない人が果たしてどれだけいるだろうか。おそらくは、ほんの一握りに過ぎない。彼らもいずれは自分たちの行動のばかばかしさに気付くと期待したいのだが、本当にそんな日が来るかどうか、確信を持てないのが率直なところだ。

北朝鮮の公開裁判(デイリーNK)