ドン・キホーテの「はしれるパンプス」(2739円)が好調だ。2022年10月25日に発売したところ、23年3月までの売り上げが計画比300%増という大ヒットを記録。発売から1年以上経過した現在も人気商品の1つだという。誕生の経緯を、同社開発担当者に聞いた。

【画像】ドンキ「パカパカ」「カツカツ」しないパンプス(全9枚)

 はしれるパンプスは、「疲れやすい」「かかとが靴擦れしやすい」「ヒールのカツカツという音が気になる」など、従来のパンプスへの不満を解消した商品だ。タイプはワイドヒールフラットの2種類あり、カラーは、ブラック、ブラック(スウェード)、ベージュの定番カラー3色を用意した。

 以前、同社が販売していたパンプスは複数のカラーを展開していたが、売れるのは定番カラーが多かったという。そうした販売実績と社内の女性に実施したアンケート結果から、人気が高いブラック(スムース)、ブラック(スウェード)、ベージュのみにしぼってカラー展開している。

 サイズは、ワイドヒールフラットどちらも23センチ~24.5センチの4サイズ。あえて4サイズに絞り込んでいる理由について、開発担当者は「売り場スペースの都合と、サイズレンジを絞り生産数を確保することで低価格を維持するためです」と説明する。

●女性主体の商品企画チームが発足

 はしれるパンプス誕生のきっかけは、ドン・キホーテが21年12月に立ち上げた女性主体の商品企画チーム「me&do(ミー アンド ドゥ)」だ。「当時入社7年目の女性社員から『ドン・キホーテには女性のお客さまもたくさん来ていただいているのだから、もっと女性に響く商品や販売方法を考える必要がある』という声が挙がり、プロジェクトが始まりました」(開発担当者)

 プロジェクトメンバーは、部署や役職、年代など関係なく集められた約20人の社員で構成されている。「ワタシたちの本当に欲しいモノをつくりました!」をコンセプトに商品開発をしており、はしれるパンプスは同プロジェクトにおける第1弾商品の1つだった。

●女性がパンプスで悩んでいたことを追求

 はしれるパンプスの開発は22年1月頃にスタート。開発に際し、プロジェクトメンバーに従来のパンプスへの不満を募った。「クッション性が低く、疲れやすい」「歩いているときのカツカツ音が気になる」「蒸れやすい」「パンプスの上の部分が固く、歩いていると痛い」「スニーカーなどに比べて、かかとが靴擦れしやすい」「かかとが脱げやすくてパカパカする」といった声が集まった。

 歩きやすさを実現するために着目したのが、ソール(靴底)部分だ。開発担当者は「ソールに屈曲性の高いしなやかな素材を使用しています。こうすることで、パンプスの見た目の美しさを維持しつつ、歩きやすくしました」と説明する。

 ヒール部分にも工夫を施した。「ヒールを従来品に比べて太くし、接地面を広くしました。ちゃんとヒールに見えるのに歩きやすくなっています」(開発担当者)。また、消音ヒールを採用し、歩いたときのカツカツ音を抑えるようにした。

 パンプスの内部には、従来の1.5倍の厚さ(同社比)がある「むっちりインソール」を搭載。これにより足裏のクッション性が向上し、長時間歩いても疲れにくいようになったという。かかと部分には靴擦れ防止パットを入れることで、パカパカ脱げにくく、かつ靴擦れが起きにくいように仕上げた。

●はしれるパンプス、次の一手は?

 はしれるパンプスの「はしれる」は、あえて平仮名にしているのだという。「社内会議で『走れる』と記載するとちょっとかたいイメージになるとの声があがりました。柔らかいイメージをもたせるため、平仮名を採用しました」(開発担当者)

 半年ほどの開発期間を経て発売したところ、約5カ月間の売り上げが計画比300%増という大ヒットを記録。全国359店舗で展開しているが、特に駅近郊・繁華街やオフィス周辺での人気が高いという。

 現在、ドン・キホーテの靴カテゴリーでは、「スニーカー心地のラクすぎビジネスシューズ」が大ヒット中だ。ヒットの要因として「革靴のように見えるけど、圧倒的に軽くて疲れにくい、まるでスニーカーのような履き心地」が挙げられる。「このビジネスシューズの機能とはしれるパンプスを組み合わせた『ラクすぎパンプス』が作れないか検討中です」(開発担当者)

どんなパンプスなのか(提供:ゲッティイメージズ)