リラックスできるコーヒータイムが大好きだ」という人は少なくありません。

また、「眠気と戦い、作業に集中するためにコーヒーを飲む」という人もいるでしょう。

そんな世界中で愛されているコーヒーには、もしかしたら病気の再発を防止する効果が秘められているかもしれません。

オランダのワーゲニンゲン大学(WUR)に所属するアビソラ・M・オイエレレ氏ら研究チームが、1日に3~5杯のコーヒーを飲む大腸がん患者は、将来再発する可能性が低くなると報告したのです。

同研究では、1日に数杯のコーヒーを飲むことで早期死亡のリスクすら低減できるとも述べられています。

研究の詳細は、2024年2月12日付の学術誌『International Journal of Cancer』に掲載されました。

目次

  • 「コーヒーは大腸がんの発症リスクを低下させる」かもしれない
  • コーヒーを1日に4杯飲む人は、大腸がんの再発リスクが32%も低い

「コーヒーは大腸がんの発症リスクを低下させる」かもしれない

コーヒーの摂取は大腸がんの発症リスクを低下させるかもしれない
コーヒーの摂取は大腸がんの発症リスクを低下させるかもしれない / Credit:Canva

これまでに行われたいくつかの研究により、コーヒーの摂取と大腸がん(CRC)の発症リスクの低下には、何らかの関係があると考えられています。

例えばある研究では、「毎日1杯以上のコーヒーを飲む人は、コーヒーを飲まない人に比べて大腸がんのリスクが11~17%低下する可能性がある」と報告されています。

また別の研究では、ステージ3の大腸がん患者が、1日当たり4杯以上のコーヒーを飲むと、コーヒーを飲まない人に比べて生存率が向上すると報告されました。

このような研究がいくつか存在する一方で、それらをまとめたあるメタ分析では、「関連性が見つからない」という結果が出ており、必ずしも結果が一致しているわけではないようです。

大腸がんの発症やその症状には、コーヒー飲用量以外の要素が大きく関わってくるため、コーヒーだけの効果を抽出するのが難しいのでしょう。

コーヒーの成分が大腸の腸内細菌叢を変化させるのかも
コーヒーの成分が大腸の腸内細菌叢を変化させるのかも / Credit:Canva

「なぜコーヒーの摂取が大腸がんの発症リスクを低減するのか」という疑問について専門家たちは、コーヒーに含まれる抗酸化作用が関係している可能性を考えています。

コーヒーは酸化ストレスを軽減する調節因子(Nrf2) を活性化する作用があり、これががんの特徴を予防する効果があるというのです。

また腸内細菌叢を変化させ、がんの増殖を防ぐ可能性があるという説も提案されています。

さらに、コーヒーには肝臓機能を改善する効果があることが示されています。

肝臓は大腸がんから転移しやすい部位の1つであるため、専門家たちは、大腸と肝臓の関連性にも注目しているようです。

こうした背景から、現状では、コーヒーには大腸がんの発症リスクを低下させる可能性があるが、その効果やメカニズムには不明な点も多く、さらに多くの研究が必要だと言えます。

そこで今回、オイエレレ氏ら研究チームが着目したのは、コーヒーの摂取が大腸がんの再発リスクにどのような影響を与えるのか、という点でした。

コーヒーを1日に4杯飲む人は、大腸がんの再発リスクが32%も低い

大腸がんの再発率は30%と言われており、そのほとんどのケースで、手術をしてから5年以内に生じます。

研究チームは、コーヒーの摂取に大腸がんの発症を防ぐ効果があるのであれば、再発防止にも何らかの影響をもたらすと考えました。

そこで、オランダ人の大腸がん患者(ステージ1~3)の1719人を対象に、治療中また治療後の観察研究を行いました。

大腸がん患者たちのコーヒーの摂取と再発に着目し、その関連を分析したのです。

コーヒーを1日4杯飲む大腸がん患者は再発率が低かった
コーヒーを1日4杯飲む大腸がん患者は再発率が低かった / Credit:Canva

その結果、1日4杯以上コーヒーを飲む患者は、1日に2杯未満しか飲まない患者と比べて、6年間で病気が再発する確率が32%も低いという結果になりました。

またこの研究では、1日に3~5杯のコーヒーを飲むと、あらゆる原因の死亡率が低下することも分かりました。

それらの人は、コーヒーを2杯未満しか飲まない人と比べて、死亡率が約29%も低下していたのです。

しかし、飲み過ぎてもダメなようで、1日に6杯以上飲むと効果は下がっていきました。

そのため研究チームは、コーヒー摂取量は1日あたり3~5杯が最適で、再発リスクが最も低いのは「1日4杯」だと結論付けています。

ちなみにこの1杯ってどのくらいの量なのか? というのは気になる点ですが、これはアンケート調査の結果を利用しているため、具体的な量は明らかではありません。ただマグカップで飲んでいると答えた人は1.5杯とカウントされています。

チームは、コーヒーが大腸がんの発症リスクを低下させるのと同じメカニズムで、再発リスクもまた低下するのではないか、と推測しています。

コーヒー好きのあなたは、もしかしたら大腸がんになりにくいのかも。ただし飲み過ぎには注意。
コーヒー好きのあなたは、もしかしたら大腸がんになりにくいのかも。ただし飲み過ぎには注意。 / Credit:Canva

とはいえ今回の研究だけでは、コーヒーが直接大腸がんの再発リスクを低下させているのか、それともオランダのコーヒー愛飲者に共通する別の要因がそうさせているのか、はっきりとしたことは分かりません。

これまでの研究を含めて考えると、「コーヒーの摂取は大腸がんの発症と再発のリスクを低下させるかもしれない」とだけ言えるでしょう。

さらなる研究が必要ですが、食後や休憩時にコーヒーが欠かせない「コーヒー好き」にとっては、少しうれしい情報かもしれませんね。

全ての画像を見る

参考文献

Drinking Coffee Dramatically Lowers The Risk of Bowel Cancer Coming Back
https://www.sciencealert.com/drinking-coffee-dramatically-lowers-the-risk-of-bowel-cancer-coming-back

Coffee consumption may reduce colorectal cancer recurrence, all-cause mortality
https://www.healio.com/news/hematology-oncology/20240328/coffee-consumption-may-reduce-colorectal-cancer-recurrence-allcause-mortality

元論文

Coffee consumption is associated with a reduced risk of colorectal cancer recurrence and all-cause mortality
https://doi.org/10.1002/ijc.34879

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

1日4杯のコーヒーで大腸がんの再発リスクが大幅に低下する可能性