カラパイアの元の記事はこちらからご覧ください

 今年3月カナダアルバータ州にある小さな町で、愛犬を連れた通行人が、1匹の秋田犬(アメリカン・アキタかもしれない)に襲われてケガをした。だがこの犬が通行人の愛犬を襲ったのにはわけがあったようだ。

 実はその場所から少し離れた荒れ地のところで、2日前にその秋田犬の飼い主(61歳)が溝に落ち、怪我をしまま動けなくなっていた。

 寒冷地のカナダの中でも寒暖差が激しい現地の気温は、夜は氷点下17度まで冷え込んでいた。そんな中、この犬は飲まず食わずで、時にはコヨーテと戦いながらずっと主人を守っていたのだ。

 秋田犬は極度の緊張状態と疲労で、近づいてきたこの犬をコヨーテと同様に敵と認識してしまったのかもしれない。あるいは飼い主の危機を知らせようとしたのかもしれない。

 だが結果的にこの行為が飼い主を救出することにつながる。

【画像】 散歩中の犬が秋田犬に襲われる

A dog named Hero saves his owner's life

 事件は3月28日の朝、アルバータ州南部にあるテイバーという小さな町で起こった。

 町はずれを散歩していたカーティス・ダール氏と愛犬のジャックが、突然現れた秋田犬に襲われたのだ。(原文では秋田犬とあるが、アメリカン・アキタの可能性もある)

・合わせて読みたい→犬は確かに、飼い主を助けたいという気持ちを持っている(米研究)

 ジャックの首に噛みついた犬を振りほどくため、ダール氏は10分ほどその犬と格闘する羽目に。その結果、噛まれたジャックだけでなく、ダール氏も指先を縫うほどのケガを負ってしまった。

 手当を済ませたダール氏は、危険な犬を探すためもう一度現場に戻り、警察にも通報して協力を依頼した。

犬を探し出すため駆けつけた警察官が助けを求める声を聴く

 現場に駆けつけたオースティン・ウェイン巡査は、道路脇でぐったりとしていた犬を見つけ、近づいて口笛を吹いてみた

 すると口笛に応えるように、犬の向こうから人間の叫び声が聞こえた気がした。その場所は、草が高く生い茂り、道路からもよく見えない場所だった。

 驚いた巡査がもう一度口笛を吹くと、今度ははっきり「助けてくれ、下にいるんだ!」という声がした。草をかき分けて下を見ると、そこには仰向けに横たわる男性の姿が!

2

ケガをして動けなくなっていた61歳の男性を発見

 この男性は溝の中でケガをして動けなくなり、なんと丸2日間、愛犬に守られて助けを待ち続けていたのだ。

・合わせて読みたい→飼い主が倒れた!2匹の犬が見事な連携プレイで助けを求め救助に成功

 溝は背の高い草に邪魔されて、道路側からは見えなかった。さらに現場は郊外にある工場近くの荒れ地で、冬場はめったに人も通らない。夜にはコヨーテもうろついており、危険極まりない状況だった。

 そんな中、秋田犬は冷たいぬかるみの中で動けなくなった飼い主の身体に寄り添い、暖めながら守り続けていた。

1

 たまたま通りかかったジャックを襲ったのは、極度の緊張状態と疲労から、敵と認識してしまったからなのかもしれない。

 あるいはこの犬に飼い主の危機的状況を知らせるため、極端な行動に出たのかもしれない。

20240404_194421 (4)_batch

飼い主を救った犬の名は「ヒーロー」

 警察の手で救助された男性は、すぐに地元の病院に運ばれ、低体温症の治療を受けた。

 男性にはもともと肩に持病があり、溝で転倒した際、立ち上がることができなくなってしまったのだという。

 同時に彼を守っていた愛犬も保護され、男性が回復するまで地元の動物保護団体Taber Lost Paws Societyのもとに預けられた。

 この犬の名前は「ヒーロー」といい、その勇敢で愛情深い行動にふさわしい名前だと話題になった。

 団体の代表代理アラナ・マクフィーさんがヒーローを獣医に診せたところ、疲れ切っている以外はかすり傷程度で、特に健康上の問題はなかったそうだ。

20240404_194421_batch

もう1匹の愛犬も無事に保護される

 その頃、男性の家の庭では、もう1匹の秋田犬(アメリカン・アキタの可能性も)「トラ」も保護されていた。

 彼女は足をひどく引きずっていたが、以前に骨折した際に治療で埋め込んだロッドのネジが、緩んでしまっていたようだ。

 後に男性が警察に語ったところでは、ヒーローといっしょにこのトラも彼に寄り添い続けてくれたという。

 どうやらトラは、男性が落ちた現場と自宅とを何度も行き来した結果、治療器具のネジが緩んでしまい、庭にとどまっていたようだ。

事情を知り、ヒーローを「許す」と語るダール氏

 だが、ヒーローに襲われたダール氏と、彼の愛犬ジャックのケガも小さなものではなかった。

 そこでマクフィーさんはクラウドファンディングを立ち上げて、ダール氏とジャックの治療のために寄付を募ることにした。

 このファンディングには開始後の48時間で3,000カナダドル(約335,000円)近い支援が寄せられ、治療費としてダール氏に届けられたそうだ。

 当日、現地の気温は氷点下17度まで下がったという。

 ダール氏がこの朝ジャックを散歩に連れて行かなければ、男性は発見されることなく、命の危険にさらされる事態になったかもしれない。

 ダール氏は事情を知ると、ケガをさせられたにもかかわらず、ヒーローを許すことにした。

 そして飼い主が無事に救助されたことを喜び、「あの時、現場に戻って通報して本当に良かったよ!」と話しているそうだ。

References:Dog named 'Hero' kept stuck owner warm and safe from coyotes for 2 days: police / Dog Named Hero Saves Owner’s Life for Days, Fighting Off Cold and Coyotes and Getting Help By Andy Corbley -Apr 2, 2024 / written by ruichan/ edited by parumo

 
画像・動画、SNSが見られない場合はこちら

氷点下17度の荒野で2日間飼い主を守り続けた秋田犬、紆余曲折の末飼い主を救う