2024年4月6日(土)紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて、こまつ座 第149回公演『夢の泪』が開幕した。

本作は、井上ひさしが新国立劇場のために書き下ろした「東京裁判三部作」の第2作目として、2003年に上演されたもの。「東京裁判三部作」は、01年『夢の裂け目』、06年『夢の痂』とともに、「戦争」そして「東京裁判」を当時の市井の人々の生活を借りて見つめ、「東京裁判」の、そして「戦争」の真実を改めて問う作品群だ。日本人として避けては通れない硬質な問題を提起しながらも、笑いと音楽をふんだんに盛り込み、数々の名曲を生んだ本シリーズ作品。初演から20年以上を経て、今回こまつ座で初上演となる。

演出の栗山民也、出演のラサール石井、秋山菜津子よりコメントが到着した。

演出 栗山民也

左より、粕谷吉洋、藤谷理子、ラサール石井、瀬戸さおり、板垣桃子、久保酎吉、秋山菜津子

左より、粕谷吉洋、藤谷理子、ラサール石井、瀬戸さおり、板垣桃子、久保酎吉、秋山菜津子

何度もベルリンの街を歩いた。日本での生活で、気持ちが完全に萎えてしまうような時は、迷うことなくベルリンへと向かった。その街は間違いなく記憶の刻まれた場所で、行くたびに過去の様々な人や風景の記憶が、目の前にはっきりと現れる。
「夢の泪」の初日を前に、劇中の心に強く残った言葉のうち「ほんとうの日本史が書かれる」という一つのセリフが、何度となく頭の中を巡る。この国は、自分たちのほんとうの歴史にちゃんと向き合ってきたのだろうか。稽古をしながら考えた。
朝、テレビをつけるとどこも瓦礫の街。この地球の上の現実の風景だ。この公演は、ただ過去を描いたものではない。今、何を見つめるべきか、そんな問いが見えてくるとても大事な作品に思う。何かと出会える場になりますように。

ラサール石井 / 伊藤菊治役

左より、板垣桃子、ラサール石井

左より、板垣桃子、ラサール石井

いよいよ初日、沢山稽古したにも関わらず、これほど不安で緊張する初日は長い演劇人生でも初めてです。
今日は朝に鎌倉の井上先生のお墓参りして来ました。一緒に行きましょうと申し上げたので、劇場にいらしてると思います。頑張りまーす!

秋山菜津子 / 伊藤秋子役

左より、久保酎吉、秋山菜津子

左より、久保酎吉、秋山菜津子

稽古も後半に入った頃、演出の栗山さんが仰った 『いま、こんな戯曲はどこにもないよ。』という言葉が、
初日が近づくにつれ、ひしひしと身体で感じ始めているところです。そのような貴重な作品を多くの方に観ていただきたい、若い方にも知ってもらいたいと心から願っております。そして、キャスト、スタッフのパワーをもって観客の皆様にこの作品をしっかりとお届けできるよう、頑張るのみです。

あらすじ

左より、久保酎吉、粕谷吉洋、前田旺志郎、ラサール石井、瀬戸さおり、秋山菜津子

左より、久保酎吉、粕谷吉洋、前田旺志郎、ラサール石井、瀬戸さおり、秋山菜津子

昭和21年4月から6月にかけて、新橋駅近く、焼け残りのビルの1階にある「新橋法律事務所」。
弁護士・伊藤菊治は、7回も司法試験に落ちたものの女性弁護士の草分けで腕利きの秋子と結婚、亡父の開設した法律事務所での仕事に追われる毎日。だが唯一の欠点でもある、女性に弱いことが原因で2人は離婚寸前。継父を慕う秋子の娘・永子は、両親や敗戦後の日本人の行く末に不安を感じている。

左より、ラサール石井、秋山菜津子

左より、ラサール石井、秋山菜津子

左より、粕谷吉洋、ラサール石井、瀬戸さおり

左より、粕谷吉洋、ラサール石井、瀬戸さおり

前田旺志郎、土屋佑壱、粕谷吉洋、久保酎吉、藤谷理子、板垣桃子

前田旺志郎、土屋佑壱、粕谷吉洋、久保酎吉、藤谷理子、板垣桃子

そんな事務所では、復員兵で夜学に通う田中正が事務所に住み込みで働くことになるが、どうも永子を秘かに想っているらしい。永子の幼なじみの片岡健も永子宛の恋文をもって現れる。健の父親は新橋を仕切るやくざに対抗する朝鮮人組長で、どうやら重傷を負ったらしい。と、隣の第一ホテルの将校クラブで歌うナンシー岡本とチェリー富士山が乱入してきた。お互いの持ち歌の著作権を争って大喧嘩、法律事務所に決着をつけてもらおうと飛び込んで来たのだった。

左より、板垣桃子、ラサール石井、藤谷理子

左より、板垣桃子、ラサール石井、藤谷理子

左より、板垣桃子、藤谷理子、粕谷吉洋、久保酎吉

左より、板垣桃子、藤谷理子、粕谷吉洋、久保酎吉

左より、瀬戸さおり、秋山菜津子、久保酎吉

左より、瀬戸さおり、秋山菜津子、久保酎吉

そんな折、秋子が東京裁判においてA級戦犯・松岡洋右の補佐弁護人になるよう依頼されて事務所に戻ってくる。事務所の宣伝のため、とりわけ秋子との関係修復のため、菊治も勇んで松岡の補佐弁護人になることに。亡父の仲間だった老弁護士・竹上玲吉に細かい民事事件などを手伝ってもらうことにしたのだが、こと東京裁判に関しては、裁判そのものの意味や弁護料の問題など難問が山積みである。ついにはGHQの米陸軍法務大尉で日系二世のビル小笠原から呼び出しが菊治にかかる。

左より、藤谷理子、瀬戸さおり、板垣桃子、久保酎吉、ラサール石井、秋山菜津子、前田旺志郎、粕谷吉洋

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左より、ラサール石井、土屋佑壱

左より、ラサール石井、土屋佑壱

左より、前田旺志郎、瀬戸さおり

左より、前田旺志郎、瀬戸さおり

左より、藤谷理子、粕谷吉洋、板垣桃子

左より、藤谷理子、粕谷吉洋、板垣桃子

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左より、久保酎吉、秋山菜津子、瀬戸さおり

左より、久保酎吉、秋山菜津子、瀬戸さおり

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