昨年末からぶつぶつと意味不明な言葉ばかりを呟くようになったボイジャー1号だが、NASAはついに老いた探査機が正気を失っていた原因を特定できたそうだ。
復活したら奇跡とまで言われ、いよいよお別れの時かと心配されていたボイジャー1号。
だが今回ようやく原因が突き止められたことで、遠く離れた老探査機を正気に戻し、恒星間宇宙のミッションを再開できる見込みが出てきたようだ。
NASAが特定した不具合の原因は、機体に搭載された「フライト・データ・システム(FDS)」の「メモリ」のハードウェアそのものが壊れているというもの。
「フライト・データ・システム(FDS)」とは、ボイジャー1号に内蔵される各種科学機器からのデータと、機体の状態に関するデータを集める装置だ。
FDSはこれを1つにまとめて「遠隔測定変調ユニット(TMU)」に引き渡す。すると、TMUがこれを地球に送信。こうして私たちは、ボイジャー1号が今いる恒星間宇宙の様子を知ることができる。
ところが現在FDSとTMUとの通信がうまく機能していない。そのおかげでTMUから送られてくるデータが、不可解な1と0の繰り返しになってしまっているのだ。
ボイジャー1号の身に起きた異変の原因を究明するべく、NASAのチームが3月初めに特殊な呼びかけをしたことは前回お伝えしたとおり。
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この呼びかけは、普段とは違う手順で壊れたデータを迂回するためのもので、これに対するボイジャー1号からの返事を彼がまだ正気だった頃のデータと比較することで、何がおかしいのか調べることができる。
そして、この試みがうまくいったのだ。ついに判明したボイジャー1号がおかしくなった原因は、FDSのメモリの一部が破損してしまっていることだ。
この読み出しデータによって、FDSメモリの約3%が破損し、コンピュータが正常に動作できない状態になっていることが確認されました(NASA)
image credit:Caltech/NASA-JPL
ついに奇跡が起き、元気になれるかも
なぜメモリのハードウェアが壊れてしまったのかは不明だ。
NASAの推測によると、宇宙を飛び交うエネルギー粒子がチップを破壊したか、46年もの間ずっと動作し続けたことで摩耗したか、どちらかではないかという。
老いたボイジャー1号の異変の原因がはっきり特定された今、NASAのチームは壊れてしまったメモリハードウェアなしでFDSを正しく動作させる方法を探している。
[もっと知りたい!→]「聞こえた、そっちだね!」ボイジャー2号、地球からの大きな声に反応し交信を再開することに成功
それができれば、ボイジャー1号は再び正気に戻り、太陽系の外の宇宙について新たな情報を地球に伝えてくれることだろう。本当に奇跡が起きるかもしれない。
47年に渡り、ひとりぼっちの宇宙の旅を続けているボイジャー1号は今、地球から約244億km離れた星間空間にいる。
生みの親であるNASAの献身的な愛情と諦めない心、そしてボイジャーの冒険を応援する地球の大勢のお友達の思いを感じ取ってくれたら、元気を出してくれるはずなんだ。
宇宙空間で知り合った新たなお友達もいるかもしれないしね。
References:Engineers Pinpoint Cause of Voyager 1 Issue, Are Working on Solution – Voyager / NASA engineers discover why Voyager 1 is sending a stream of gibberish from outside our solar system | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo
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