長らく続いていた“一強時代”に終止符が打たれようとしている。

 バイエルンは現地時間6日に行われたブンデスリーガ第28節でハイデンハイムと対戦した。前節終了時点で首位レヴァークーゼンとの勝ち点差は「13」に拡大し、トーマス・トゥヘル監督が「レヴァークーゼン、おめでとう」と発言するなど、リーグ12連覇達成は極めて厳しい状況に。それでも、逆転優勝への僅かな望みを繋ぐために、是が非でも勝ち点「3」の獲得が求められる一戦となった。

 敵地に乗り込んだバイエルンは序盤からボール保持率を高め、ハリー・ケインとセルジュ・ニャブリのゴールで2点を先行しゲームを折り返した。しかし、後半開始早々の50分に1点を返されると、その後わずか1分足らずで同点ゴールを献上。79分に逆転を許すと、その後の反撃も不発に終わり、2-3の逆転負けを喫した。この結果、この日勝利したレヴァークーゼンとの勝ち点差は「16」に拡大。シャビ・アロンソ監督の下で今シーズン未だ無敗を維持するチームが次節ブレーメンに勝利すると、その時点で初優勝が決まる状況となった。

 今から約1年前、バイエルンユリアン・ナーゲルスマン監督(現:ドイツ代表)を解任し、後任としてトゥヘル監督を招へいした。当時クラブのCEO(最高経営責任者)を務めていたオリヴァーカーン氏は、指揮官交代について「パフォーマンスの激しい変動は、今シーズンだけでなく、今シーズン以降の私たちの目標に疑問を投げかけるようになった」と説明。しかし、トゥヘル監督はブンデスリーガ11連覇こそ達成したものの、迎えた今シーズンは不安定な戦いが続き、2月には当初2025年6月末までとなっていた契約を1年前倒しで解消することが発表された。

 かつてバイエルンで公式戦通算410試合に出場した“闘将”こと元西ドイツ代表MFローター・マテウス氏はドイツメディア『スカイスポーツ』にて、トゥヘル監督体制での古巣について「彼はチームを強化できず、多くの人を敵に回した。選手には安心感が必要だが、DFラインの現状を見ても、監督の優先順位が分からない。そうしたことによって生じた不安がチームに持ち込まれている。彼は自分の信じるチームを作ることができなかったんだ」と言及。指揮官の手腕に疑問符を付けた。

 一方で、現場レベルだけでなく、クラブ全体としての問題点を指摘する声もある。かつてバイエルンで公式戦通算157試合に出場し、ドイツ代表で主将も務めたミヒャエル・バラック氏はドイツ誌『キッカー』にて「ここ数年、バイエルンではいくつかのことが上手くいっていない。責任者たちはハングリー精神を取り戻し、ヒエラルキーや給与体系を安定させるために、レバーを引く必要がある。そのためにチームとしっかり向き合わなくてはならない」と前置きしつつ、次のようにコメントしている。

「2年間でナーゲルスマンとトゥヘルという2人のトップコーチを解雇した。今になって、ラルフラングニックを起用し、クラブを再編したいという話を聞くが、彼らは2年前にナーゲルスマンで既にそれを試みているんだ。彼のクオリティーを高く評価し、長期的な視野で物事を進めるかと思っていたが、時間を与えず、わずか1年半でプロジェクトの失敗を宣言した。その後、トゥヘルを招へいしたが、上手くいかなかった。だからこそ、クラブは全体的な状況を見極めるべきだと思っているよ」

 2回戦で敗退したDFBポカールに続き、リーグタイトルの獲得も極めて困難となったバイエルン。現地時間9日にはアーセナルとのチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝ファーストレグに臨む。

リーグ12連覇が絶望的となったバイエルン [写真]=Getty Images