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 オーストラリアで瀕死の状態だった野生のカササギフエガラスを、犬を散歩中の飼い主が保護したのは2020年のこと。家で看病しているうちに犬と鳥の間に深い友情が芽生えた

 犬のペギーは我が子のようにカササギフエガラスのモリーかわいがり、実際に子犬が産まれた後も、子犬たちとも仲良く暮らしていて、その微笑ましい様子はSNSを通じて世界中のファンが見守っていた。

 だがここにきて悲しい出来事が起きた。オーストラリアでは野生動物の扱いに関する厳しい法律がある。家族は野生動物であるカササギフエガラスを飼育する資格が認められず、当局に引き渡しを命じられたのだ。

 モリーペギーの友情はここで終止符を打たれるかたちとなったようだ。

【画像】 犬と親友になったカササギフエガラス

 まずはさらっと、カササギフエガラスのモリ―の話をおさらいしておこう。

 2020年の秋、愛犬のスタッフォードシャー・ブルテリアのペギー(メス)を散歩させていたジュリエットさんは、ひどい怪我を負ったカササギフエガラスを保護し、家に連れ帰った。

 ペギーとモリ―はすぐに大親友となり、ケガが回復した後も、モリ―はこの家にとどまって、まるで自分のことを犬だと思っているかのように、毎日ペギーと寄り添って過ごしていた。

 ペギーモリーに我が子のような愛情を注ぎ、保護して3週間ほどたつと、母乳まで出始め、偽妊娠していたという

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 ジュリエットさんは、モリ―がいつでも野生に帰れるよう、家の窓やドアをあけ放っていたが、モリ―は一向に出ていく気配がない。

 2022年、ペギーは実際に子犬を出産したが、子犬たちもモリーと良好な関係を築き上げていたモリーは自分のことを犬の仲間だと思っているようだ。

 そうこうするうちに3年半という月日が経ち、いつかモリ―はジュリエットさん一家にとって、なくてはならない家族の一員になっていたのだ。

当局に引き渡されたモリ―

 いつまでも続くと思っていた犬と鳥と人間の幸せな毎日は、先月、唐突に終わりを迎えた。

 3月1日、モリ―は当局へ引き渡され、以来ジュリエットさんたちは、彼と会うこともかなわずにいるという。

 モリ―が「押収」されたニュースを伝える報道番組

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Molly the magpie separated from unlikely best friend, Peggy the staffy | 7 News Australia

 実はジュリエットさんたちは、昨年の6月に一度、DESI(クイーンズランド州の環境科学革新部門)職員の訪問を受けていた。

 その時点で「モリ―を引き渡すように」と要請されていたのだが、モリ―はジュリエットさん宅の敷地を囲む林の中で自由に暮らしているので、問題はないはずだとジュリエットさんは要請を拒否。

 長い話し合いの末、職員たちは帰っていき、ジュリエットさんはモリ―をこのまま手元に置くことが許されたと思っていた。

野生動物を飼育し続けるには、許可や資格が必要だった

 以来、ジュリエットさんとパートナーのリースさんは、野生動物保護の研修を受けたり、モリ―を飼育するための許可証の申請をしたりと、当局に協力してできるだけの努力を重ねてきた。

 だがリースさんの提出した申請書に不備があり、一度提出した申請を撤回せざるを得なくなった。

 そして2024年3月1日、突然再訪したDESIの職員たちは、以下に挙げた根拠にもとづき、ジュリエットさんたちに「自主的に」モリ―を引き渡すよう要請した。

・この鳥はDESIによって発行される許可証やライセンス、権限なしに野生から採取され、不法に飼育されていた

・野生動物が保護される場合は、人間化することを最小限に抑え、自然な本能や行動が発揮できるようにしなければならない

・ストレスにさらされたり行動の刷り込みを受けたり、病気をうつされたりするリスクがあるため、保護した野生動物は飼育動物とかかわらせてはならない

 モリ―を保護し手元に置いたこと、犬のペギーと触れ合わせたこと、その全てが間違いだったというのだ。

 現在、ジュリエットさんとリースさんは議員に働きかけたりSNSで呼びかけたりして、モリ―を返してもらえるよう、手を尽くしているそうだ。

 その一方、DESIでは現在、モリ―が「人に馴れ過ぎている」ため野生に返すことはできないとし、モリ―を収容するための適切な施設を探しているとのこと。

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日本でも野生動物の保護は規制されている

 日本にも「鳥獣保護法」という法律があり、野生の動物や鳥などの飼育は基本的に禁止されている。

 各自治体などのHPを見ても、「人間は野生鳥獣の生死に関与するべきではない」との原則から、ケガをして動けなくなっている生き物を見つけても、基本的に保護したり助けたりせず、そのままにしておくようアドバイスしているところが多い。

 かつて子猫と間違えてアライグマを助けてしまい、逃がすことも飼うことも引き取ってもらうこともできず、苦悩に満ちた心情を吐露していた人物がいたことを思い出した人もいるんじゃないかな。

 心情としては助けてやりたいという気持ちもわかり過ぎる。しかし野生の生き物にみだりに手を差し伸べることは、お互いにとって不幸な結果をもたらしかねないと、肝に銘じておいた方が良いのかもしれない。

 下は今年の1月、ジュリエットさんのお誕生日に撮った記念写真だ。再び全員集合で誕生日を祝える日は来るのだろうか。

References:Mail Online / The World Wants Justice for Bird and Dog Besties Who Were Separated in Australia written by ruichan/ edited by parumo

 
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深い絆で結ばれた犬とカササギフエガラスに悲しい結末。当局に引き渡され離れ離れに