声優・井口裕香のあらたな魅力を打ち出した写真集「MORE MORE MORE」。大人な女性として肉体的にも精神的にも成長した姿が見られた本作だが、その一方で彼女の軸となっている声優という職業については現在どのような気持ちでいるのだろうか。声優としても20年以上のキャリアを数え、またあらたな挑戦を果たした現在、そして未来をどう見つめているのか。これからの声優・井口裕香についての素直な気持ちに迫る。
■体を意識することはライフワーク的に今後も続けていきたい
――写真集に向けたトレーニングが、井口さんのライフスタイルやメンタルにも変化をもたらしたわけですが、先ほど少し話題にあがったお仕事、声優としての向き合い方にはどんな影響がありましたか?
体を意識することはライフワーク的に今後も続けていきたいと思っていますけど、それによって声の出し方とかも変わってきている気もするんです。まだはっきりとはわからないけど、やっぱり運動した後のほうが声が出しやすいし、集中力も続くんですよ。
――井口さんも声優としてのキャリアは20年以上を数えるようになりました。その中で声の維持や表現の広がりというものは実感として見えつつあるわけですね。
そうですね。でも何より、しんどいトレーニングを頑張って乗り切ったことで自信にも繋がりました。単純に筋力が鍛えられて、体幹も強くなり声が出しやすくなったというのもあると思うんですけど、いちばんは乗り越えられたという自信かな?
■やっぱり自分の主軸にあるものが声のお仕事なんです
――30代という人間として、女性として成熟していく中で”乗り越える”ということができたというのは大きいですし、その中で井口さんは今後の”声優・井口裕香”をどう見据えているのかなと。
やっぱり自分の主軸にあるものが声のお仕事なんですよね。今回の写真集もラジオや歌のお仕事も、普段の声優のお仕事があるからできていることであり、頑張れていることなので。
――声優のお仕事を追求していくことは変わらないと。
声優のお仕事って本当に終わりがないもので、正解もないし、満足することもないというか。表現することもつねに新しいものを求められ続けていると思うし、いろんなキャラクターや作品に出会ってく中でどう表現していくかということに直面したときは、今回の写真集での経験が活きていく気がしますね。
――役の幅も広がることもある?
これからもいろんな作品に出たいし、いろんなキャラクターを演じていきたいという思いはあります。今までは子供っぽい役が多かったので、大人な役にも機会があったらやってみたいですね。今回の写真集でも、自分の知らなかった大人な表情が出せたので、きっと私の声の中にもそういう引き出しがある。だから今後もそういった、私の知らないキャラクターたちにも出会っていけたらなって思います。
■私にとっても変化のきっかけになる一冊でした
――ご自身の中でも新たな発見があった写真集をきっかけに、また新たな表現が生まれるかもしれない。その一方で『〈物語〉シリーズ』の新作『オフ&モンスターシーズン』では引き続き阿良々木月火を演じるように、付き合いの長いキャラクターとの向き合いもあるわけですからね。声優のお仕事は実に奥深いというか。
本当、夢のようなお仕事です。
――ますますこの写真集を境に表現者としての井口さんがまた変わっていくという期待もありますね。
私にとっても変化のきっかけになる一冊でしたね。今までは……特に30歳になるあたりまでは変わることが怖いというか、変わる必要がない、現状維持がとても素晴らしいことと思っていたんです。だけど、そこから年を重ねることで、最近はコロナ禍も経たときに、現状維持ってすごく緩やかに退化していっているんじゃないか?って感じたんです。
――なるほど。
もっと自分で前に進んでいかないと、自ら前に進んで新しい刺激を得ていかないと、このままじゃ声優としても人としても終わるって思うくらい「もっと変わっていかなきゃ」ってふと思ったんですよね。そんな中で変わること、新しい刺激を欲することで表現の仕方も変わっていくんだと思います。今までの私のファンの人たちからしたら「なんか井口さん変わっちまったな!」って思うかもしれないけど(笑)、根本は変わってないし、でもその中でもっと新しいものを知りたい、見たい、表現したいと思っていて、その中で出会えた今回の写真集だったので。
――声優としても挑戦したいという気持ちと、写真集に込めた想いは同じところにあるわけですね。
変わることや挑戦することは、すごく素敵なことだと思います。今はもっともっといろんなことに挑戦していきたいって思えるようになったし、挑戦した結果、自分の中でも変われるきっかけの一冊になったので、私だけじゃなくみんなにとっても、何かにチャレンジしたりとか、新しいことを始めてみようとか、それこそ運動を始めてみようとか、この写真集が何かしらのきっかけになってくれたらいいなって思います。
(取材・文=澄川龍一)
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