日本初(※1)の公共訴訟支援に特化したウェブプラットフォームCALL4(コールフォー)(運営:認定特定非営利活動法人CALL4、共同代表理事:谷口太規、丸山央里絵)は、「労災遺族年金の「男女差別」撤廃を!」訴訟のサポートを2024年4月9日より開始いたします。

労災補償の遺族年金は、妻は年齢制限がないのに、夫は55歳以上でなければ支給されません。労働者災害補償保険法は、労働者労働災害で亡くなった場合、その収入によって生計を維持していた家族などに対して、労災遺族補償年金を支払うことを定めています。

しかし、1965年に遺族年金を制度化した法は、「男が稼ぎ主である」という前提のもと遺族年金の受給対象者に性差を設け、夫を亡くした「妻」には年齢要件がないのに、妻を亡くした「夫」は55歳以上でなければならないとしています。

労災遺族補償年金の受給資格

労働者災害補償保険法16条の2、労災保険法附則43条1項より。いずれの要件も労働者の収入によって生計を維持する者であることが前提。

憲法14条1項は、法の下の平等を定めており、事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り、差別的取扱いを禁止しています。「性別」だけを理由に、過労死遺族に対し、法律が大きな格差をつけているのは、法の下の平等を定める憲法14条1項に違反する差別ではないのでしょうか。また、法の下の平等は国際人権(自由権)規約26条、ジェンダーに基づく差別の禁止は女子差別撤廃条約1条に定められており、それらにも違反します。

また、「労働者の収入によって生計を維持」していた者のうち「妻」についてのみ年齢に関係なく年金を支給することは、女性が若くて健康であっても夫の収入に依存した生活をする専業主婦であるということを前提にして作られた法律といえます。制定時から60年近く経った現在においても、この法律を維持することは、共稼ぎであったとしても亡くなった労働者である妻の収入は家族の扶養にさほど寄与しないことを前提とするものであり、妻も差別するものです。

そのため、妻を過労死で失った原告と弁護団は、性別により過労死遺族に大きな不利益を与える法律が男女差別であり、憲法と国際法に違反すると考え、国を相手に裁判をすることにしました。

※1 日本国内における「公共訴訟支援に特化したウェブ支援プラットフォーム」として、2019年9月に弁護士による見解など自社調査した結果

裁判の争点

下記のような労働者災害補償保険法の規定が、法の下の平等を定め「性別」による差別を明文で禁止する憲法14条1項、女子差別撤廃条約1条、国際人権(自由権)規約26条に違反するかです。

・「夫」が死亡した場合 →妻は「生計維持関係」があれば遺族年金が受け取れる

・「妻」が死亡した場合 →夫は「生計維持関係」に加えて、「年齢要件」か「一定の障害要件」を満たさない限り遺族年金は受け取れない

1.男女ともに家族の扶養に寄与する共働き世帯が一般的な家庭モデルになっている

1997年以降、共働きの世帯数は専業主婦世帯数を上回る状態になりました。2010年には、共働き世帯が1012万世帯、専業主婦世帯は797万世帯でした。それから10年以上たち、2022年には共働き世帯は1191万世帯まで増加し、専業主婦世帯は430万世帯にまで減少し、共働き世帯が一般的な家庭モデルとなっています。


2.男女の賃金格差と本件区別で生じる遺族補償に関する経済格差の比較

2022年の男性の平均賃金を100とした場合、女性の給与水準は75.7となります。依然として格差があるとはいえ1.3倍にとどまっており、男女の賃金格差は是正されつつあります。一方で、遺族年金の金額は、請求人が夫が死亡した女性(妻)であった場合は、妻が死亡した男性(夫)と比較して、3.5倍になります。このような賃金格差の水準に照らせば、遺族補償に関して男女間で3.5倍もの経済的格差を設ける必要があるとはいえません。

※本件において、妻が死亡した場合に夫が受給する一時金と、夫が死亡した場合に妻が女性の平均寿命である87歳まで生存すると仮定して受給できる遺族年金額を比較

3.遺族である配偶者が被災者の死亡後に直面する変化


遺族である配偶者は、パートナーの死亡後、経済的な面でも家庭責任の面でも大きな変化に直面し、その負担の大きさに男女で違いはありません。


4.遺された子どもの養育環境や将来への多大な影響

母親が亡くなった場合の父親の遺族年金の受給が制限されている現在の制度では、母親を亡くして父子家庭で育つ子どもの養育環境に多大な経済的影響を与えます。「子どもの最善の利益」という、子どもの権利条約上の重要な基本原則にそぐわないものとみることも可能です。

また、日本国内では母子家庭にしか支給されなかった児童扶養手当を、2010年に父子家庭にも支給することとする法改正が行われており、その改正案が提出された際には、「収入の低い一人親家庭に対する支援は男性か女性かを問わず必要なものであり、男女共同参画社会を目指す国として、こうした状況を放置するべきではありません。」と述べられています。

アメリカでは1983年ドイツでは1985年、EU人権裁判所では2001年と、諸外国では数十年前に遺族補償における男女差を設けた法律が憲法や国際法に違反するとされ男女平等が実現したこと、日本が締約している女子差別撤廃条約や自由権規約がジェンダーに基づき権利享受を区別する内容の法律が差別であるとして禁止していることも、この法律が法の下の平等に反していることを裏付けます。

資金の使途

・研究者や専門家の意見書作成費用

最高裁まで闘い、違憲判決を勝ち取るには専門家の意見書が欠かせません。国際法学者や憲法学者、社会保障法学者等の専門家に意見書を執筆していただくことを予定しています。

コピー代、通信費、交通費

・印紙代

※上記費用に計上した上でお金が余った場合には、弁護士費用に充てさせていただきたいと思います。

原告の思い

我が家では、夫妻が共同で収入を得て、共同で家事を分担し、共同して子育てや子どものケアにあたってきました。我が家では、夫である私が欠けた場合でも、妻が欠けた場合でもどちらも同じような打撃が、残された配偶者や家族にもたらされたと思います。

男女共同参画社会やジェンダー平等が謳われる現在では、我が家のように共働きで、互いに収入、家事、子育てを分担しあう家庭はますます増えていると思います。

このような現状で、夫が亡くなった場合と妻が亡くなった場合とで、国が行う給付の内容が異なるのはおかしいのでないかと思います。このような思いで、今回の問題提起をさせていただくに至りました。

同じような思いを持っていただける方は沢山いるのではないかと思っております。賛同や応援をいただければ大変幸いです。

担当弁護士のメッセージ

裁判所は、労働者災害補償保険法による男女差別の違憲性に正面から向き合い、自立的選択を尊重しジェンダー平等が一層すすむ現代社会に照らして、憲法の番人として違憲の判断をすべきです。

近年最高裁判所は、性別変更のための手術要件について2019年に出された小法廷判決を、社会情勢の変化を踏まえ変更し、2022年に違憲と判断しました。

本件も2017年に小法廷判決が出ていますが、女性の労働状況や専業主婦の現状など社会情勢の変化を丁寧に主張し、弁護団は、必ずや従来の小法廷判決を変更させ、最高裁大法廷で憲法違反の判決を勝ち取る決意です。

どうかご支援のほど、よろしくお願いいたします。

担当弁護士の紹介

川人 博    東京弁護士会

蟹江 鬼太郎  第二東京弁護士会

小野山 静   東京弁護士会

中西 翔太郎  東京弁護士会

松丸 正    大阪弁護士会

成見 暁子   宮崎弁護士会


私たちは、過労死弁護団全国連絡会議に所属し、過労死・過労自殺の労災認定や訴訟などの遺族救済、法制度等に関する意見の発出など、過労死問題に取り組んでいます。

運営団体「認定特定非営利活動法人CALL4」について


認定特定非営利活動法人CALL4は、公共訴訟を支援するウェブプラットフォーム「CALL4」の運営のために設立された営利を目的としない法人で、共同代表を務める弁護士の谷口太規、編集者の丸山央里絵の他、多様な専門性を有するプロボノメンバーによって活動が担われています。

詳細は以下よりご確認ください。

https://www.call4.jp/

CALL4は今後も、クラウドファンディングをはじめとするケースサポートを通じて、司法をより身近に感じていただけるよう日々活動してまいります。

配信元企業:認定特定非営利活動法人CALL4

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