海の中は、地球に残された最後のフロンティアだとも言われている。そこにはまだ、我々の想像を超えた生き物たちが生息していて、チートなスキルで疑似的な不死を実現していたりする。
例えば無腸動物の無腸目(Acoela)は、プラナリアと同様に身体を真っ二つにされても死なずに増殖し、体内に取り込んだ藻類に光合成をさせて栄養をもらい、餌を食べなくても生き延びる。
人類がどれだけ夢に見てきたであろう不老不死やクローンを、あっさり実現してしまっている驚異の生き物なのだ。
These Solar-Powered Carnivorous Flatworms Divide and Conquer | Deep Look
海底のサンゴや岩の上に貼りついている、このコーンフレークみたいな平たいヤツ。彼らは無腸動物の無腸目(Acoela)の仲間だ。
この無腸類、現在確認されているだけで、約400もの種類があるらしい。体長はだいたい2㎜程度だが、中には15㎜程度になるものもいるようだ。
名前の通り、腸がないのが特徴だが、正確には腸だけじゃなく、脳や呼吸器、肛門なんかもないらしい。かつてはプラナリアやヒラムシといった扁形動物の仲間とみなされていたそうだ。
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彼らは小さいなりに凄腕のハンターであり、自分よりさらに小さな生物を狙ってパクリと食べてしまう。
餌は口から食べるのだが、肛門がないので排泄物もやはり口から排出する。うーん、キスはしたくないよね。
体内に藻を取り込んでガーデニング
また、彼らの仲間にはガーデニングをするものもいる。下の画像の赤い部分は無腸類自身の細胞だが、さらに小さい緑がかった点々は、実は体内で共生している藻類なんだとか。
彼らは太陽光を浴びることで体内の藻類に光合成をさせ、その産物である糖を栄養として受け取っているわけなんだ。
一度切ったら3倍に増える?
もう一つ、無腸類の興味深い特徴を見てみよう。彼らはプラナリアのように、身体を真っ二つにされても数分後には傷口がふさがってしまい、数日で新しい頭や尾が再生してくる。
・合わせて読みたい→切っても切ってもまた生まれる、プラナリアの恐ろしい再生能力を検証した映像
いや、別にわざわざ切ってもらわなくても、かれらは自分で尻尾を落として再生する。
しかも下半身の方には、新たに二つの頭が生えてきて、やがて分離することで2匹の無腸類が誕生する。つまり1匹を上下に切断すると、3匹の無腸類が誕生するわけだ。
ここで活躍するのが、上で説明した藻類だ。完全に再生するまでの間、彼らは藻類が光合成で作ってくれる栄養分で生き延びる。
エサがなくても光さえあれば生きることができ、真っ二つにされても死なないどころか増殖する……となると、これはもうソーラーパワーで不死を実現した驚異の生き物…と言ってもいいかもしれない。
こうやって見てくると無腸類はなんとも興味深い生き物であるが、アクアリストたちにとっては困ったちゃんになることも。海水水槽にサンゴや海藻、リビングブロックなんかを入れた際、紛れ込んできて大発生したりするのだ。
大雑把に言ってしまえば、淡水水槽に発生するヒドラやプラナリアみたいなもんである。つまり水槽の中のお邪魔虫。
しかも身体が小さ過ぎるから、プラナリアみたいに切って増やしてなんて実験もしにくいんだよね。顕微鏡があれば興味深く観察できると思うけど。
ブラインシュリンプ(アルテミア)を与えると喜んで食べるみたいなので、もし水槽の中で発見したら、ペットとして飼ってみるのもいいんじゃないかな。もしかしたら新種だったりするかもしれないし。
written by ruichan/ edited by parumo
追記(2024/04/09)記事の説明の一部にあった画像を追加して再送します。
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