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「EQG」改め「G580」として市場投入へ

ドイツの自動車メーカーであるメルセデス・ベンツは、4月24日に中国・北京で開幕するモーターショー「オート・チャイナ」において、新型電動SUVの「G580」を公開する予定だ。

【画像】これが真の電動オフローダー! 次世代Gクラスまもなくデビュー【新型メルセデス・ベンツ「G580」のプロトタイプとコンセプトモデルを写真で見る】 全33枚

新型G580は、これまで “EQG” と呼ばれてきたGクラスのバッテリーEV版である。名称を変更し、今年後半に導入される見込みだ。

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2021年に公開されたメルセデス・ベンツ「コンセプトEQG」    メルセデス・ベンツ

なお、オート・チャイナではAMG GTの新しいPHEVモデルと改良新型EQS、そしてコンセプトCLAクラスも出展予定だ。

G580は、2021年のミュンヘン・モーターショーで「コンセプトEQG」として初めて公開された。翌2022年にはプロトタイプが披露され、弊誌もメルセデス・ベンツのエンジニアの運転のもとで同乗試乗したが、非常に高いオフロード性能を発揮していた。

仕様詳細はまだ明らかではないが、約100kWhのバッテリーを搭載し、エネルギー効率(電費)は100kmあたり27.7~30.3kWhになると言われている。これを基に計算すると、1回の充電での航続距離は約320~350kmと予想される。

G580は、1979年以来メルセデス・ベンツSUVを象徴してきたGクラス(ゲレンデヴァーゲン)の歴史において初の完全電動モデルとなる。なお、今年3月末には、現行型Gクラス(W463/464)にマイルドハイブリッドが初めて導入された。

Gクラスを凌駕するオフロード性能を実現か

G580は従来のスチール製ラダーフレームシャシーを改良し、新しい電動パワートレインに対応させる。生産はオーストリアのマグナ・シュタイヤー社が行う予定だ。

Gクラス・シリーズの責任者であるエメリッヒ・シラー氏によると、内燃エンジン車と同様、ラダーフレームシャシーとボディは8点で接続されているという。

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メルセデス・ベンツG580のプロトタイプ(2022年)    メルセデス・ベンツ

2022年公開のプロトタイプでは、これまでのGクラスと同じスクエアなエクステリアデザインが確認されている。新しいフロントバンパーグリルなど、ディテールはEV独自の仕上がりとなるようだ。

充電ケーブルは、テールゲート(通常、スペアタイヤがある位置)に配置されたロック付きのボックスに収納することができる。

4基の電気モーターを搭載し、個別に制御することでその場で旋回できる「Gターン」という機能も備わる。オフロード性能を重視しており、デファレンシャル・ロックを模した制御も可能だ。

加速力などの性能はまだ明らかにされていないが、高性能のAMGバージョンを含めて複数のモデルが用意されるという。

過酷な条件下でも安全性を確保するため、バッテリーは頑丈な密閉ケースに収められており、深い水深でも走行できる。バッテリーをフロア内に搭載することで、従来のGクラスよりも低重心を実現したとされる。

シラー氏は2022年当時、車両重量について「どのEVにも言えることですが、重量は課題です。まだ最終的な数字は出ていませんが、3500kgを下回ります」と述べていた。

プロトタイプのサスペンションは、フロントにダブルウィッシュボーン、リアにトレーリングアームを採用していた。総合的なオフロード性能は従来のGクラスと同等で、状況によっては凌駕することもあるそうだ。

試乗してわかった電動Gクラスの「実力」

2022年に行ったプロトタイプへの試乗レビューを振り返っておきたい。開発責任者のシラー氏による運転で、筆者は助手席に同乗させてもらった。

自動車メーカーがこれほど早い段階で新型車を披露するのは珍しい。確かな自信がなければ、開発初期のプロトタイプに触れることは許されないだろう。

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筆者は2022年にプロトタイプへ同乗試乗し、開発者の運転でテストコースの厳しい地形を走った。    AUTOCAR

プロトタイプ砂利道のテストコースを軽快に走り抜け、やがて大きな岩が露出したトレイルに突入する。「クリーパーモード」と呼ばれるドライビングモードでは、4基の電気モーターとローレンジ付き2速トランスミッションにより、高いトラクションを発揮する。

その際、電気的なノイズや振動は感じられなかった。タイヤが岩の上を転がる音や、ホイールハウスの内側に当たる小石の音のみが車内に届く。ドライブトレインの洗練性は高く、オフロード車というより高級セダンに近い。

テストコースはかなり険しいものであった。あるところでは、タイヤが一本浮いた状態でバランスをとりながら、シーソーのように走った。またあるところでは、急な岩場をクモのようにクロールして進んだ。

ディファレンシャル・ロックの効果をモーター制御で再現し、最もトラクションのかかる車輪に集中的にパワーを送ることができる。従来のGクラスと同等の走破性能を持っているように思われた。

落差の激しい岩場を越える場面もあった。しかし、アクスルのアーティキュレーションとスプリングの可動域の広さによって、止まらずに走り続けることができたのだ。

平坦な道に出る直前、大きな岩がアンダーボディにぶつかり、強い衝撃を受けた。ステアリングを握るシラー氏は「こんな時に備えて、バッテリー・ケーシングの外装材を新たに開発したのです。もし、スチール製のケーシングだけだったら、今頃は不安になっていたかもしれませんね」と話す。

旋回半径は従来型よりも小さく、また高い着座位置とほぼ直立したフロントガラスにより優れた視認性を確保している。

砂に覆われた広いワインディングロードでは、130km/hを超える速度で走った。エアサスペンションが素晴らしい働きを見せ、段差や起伏を素早く吸収してくれた。

試乗の終盤、シラー氏はプロトタイプを停め、ダッシュボード上のボタンを操作し、ステアリングホイール左側のパドルを引いた。次にアクセルを踏み込むと、その場で360度回転してしまった。左右のモーターを逆回転させることで戦車のような超信地旋回を可能にした「Gターン」である。

歴代Gクラスと同様に、新型G580もオーストリアシェークル山で開発が行われている。生産拠点に近い全長5.5kmの厳しいトレイルにおいて300回のテスト走行を終えた後、ようやく量産に入るのだ。

まだ明らかにされていない部分も多いが、少なくとも2022年の試乗では非常に高いオフロード性能を確認することができた。厳しい地形や急斜面を乗り越える姿は、まさに驚くべきものだ。完全電動で、車両重量も3トンを超えるかもしれないが、オフロードにおける能力はまさにGクラスそのものである。


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