ZTE JAPANのスマートフォンブランド「nubia(ヌビア)」が日本に本格上陸、第1弾として『nubia Flip 5G』と『nubia Ivy』の2機種を3月に発売した。その使用感をレビューしつつ、nubiaブランドについても紹介したい。

参考:【写真】ZTEの戦略ブランド「nubia(ヌビア)」

●nubia(ヌビア)とは何か

 まず、ZTEとnubiaについて整理しておこう。ZTEは中国の通信機器大手、実は通信基地局の分野ではファーウェイと国内シェアを二分する大企業だ。nubiaはそのZTEのサブブランドで、中国を本拠地として、欧州や南米や、中東、アフリカインドなどに展開している。

 中国国内のスマホ市場では「ファーウェイ」や「OPPO」、「Xiaomi」といった企業の存在感が大きく、「nubia」やZTEのスマートフォンは知る人ぞ知る存在だ。調査会社のIDCによると、「nubia」ブランドの2023年の出荷数は全世界で約70万台にとどまっている。これは、中国の2023年の出荷数が2万7100万台あることと比べても、大きな規模ではないことが明らかだ。

 ただ一方でnubiaは、ファッショナブルなデザインの機種など、特徴のある製品を多く発表してきた。王道ではないが個性的なスマホを投入してきたブランドというイメージがある。

 今回はそんな「nubia」から、『nubia Flip 5G』と『nubia Ivy』の2機種が日本に投入された。どちらの機種も低価格ながら、充実した機能がウリだ。『nubia Flip 5G』は7万9,800円(税込)、『nubia Ivy』は3万1,880円(税込)。2機種ともこの価格帯で4キャリアの通信に対応し、おサイフケータイも利用できる。つまり、日本にもしっかりローカライズした形で発表している。

●『nubia Flip 5G』の特徴

 『nubia Flip 5G』は、折りたたみ型のスマートフォンだ。縦折りにして、コンパクトにまとめて持ち運べる。広げた時の画面は6.9インチと大きく、鮮やかなので動画視聴にも適している。

 折りたたみスマホならではの使い方も実用的。開きかけた状態で固定できるため、カメラ撮影では机の上にスマホをおいて、目の前で行われている講義や会議を撮影する使い方がスマホスタンド無しで行える。また、YouTubeでは画面の上半分で動画を再生して、下半分がコントロールパネルになるので、ここでもスタンドなしで使いやすい。

 さらに背面には、約1.43インチの円形のサブディスプレイを備えている。畳んだ状態で時計や通知を表示したり、カメラ撮影や音楽再生、ボイスレコーダーの制御、天気予報や歩数の確認ができる。

 このほか特筆するべきは120Hz表示でスクロールを滑らかに表示でき、バッテリー容量は4310mAhと折りたたみスマホの中では大きめ、33Wの急速充電にも対応しているといった点などだ。総じて、視聴・閲覧デバイスとしては優秀と言えるだろう。チップセットSnapdragon 7 Gen 1、メモリ(RAM)は8GBで、ミッドレンジ帯としては高めの性能を備えている。廃熱が安定しているため、3Dゲームも安定して動作する。

 惜しい点としては、デザインとカメラが挙げられる。まず、このスマホは防水仕様ではなく防塵仕様。また、重さは213gで、折りたたみスマホの中ではやや重みがある。画面の縁(ベゼル)は約3mmとやや太目で、スタイリッシュさには欠ける印象もある。

 メインカメラが5000万画素+200万画素(深度センサー)のデュアルカメラだが、被写界深度センサーはポートレートモードなど、ぼかし効果を追加するシーンでのみ作動する。実質的には5000万画素のメインカメラだけが機能する単眼仕様といえるだろう。夜景撮影には強く、明暗差のあるシーンもくっきり捉えられる。一方で、ズームしての撮影は苦手な印象だ。

 折りたたみスマホならではの機能として、外側のディスプレイを使って撮影することもできるし、例えばスマホを机に立てて外側のプレビュー写真で集合セルフィーを撮ったりすることもできる。

  『nubia Flip 5G』は、縦折り型のスマホの特徴的な機能を盛り込みつつ、他の製品よりも手ごろな価格を実現したスマホだ。いわば「折りたたみスマホのコモディティ化」に貢献する機種といえるだろう。

●『nubia Ivy』の特徴

 大手キャリアを通さない“SIMフリースマホ”の市場では、通信契約に伴う奨励金が得られないことから、価格が高めに設定されるのが常であった。『nubia Ivy』はその中で、3万1880円と攻めの低価格を実現している。

 画面は6.6インチと大きめ。電子書籍や文書ファイルの閲覧がしやすく、文字を大きく表示する「シンプルモード」との相性も良い。重さは194gと画面サイズの割に控えめ。気になる点としては、画面の発色がある。TFT液晶を採用しているためか他のスマホと比較してみるとやや暗めで、白の発色が鮮やかでないと感じる。

 チップセットはMediaTek Dimensity 700で、動画再生やWebサイトの閲覧といった基本的な操作には十分対応できる。また防水・防塵も対応しており、指紋認証は右側面に、電源ボタン兼用の指紋認証センサーを備えている。

 カメラは3眼カメラを搭載しているが、主に機能するのは5000万画素のメインセンサーだけで、200万画素の被写界深度カメラと200万画素のマクロカメラは一部のシーンで補助的に動作するものとなっている。そのため、ズーム撮影などはあまり得意ではない。夜景や食事シーンの撮影など、光量が少なめのシーンで撮る場合も『nubia Flip 5G』と比べると見劣りがする印象。

 カメラなどが物足りない点はあるものの、3万円代で手に入るスマホとしては十分な使い勝手を備えている。大画面なスマホが手ごろな価格でほしいという人には良い選択肢となりうるだろう。

●nubiaブランドの日本参入の背景

 『nubia Flip 5G』と『nubia Ivy』がバランスの良い性能と低価格を実現できているのには理由がある。実は、両モデルにはワイモバイルで販売されている兄弟機種が存在するのだ。『nubia Flip 5G』は『Libero Flip 5G』、『nubia Ivy』は『Libero 5G IV』がそれぞれ相当する。

 つまり、「nubia」ブランドの日本参入は、ワイモバイルですでに販売実績のある製品をベースにしているため、おサイフケータイなどの日本市場特有の要求にも対応できているのである。

 ただし、「nubia」版とワイモバイル版ではスペックや対応バンドに違いがある。RAMは「nubia」版の方が多めだが、価格はワイモバイル版の方が安い。また、ワイモバイル版はドコモやauのプラチナバンドに相当するBand18/19に非対応なので、これらのキャリアをメインで使う場合は「nubia」版が無難だろう。

●nubiaブランドの個性的な機種にも注目

 今回日本に投入された『nubia Flip 5G』と『nubia Ivy』は、比較的オーソドックスな機種ながら、低価格とバランスの取れた性能を実現している。しかし、nubiaにはこれだけでなく、より個性的な機種も存在する。

 たとえば、ハイエンドモデル『nubia Z60 Ultra』は、広角・超広角・望遠それぞれに50メガピクセルのセンサーを搭載したカメラ強化モデル。前世代の『nubia Z50 Ultra』には、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの絵画を大胆に取り入れたデザインのバージョンもある。さらに、2月に新興国向けに発表された「nubia Music」は、一般的なスマホの6倍の大音量を出せるスピーカーを本体に内蔵している。

 こうした個性的な機種は、日本のスマホ市場に新たな魅力をもたらす可能性を秘めている。販売数が限られる中での投入は難しいかもしれないが、ぜひnubiaブランドには今後も日本のスマホ市場活性化のためチャレンジを続けてほしい。

(文=石井徹)

日本上陸、ZTEの戦略ブランド「nubia(ヌビア)」とは?