子供から高齢者まで、多くの人の憩いの場となっている公園。ベンチに腰掛け、ホッとひと息つく瞬間は何物にも代え難い。
ネット上では、東京・新宿区のある公園のベンチの形が物議を醸していて…。
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■東京・新宿の公園のベンチが…
事の発端は、3月中旬に投稿されたあるXユーザーのポスト。内容としては、新宿区の公園のベンチが意地悪な形になっているというもの。
拡散された投稿には、背もたれがなく、座る面がアーチ状になったベンチの写真が添えられている。一見すると、背もたれや仕切りがないため、幼い子供が座った時に誤ってひっくり返ってしまうのではないかと思ってしまう。
調べたところ、こちらのベンチは「新宿区立さつき児童遊園」にあることが判明。
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■「意地悪ベンチ」とネットで物議
アーチ形のベンチはネット上で波紋を呼んでいる。「お年寄りや足が悪い人や体調が悪い人も座りにくい」「これ、もうベンチですらない」「ホームレスを横になって寝させねえという意思ばかりが突出している意地悪ベンチ」「公園でベンチに座って、まったりするなっていうこと?」など、批判の声が続出。
都内の公園では横に仕切りが設けられ、寝転べない作りになったベンチを見かけるが、アーチ形は珍しい印象だ。なぜ、このようなデザインにしたのだろうか。
現地に足を運び、新宿区役所に取材したところ、「本当の理由」が明らかになったのだ…。
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■公園に足を運んでみると…
4月初旬、「新宿区立さつき児童遊園」に足を運んだ。JR大久保駅から徒歩7分の場所にあり、マンションやアパートが建ち並ぶ閑静な住宅街だ。
滑り台や砂場はあるものの、それほど大きな公園ではない。話題になったベンチは砂場の近くに3基置かれており、すべてアーチ形のデザイン。
実際に記者が座ってみると、背もたれがないため少々座りにくさは感じるが、思ったよりもアーチの形状は緩やかだ。
園内には、「公園は寝泊りするところではありません」という看板や、「Let’s keep quiet」と英語で深夜や早朝に騒がないよう注意を呼びかける看板が掲出されていた。
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■役所が明かす「30年越しの問題」にショック
続いて、公園を管理する新宿区役所に話を聞いた。新宿区みどり土木部みどり公園課の担当者によれば、アーチ形のベンチを設置した理由は、ネット上で指摘されるようなホームレスを排除するためではないという。
設置の経緯に関して、担当者は「夜間から早朝にかけて公園内で飲酒したり、大声で騒ぐ方がたくさんいるためです。近隣住民の方から苦情が寄せられています。ベンチは平成8年(1996年)に設置したので、約30年経っていますが、当時からそうした苦情がありました」と説明する。
新宿歌舞伎町や新大久保、高田馬場などの繁華街が近く、そうした場所でお酒を飲んだ人が公園を訪れ、夜遅くに騒いでいることが考えられる。
担当者は、「近隣の住環境を守るため、外国人向けの英語看板も立てました。そうした対策に加えて、ベンチで長時間居座ったり、お酒をベンチに置けないようにしました」と表情を曇らせる。
役所としても、30年近く続く問題に苦慮しているようだ。
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■過去に転落事故は…?
アーチ状のベンチに関して、ネット上では怪我につながる危険性が指摘されている。過去に、そうした事故が起きたことはないのだろうか。
こちらの質問に関して、担当者からは「区で把握している限り、転落事故は起きていません。また、ベンチの形に対する苦情は1件もないと記憶しております。現在も騒音に対する苦情は寄せられているので、状況が改善しない限り、ベンチを交換したり、形を変えることはありません」という回答が寄せられている。
言うまでもなく、公園は誰か1人のものではない。近隣で暮らす人たちの迷惑になるような行為は慎まなければならない。
■執筆者プロフィール
某週刊誌の芸能記者を経て現職に。旧ジャニーズネタなど、芸能ニュースを中心に様々なジャンルを取材する。
チェーン店からローカル店まで様々な飲食店をめぐり、グルメ記事も手がける。仕事も兼ねた毎日のドラマ鑑賞が日課。
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