米労働省が4月5日に発表した3月雇用統計の主な結果は、【1】非農業部門雇用者数30.3万人増、【2】失業率3.8%、【3】平均時給34.69ドル(前月比+0.3%、前年比+4.1%)という内容であった。

【1】雇用者数

3月の非農業部門雇用者数(季節調整済)は前月比30.3万人増と市場予想の21.4万人増を上回った。増加幅が30万人を超えるのは2023年5月以来10カ月ぶり。この結果、雇用情勢の基調を判断する上で重要視される3カ月平均の増加幅は27.6万人と前月時点の27.2万人から小幅に伸びた。

【2】失業率

3月の失業率(季節調整済)は3.8%と、約2年ぶりの高水準だった前月の3.9%から市場予想通りに低下した。フルタイムの職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は前月から横ばいの7.3%だった。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率は前月から0.2ポイント上昇の62.7%だった。

【3】平均時給

3月の平均時給(季節調整済、全従業員)は34.69ドルと前月の34.57ドルから0.12ドル増加。伸び率は前月比+0.3%、前年比+4.1%で、いずれも市場予想通りだった。なお、平均時給は36カ月連続で過去最高を更新したが、前年比の伸び率は2021年6月以来2年9カ月ぶりの低さとなった。

まとめ

米3月雇用統計は、非農業部門雇用者数が10カ月ぶりの大幅増となった上に、失業率は労働参加率が上昇したにもかかわらず低下した。平均時給の伸び率は前年比で2年9カ月ぶりの水準に落ち着いたが、依然としてインフレ率(2月CPI=3.2%)を大きく上回っている。米国の雇用情勢の力強さを示した雇用統計だったと言えるだろう。これを受けて市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測が後退。米金利先物が織り込む年内の利下げは25bp(0.25%)刻みで2.5回程度へと低下した。FRBは3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で年内3回の利下げ見通しを示しているが、雇用統計を受けて市場の見方がFRBよりもタカ派に傾斜した形だ。ドルは対円で151円台後半へと上昇して34年ぶりのドル高・円安水準を窺う展開となっている。1ドル152円を超える水準に円安が進めば本邦政府・日銀による円買い介入への警戒感がいっそう高まることになろうが、円買い介入では(円安はともかく)ドル高を止めるのは難しい。FRBの利下げ観測がさらに後退すれば、1ドル152円の突破は避けられないだろう。

神田卓也 株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya この著者の記事一覧はこちら
(神田卓也)

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