凶悪化・巧妙化する“闇バイト”。特にSNS上では、闇バイトの募集が多く氾濫している。

「高額報酬」「即日即金」「誰でもできる」などの言葉を使って求人を募集しているのが特徴で、仕事内容は詳しく書かれていない。お金欲しさのあまり、気軽に応募してしまえば……。知らぬ間に、犯罪に加担していることも。

 そんななか、特殊詐欺フィッシング詐欺などの対策サービスを提供するトビラシステムズ社は、昨今における闇バイトの実態調査を行った。SNSの募集に応募するなどしてみると、驚くべき勧誘手口が浮かび上がってきたのだ。闇バイトの最新トレンドや意外な事実、特殊詐欺に巻き込まれないための心構えとは?

◆SNS上に氾濫する闇バイトの求人募集

 警察庁によると、近年の闇バイトではSNSを媒介として緩やかな接点を作り、離合集散を繰り返す犯罪組織が増えているという。

 犯罪組織として流動的に活動し、一定の時間が経つとやりとりが消えるテレグラムなど、匿名性の高い通信手段などを使いながら、役割分担しているとのことだ。トビラシステムズの担当者・Aさんがこう話す。

警察庁の最新調査では、SNS経由で闇バイトへ応募する割合が最も多く、なかでも20〜30代が顕著になっています。それ以外にも知人からの紹介は10代、求人情報サイトや掲示板サイトからは40~50代と、各年代ごとに闇バイトと接点を持つ経路が多様化しているのが伺えます」(Aさん、以下同)

 要するに今の時代、誰でもやろうと思えば、闇バイトをできる環境ができてしまっているとも言えるわけである。

◆“ルフィ事件”以降、闇バイトの志願者が増加

 とりわけ2022年5月に、“ルフィ”を名乗る特殊詐欺グループによる広域強盗事件が発生して以来、犯罪の実行役を募集する「闇バイト」の実態が浮き彫りになり、社会問題となった。

「お金を騙し取る相手から現金を受け取る『受け子』や、お金をATMから引き出す『出し子』。詐欺電話をかけるアポインターの『架け子』や、監視をする見張り役の『張り子』、違法薬物や詐欺で得た現金を運ぶ『運び』など、闇バイト特有の隠語を使って、SNS上で求人を募っているのが主流になっています」

 実際に闇バイトの求人応募がされているSNSの投稿を見に行くと、敷居を下げるために平易な文章で記載されているのが目につく。

 しかし、あえて仕事内容がわかりづらくしてあり、投稿者(リクルーター)と直接コンタクトを取って詳細を聞く必要があるわけだ。

闇バイトの仕事は“即戦力”が求められる

 Aさんは、闇バイトの実態調査を行うためにいくつかの案件に応募。リクルーターとのチャットや通話で、闇バイトの勧誘手口を探った。

 そこでわかったのは「即戦力を求められることが多かった」ということだ。

「しきりに『いつからできますか?』と迫られるのが印象的でした。もたもたしていると、連絡が来なくなったりと、とにかく早く動ける人を探していたように感じました。また、ちょっとでも興味を示すと、本人確認の言い分で運転免許証の提示などをせがまれました。

 言わずもがな、一度見せてしまえば、身バレして後戻りができなくなるので、所在や身元がわかる情報は安易に見せてはいけません」

◆甘い言葉で勧誘する海外闇バイトの実態

 海外を活動拠点とした闇バイトについては「滞在費や食費は負担する」、「リゾートバイト感覚」など、魅力的な文言を並べて勧誘することが多いとのこと。

「実際に犯罪の“実行役”をSNS上で探しているリクルーターと通話し、仕事の内容を詳しく聞こうとしても『詳細はタイに来たら教えてあげる』と言われました。無論、現地に行ったら戻って来れる保証はありませんので、たとえ興味本位であっても、リゾートバイトの言葉に惹かれて海外に行くのは危険です」

 特殊詐欺に関しては全体の7〜8割が電話を主体に行われているそうだ。架け子は日本にいるとは限らず、海外から国内へ架電しているケースも多い。

特殊詐欺を仕掛ける側も巧妙で、闇バイト経験が初めての人を積極的に受け子や出し子に回す代わりに、警察に顔が知られている累犯者や闇バイト経験者は、最高3日までの稼働など、ルールが仕組み化されています。

「『捕まることはない』『心配ない』などと言ってくることが多いですが、闇バイトの実行役は犯罪組織にとってはいわば“捨て駒”で、逮捕されるリスクは非常に高いです。たとえ高額報酬を提示されても飛びついてはいけません」

特殊詐欺に巻き込まれないために必要な3つの「心構え」

 犯罪に巻き込まれないための「心構え」について、Aさんは次のように語る。

特殊詐欺の実態調査を進めるなかで、何度も危険や恐怖を感じました。一度でも闇バイトに参加したら逃げられないように仕組み化されているので、軽い気持ちで参加したら後戻りできないと思っておいた方がいいでしょう。そのため『安易に応募しない』『甘い言葉に騙されない』『お金欲しさに飛びつかない』の3点を意識することが大事になります」

 特殊詐欺はもとより、最近では新NISAに付け込んだ投資詐欺も多くなっているという。

 そう簡単にお金が稼げる“儲け話”はないことを肝に銘じ、闇バイトの勧誘に飛びつかないのが大切だと言えるのではないだろうか。

<取材・文/古田島大介

【古田島大介
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている

「リゾートバイト感覚」で闇バイトへ促す文言