要人警護のスペシャリスト集団の奮闘を描く映画『コウイン ~光陰~』(4月12日公開)の完成披露試写会が4月9日に東京・神楽座で開催され、出合正幸、竹島由夏、山崎真実、大鶴義丹、野村宏伸、柿崎ゆうじ監督が登壇した。

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本作は柿崎ゆうじ監督の実体験をもとに、民間警備会社の生き様を描いた『第二警備隊』(17)の続編として製作されたオリジナルストーリー。仲間の殉職という悲劇を胸に奮闘を続ける警備会社エステックが、再び大きな試練に立ち向かう姿を描く。マドリード国際映画祭2023外国語部門最優秀作品賞をはじめ、3か国の国際映画祭で5部門の受賞を果たしている。

本作に登場する警備会社エステックは、実際に存在する警備会社、ビーテックインターナショナルがモデルとなっている。株式会社ビーテックインターナショナルの代表も務めている柿崎監督は、「本作は『第二警備隊』の続編という位置付けなんですが、今回ご覧いただいたストーリーも半分くらいは実際にあったお話を脚色しています」と前作に引き続きリアリティを大切にしたとコメント。警備会社のメンバーは「拳銃はもとより、攻撃的な武器を一切持つことができない。防弾チョッキと警棒だけで、どんな相手にも立ち向かっていく」と説明しながら、「そういう姿を知っていただきたい」と本作に込めた想いを明かした。

エステックの隊長である高城久夫役の出合は、「チームを引っ張るリーダーとして活動している」と演じた役柄について紹介。「実際に、監督の会社で活躍していらしゃった方がモデルとなっています。監督には『ちょっと似ているところがある』と言っていただいた」と柿崎監督からは、「性格が似ている」と評されたという。さらに現在YouTubeで公開中の『コウイン ~光陰~ Episode 0』には、高城の性格がよく現れていると話した出合は「高城はすごく真面目。真面目なんですが、普通の人とは考え方や、見ている方向が違ったりする。そこが彼の欠点ではあると思いますが、『ここだ』と思った時の集中力がすごい」とキャラクターに愛情を傾け、「そういった長所と短所を引っ張ってくれる仲間たちと、うまくバランスが取れているんじゃないかなと思っています」と支えてくれる仲間たちに感謝しつつ、チームワークのよさについて触れた。

エステックの隊員である佐野容子役の竹島は、「とても野蛮な役。でも正義感がとても強い」と笑顔で佐野について分析。「『第二警備隊』では、佐野が入社する姿が描かれていました。佐野は元ヤンキーで、地元でどうしようもない生活を送っていたところ、真面目に働きたいとエステックに入社した」と前作の佐野にまつわるストーリーを解説し、「今回はそれから約10年後ということで、現場を経験して、身辺警護という仕事に誇りを持っている」とキャラクターの成長も表現したという。チームのリーダーである高城に荒っぽい口調で接する場面もあるが、佐野は「高城さんは、佐野にとって命をかけて一緒に戦っている仲間。暴言を投げかけられるのも、信頼している証なのかなと。そういった面を意識して演じていました」と目尻を下げていた。

リアリティを大切にしている本作だけに、出合は「撮影中は、警護をする者としての装備を全部、常に身につけていた。最初から最後まで、防弾チョッキや警棒、フラッシュライトなどを身につけている」、竹島も「無線機をつけたりと、必ずフル装備でした」とエステックのメンバーの装備にも注目してほしいという。竹島が「警棒を出す瞬間も、大袈裟な動きではなく、流れるような動きでスッと出すとリアルだと監督から教えていただいた。実際に人と人が命のやり取りをする瞬間の動きにこだわって、監督がアクションをつけてくださった」と振り返ると、柿崎監督は「見せるアクションというよりは、警備として『実際にこう来たら、こうするだろう』ということにこだわった」と力を込めていた。

撮影時の印象的なエピソードに話が及ぶと、工作員が潜んでいる可能性があるキャンプ場にやってきた家族連れの父親役を演じた大鶴が「結構、(アクションを)当ててくるんですよ。こっちもプライドがあって、『弱くしてくれ』と言えなくて。ちょっと『痛いな』と思った記憶があります(笑)」とアクションの相手役となった役者が本気の芝居でぶつかってきたとこぼして、会場も大笑い。それが映画の迫力につながればいいと願いながら「耐えた」と打ち明けた。また大鶴が「山梨に通って、10日間くらい撮影をして。楽しい思い出です」と充実感をにじませながら、「普通の家族が理不尽な暴力にさらされるというのが、本作の怖いところ。変なクセを出さずに、どこにでもいる普通のお父さんを演じるように心がけた」と役作りについて話すと、野村が「普段(の大鶴)はクセ強いもんね」とお茶目に口を挟み、大鶴と会場を笑わせる場面もあった。

警護を依頼してきた女性、早乙女役の山崎は「恋愛シーンもある」と出合演じる高城とのラブ要素について言及。出合と山崎は、2006年から2007年にかけて放送された特撮ドラマ「轟轟戦隊ボウケンジャー」以来、約18年ぶりの共演となった。山崎は「出合さんとは18年にわたる友人」だからこそ、一緒に恋愛シーンを演じる際に照れてしまうことを危惧していたとも。「でも大丈夫だったよね?」と出合と顔を見合わせた山崎は、「出合さんは、私に向かって言わないといけないセリフを、伊藤つかささんに言っていた。監督からも『それは早乙女に言うセリフでしょ』とツッコまれていた。高城と出合さんは、そういう女心がわかっていないところがそっくり」と長年の友人ならではの感想を楽しそうに語る。

これには高城も「彼女(山崎)と芝居することに、すごく緊張感があった。まだまだ未熟だなと思わされました。すみませんでした!」とタジタジとなり、「戦隊以来、初めての共演。友だちとして普通に会って話したりはしていたし、一方的にお互いのお芝居を見てはいたけれど、一緒に芝居はしていなかった」と苦笑い。山崎は「戦隊の時も、あまり同じシーンになることがなかったので、がっつりとお芝居で絡ませていただいたのは初めて。とても楽しかったです」と出合との縁や貴重な機会を喜んでいた。

野村が演じたのは殉職した中本役で、本作では回想シーンとしてお目見えする。野村は「高城に影響を与える人なので、大事な役だなと思いながら撮影に挑みました」と吐露。柿崎監督は「『第二警備隊』の時から、中本は一番モデルになった本人と近いキャラクターだと思っていた。『本人が生きていたらきっとこういうことを言うだろうな』というものを、セリフにしています。野村さんに演じていただいて、本人がよみがえったよう。モニターを見ていて、そういう気持ちになったことが何度もありました」と告白した。野村が「うれしいです」と微笑むなか、出合は「中本といういい先輩がいたからこそ、高城としてその意志を受け継いで、チームを引っ張っていこうと思えた。目をつぶっても、中本さんの顔をすっと思い浮かべることができた」と野村の名演があってこそ、高城の覚悟を胸に刻めたと感謝していた。

取材・文/成田おり枝

『コウイン ~光陰~』の完成披露試写会が開催された