【家電コンサルのお得な話・179】日本はエネルギーの9割近くを輸入に頼っている。世界的な燃料価格の変動は、私たちの生活に直結する電気・ガス料金に大きな影響を与えている。そんな中、燃料価格の高騰対策として政府が2023年1月使用分から展開してきた「電気・ガス料金の激変緩和対策事業」が、24年5月使用分で終了する。

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●家庭や企業の電気・ガス代負担が再び増える



 ロシアによるウクライナ侵攻など世界情勢の不安定化が原因で燃料価格が高騰している。この影響を緩和するため、政府は2023年1月使用分から、電気・ガス料金の激変緩和対策事業を展開してきた。同措置により、料金単価から一定の額を値引きする形で、私たち消費者の料金負担が直接的に軽減されてきた。

 しかし、斎藤健経済産業相は3月29日の閣議後の記者会見で、電気・ガス代の負担軽減措置を5月使用分までで終了する方針を明らかにした。

 燃料価格の高騰が一服したことを理由としているが、負担軽減措置の終了により、家庭や企業の電気・ガスの料金負担は再び増加することになる。また、5月使用分までとなっているが、5月の値引き単価は半減するため、実質的にこれまでと同等の値引きは4月使用分が最終となる。

 政府は、国民生活への過大な影響を避けるため、必要に応じて迅速かつ機動的に対応する姿勢を示しているが、この終了決定は多くの家庭にとって不安材料となっている。

 燃料油価格の変動は予測が難しく、中東情勢の緊迫リスクなど再び価格が高騰する可能性も否定できない。その際、政府の対応が迅速かつ十分であるとは限らず、家計に与える影響は計り知れないものとなる。

 対策事業の終了は、家計だけでなく、エネルギーを大量に使用する企業にも影響を及ぼす可能性がある。企業の経営コスト増加は、結果として商品やサービスの価格への転嫁につながり、さらに私たち消費者の負担増を招くことになるだろう。

 エネルギー安全保障と国民生活の安定を図るため、政府は今後も継続的な支援と対策の検討が必要である。また、再生可能エネルギーへの投資拡大や省エネルギー技術の促進など、中長期的な視点でのエネルギー政策の再構築も求められている。

 これらの施策を通じて、燃料価格の変動に左右されにくい持続可能な社会の実現を目指すことが大切だといえるだろう。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)

■Profile

堀田泰希

1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実戦的内容から評価が高い。

5月使用分で終了する「電気・ガス料金の激変緩和対策事業」