村上春樹原作初の長編アニメ映画「めくらやなぎと眠る女」の公開日が7月26日に決定、このほど日本版ビジュアルと予告映像が披露された。また、村上氏との共著もある米文学者で翻訳家の柴田元幸氏からコメントが寄せられた。

【動画】「めくらやなぎと眠る女」予告編

長編アニメ映画「めくらやなぎと眠る女」は、音楽家でアニメーション作家のピエール・フォルデスが村上春樹の6つの短編(「かえるくん、東京を救う」「バースデイ・ガール」「かいつぶり」「ねじまき鳥と火曜日の女たち」「UFOが釧路に降りる」「めくらやなぎと、眠る女」)を翻案した作品だ。

フォルデス監督にとって初の長編アニメーションで2022年6月、世界最大のアヌシー国際アニメーション映画祭でプレミア上映された本作は、同映画祭で審査員特別賞を受賞。2023年3月に行われた新潟国際アニメーション映画祭では第1回目のグランプリに輝いた。同映画祭の審査員を務めた押井守は本作の受賞理由として、「現代文学を表現する最適のスタイルなんじゃないかということで、3人の審査員の意見が一致した、唯一の作品」とコメント。監督自らが音楽も手掛ける本作は、レザルク・ヨーロッパ映画祭作曲賞を受賞したほか、世界各国の映画祭で高い評価を得ている。

大地震によって、人生に行き詰まっていることすら気づいていなかった人々が、自己のなかの真実に気づき、目覚めていく。あるものはかけがえのない出会いを、あるものは決定的な別離を体験する――6つの短編を再構成した本作について、フォルデス監督は「言葉にならないほど繊細で、想像を超えるほど奥深い感情、そんな感情を掻き立てる小説を使わないことなど考えられなかった」と語る。

さらに、「平凡な日常世界において、現実と内面の両方で起こった劇的な出来事によってその世界が揺るがされるちょっとマジカルな物語を、独自の方法で語りたかったのだ。マジックリアリズム的世界観でこの精神生活を見せるには、アニメーションは完全な手法だと感じている。なぜなら全てを一から作り直す必要があり、それが現実とのずれを生みだすからだ。このずらしと転移の必要性が私の監督としてのアプローチには不可欠なのだ」と、アニメーションだからこそ実現できた物語だと解説する。

"ミステリアスなものが絶え間なく問いを生み出すような雰囲気を目指した"というイメージのなかに、実際の俳優の動きを撮影してアニメーションの動きに取り込む"ライブ・アニメーション"とよぶオリジナルの手法でリアリティを植え付けることにより、唯一無二の世界観を生み出した。

日本版ビジュアルには、原作読者からも人気の高い"かえるくん"を軸に、小村、片桐、キョウコら登場するキャラクターが内包されており、かえるくんに寄り添う猫(ファンにはおなじみの"ワタナベノボル")にも注目だ。

予告編では、音楽や絵画などさまざまなアートに精通するフォルデス監督ならではの感性で、日常からシームレスに非日常に導かれていく本作の魅力を垣間見ることができる。7月26日からユーロスペースほか全国公開。

▼柴田元幸(米文学者・翻訳家)コメント
どんな物語も映画も多かれ少なかれ、現実と想像、外界と内面、現(うつつ)と夢とのあいだにいつのまにか建てられてしまった門を開けてくれる装置であるわけだが、この映画はその役割をとりわけしなやかに、深く軽やかに果たしてみせる。

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