4月16日に告示される衆院東京15区補欠選挙(4月28日投開票)で、出馬を表明した作家・乙武洋匡氏が、いきなり逆風に立たされている。乙武氏は小池百合子都知事が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」が設立した「ファーストの会」の副代表だが、ファーストの会公認ではなく、無所属で立候補する。乙武氏はその理由を、

「まっさらな状態で勝負をする方が、政治不信という状況が蔓延している中では相応しいのではないか」

 と説明したが、都民ファーストに「政治不信」が直撃しかねない状況となっているのだ。

 乙武氏が頼りとする小池氏をめぐっては、カイロ大学に留学していた当時の同居人が実名で、カイロ大学を首席で卒業したこともなく、中退したと告発しているほか、都民ファーストの元側近が学歴詐称の隠蔽工作に関与したと、「月刊文藝春秋」5月号で告発するなど、「カイロ大学問題」が再燃しているからだ。

 さらに乙武氏自身についても、2016年に週刊誌で5人の女性と不倫していた、とするスキャンダルが報じられた。記者会見でこれを聞かれた乙武氏は、

「今振り返っても恥じ入るばかりで、深く反省もしている。多くの皆さんの信頼を失い、ご迷惑をおかけもした。あらためて深くおわびしたい」

 乙武氏の女性問題には、江東区の選挙でその存在感を発揮してきた公明党の支持母体「創価学会」の婦人部(現・女性部)を中心に、強い拒否反応がある。

 本来なら乙武氏は都民ファースト自民党公明党の推しで「本命」のはずだったが、混戦模様になっている。これに頭を抱えているのが自民党だ。茂木敏充幹事長は乙武氏を推薦する意向を示したが、来年夏の都議選で都民ファーストと戦うことになる自民党都連は、ファーストの会副代表である乙武氏を積極的に推すことに消極的だ。

 東京15区の選挙結果は岸田文雄首相の今後の政権運営に影響を与えることが予想されるだけに、訪米中の岸田首相にとっては、乙武氏の動向は気が気でない。

奈良原徹/政治ジャーナリスト)

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