スーパーGTドライバーの大嶋和也選手が「たった3日」の練習でフォーミュラドリフトに参戦! 直撃インタビューで明かされた「驚きの参戦経緯」と緊張のデビュー戦の中身

この記事をまとめると

スーパーGT GT500クラスで活躍する大嶋和也選手がフォーミュラドリフトに参戦

■飲みの席で出た「走ってみない?」というオファーがキッカケとなり参戦に至った

スーパーGTで培ったノウハウがまったく通用しない新しいジャンルだと語った

現役GTドライバーがドリフトに挑戦!

 2024年のFDJ第1戦が4月6〜7日、富士スピードウェイで開催。既報のとおり、2022〜2023年のWRCチャンピオン、カッレ・ロバンペラ選手が予選で2位につけたほか、TOP32で素晴らしい走りを披露するなど、抜群のコントロールでファンを沸かせたが、それと同時に注目を集めていたのが、大嶋和也選手だと言えるだろう。

 ご存じのとおり、大嶋選手は2019年にGT500クラスでチャンピオンに輝くなど、スーパーGTで活躍するほか、スーパーフォーミュラにも参戦する国内トップドライバーだが、その大嶋選手がFDJ第1戦に登場。GRカローラドリフト競技にデビューした。

GTチャンピオンでも歯が立たないほどドリフトは異次元の競技だった

 残念ながら6日の予選では目立った走りを披露できずに決勝へ進むことができなかったが、今後もFDJに参戦する予定。レースシーンで活躍するドライバーがなぜドリフト競技に参戦することになったのか? レース競技とドリフト競技では何が違うのか? と、いうわけで、FDJ開幕戦の富士で大嶋選手を直撃してみた。

 ——基本的な質問ですが、ドリフトキャリアはどれくらいあるんですか?

大嶋選手:4日間です。今年になって自分のクルマや他の選手のクルマで3回練習して今回を迎えました。

 ——競技は初めてになるんですね。

大嶋選手:ルールもわからないし、練習走行のときもどこに並んでいいのかわからなくて迷子になりました。

 ——いきなりハイレベルの大会にデビューしたわけですね。ドリフト用のGRカローラに乗ったのも今回が初めてですよね?

大嶋選手:エライことを始めたな……と思いますが、この練習量で思っていたよりもできたと思います。GRカローラも昨日(4月5日)にできたので、そこで初めて乗りました。で、金曜日が雨で、ドライになったのは今日(4月6日)の練習走行の途中から。しかも、エンジンが吹けるようになったのは最後の4本ぐらいだったんですけど、意外に走れたので予選は通れるかも……と思っていたんですけどね。ダメでした。

GTチャンピオンでも歯が立たないほどドリフトは異次元の競技だった

 ——そもそも、なぜFDJに出ることになったんでしょうか?

大嶋選手:もともとチームオーナーと知り合いで、ドリフトの話をよくしていたんですけど、「GRカローラドリフト競技用モデルを作るから出てみない?」と誘われて。若干、お酒も入っていたのでやってみようと(笑)。ドリフトをやったこともないし、大変なことになることもわかっていたんですけど、気持ちの変化もあって、いろいろ人に迷惑をかけるかもしれないけど挑戦してみようと思いました。

 ——ドリフトのドライビングで難しいところはどこですか?

大嶋選手:滑り始めてからのコントロールは苦ではなくて、角度さえついてしまえば難しくはない。スピードが何km/h出ていようがキープすることはできますが、“きっかけ”の作り方がわからなかった。それに切り返したあとのサイドブレーキを引いたときに左足がクラッチをスムースに踏めなかったり、同時にアクセルを踏んで煽ったりすることがどうしても身体に馴染めなかった。考えながらやっていくとワンテンポ、ワンテンポ遅れていっていますね。

GTチャンピオンでも歯が立たないほどドリフトは異次元の競技だった

 ——レースではやらないドライビングですよね?

大嶋選手:まったくやらないです(笑)。本当に走りながら、これは正解だったとかこれは違っていたとかやっている状況だったので、本当は明日(7日の決勝)も走りたかった。まだ追走をやってなかったですし。

残りの数戦も引き続き参戦予定!

 ——初めてのドリフト競技は楽しかったですか?

大嶋選手:楽しかったですよ。でも、もうちょっと練習して、もうちょっとリラックスした状態で走りたかったですね。

 ——緊張したんですか?

大嶋選手:むちゃくちゃ緊張しました。

 ——普段のスーパーGTスーパーフォーミュラよりも緊張しました?

大嶋選手:緊張しましたね。そもそもドリフトに自信がないんで。スーパーGTもスーパーやフォーミュラもレースならコントロールできる自信はあるので、そんなにドキドキしないんですけど、ドリフトは何が正解なのかまだわからなくて、探りながらのドライビングなので緊張します。

GTチャンピオンでも歯が立たないほどドリフトは異次元の競技だった

 ——でも、富士スピードウェイはこれまで走り込んできたコースですよね。

大嶋選手:みんなからいわれるんですけど、ドリフトではまったくメリットはないです。そもそも100Rやヘアピンをあんな角度で入ったときは大クラッシュするときなんで役に立ってないです。

 ——ところで、予選での1回目の走行と2回目の走行はいかがでした?

大嶋選手:1回目はタイヤの温め方がうまくいってなかったと思うんですけど、練習走行のときと比べてリヤがグリップしなくて100Rの立ち上がりではらんでしまった。切り返すタイミングが遅れて、角度がつかなくて、アクセルオンも遅れてしまって、回転が落ちたときに戻ってしまった。2回目は1回目よりもよかったんですけどね。金曜日の練習走行のときから前荷重になるときにフロントのパワステが固まることがあったんですけど、それが急に出てしまってコントロールできませんでした。僕が早いタイミングでこの領域で走ることができていたなら、この問題も解決できたと思います。

GTチャンピオンでも歯が立たないほどドリフトは異次元の競技だった

 ——そのステアリングのトラブルがなければ、予選を通過できた手応えはありますか?

大嶋選手:そうですね。練習走行の最後はフィーリングが良くて、20位ぐらいには行けるかなぁ……という出来だったので、もったいないなぁとは思いますが、しょうがないですね。

 ——レースとドリフトの走行で共通するものはありますか?

大嶋選手:角度のセンサーはまったく違いますが、荷重のセンサーは同じ。角度に関しては僕の場合、“これ以上は進めない”と思ったら勝手に止めていたんですけど、ドリフトのドライバーはわざと角度をつけて止めている。練習中、誰よりも速い速度で走ってはいるんですけど、角度が足りなくて、それに最初は戸惑いましたね。

 ——ドライビングポジションも変わってくるんですか?

大嶋選手:好みもありますが、たまたまステアリングがちょっと遠いので、それに合わせてレースよりも遠目でやっていますね。全体的にゆとりをもってやっています。

GTチャンピオンでも歯が立たないほどドリフトは異次元の競技だった

 ——今後のFDJの参戦予定は?

大嶋選手:出場できるところは参戦したいと思います。このあとの練習で僕がめげなければ、第3戦のエビスと第6戦の岡山は出たいと思います。

 このようにレースシーンで豊富な実績を持つ大嶋選手でも、ドリフト競技は“別物”で苦戦の展開。しかし、練習走行で見せたスピードはトップレベルであるだけに、今後もFDJではWRC王者のロバンペラ選手とともに、新しいフィールドに挑む大嶋選手の動向にも注目したい。

GTチャンピオンでも歯が立たないほどドリフトは異次元の競技だった

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スーパーGTドライバーの大嶋和也選手が「たった3日」の練習でフォーミュラドリフトに参戦! 直撃インタビューで明かされた「驚きの参戦経緯」と緊張のデビュー戦の中身