井上との大一番に向け、鼻息を荒くするネリ。日本を騒然とさせた騒動に対する想いを明かしている。(C)Getty Images

 大一番に向けた緊張感が高まる中、メキシコの悪童も臨戦態勢に入っている。来る5月6日東京ドームで行なわれるボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)とのタイトルマッチに挑むルイス・ネリメキシコ)だ。

 数多の問題行動を繰り返し、“悪童”として日本ファンに知られる。そんなネリの悪名を世界に知らしめたのは、17年と翌18年に行われた山中慎介氏との試合で犯した“愚行”だ。

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 ネリは2017年と18年にWBC世界バンタム級タイトルマッチとして山中氏と対戦した際に、ドーピング違反と体重超過を犯し、王座から失墜。日本ボクシングコミッションJBC)から日本での活動停止とライセンス申請の剥奪という処分を科され、事実上の永久追放を受けていた。

 ただ、日本を騒然とさせた騒動から5年の時が流れ、ネリも着実に成果を出してきていた。昨年には2月にアザト・ホバニシャン(アルメニア)を、7月にフローイラン・サルダール(フィリピン)をそれぞれTKOで撃破。同年11月のWBC年次総会で指名挑戦者となり、井上と戦うための正当な権利を手にしていたのだ。

 そして、今年2月にJBCは井上との対戦に向け、先述の処分の撤回を正式に発表。東京ドーム決戦の実現にこぎつけた。

 もっとも、日本で「異例」とされた処分の撤回をネリは「JBCが俺を日本から追放したことはあまり気にもとめなかった」という。現地時間4月9日に米ボクシング専門サイト『Boxing Scene』のインタビューに応じ、こう言及している。

「向こうは俺がナオヤ・イノウエと戦うと儲かると踏んだ。だから、試合の禁止処分を解除したんだろう。イノウエはこの試合を個人的に捉えているかもしれない。だから、彼が何をしようが、考えようが関係ない。終わったことは終わったことであり、それを歴史から消すことができないからだ」

 さらにネリは「何よりも、今の俺はいつもより落ち着いている。無敗でも、王者でもない。勝とうが負けようが何も問題はないんだ」と断言。周囲の喧騒とは裏腹に、自身が井上戦に向けて重圧を感じておらず、気楽に臨んでいるとアピールした。

イノウエにはリスクがある。リマッチ条項がないからだ。それは彼の自信過剰さを表している。簡単に勝てると思っているのかもしれないが、サプライズが起きる。俺は厳しいトレーニングを積んできたんだ。イノウエがこの試合を受け入れたのは間違いだ。彼らには勝ち目がないからね。名誉のためにやっているが、向こうは、後になって、この試合を引き受けたことを後悔するはずだ」

 JBCからの処分が解除されて間もない今年3月に実施された井上戦の発表記者会見でネリは「2度裏切ってしまいましたが、今回は節制をし、きちんと調整しています。偉大なる試合をみせたいと思います」と回答していた。そうしたなかで、今回のインタビューでの言動は真逆と言える。一方で、いつもの敵を容赦なく挑発する“ヒールスタイル”を取り戻した感もある。井上にとっては倒しがいのある相手になったかもしれない。

 決戦まで約1か月を切った。果たして、厳格な調整が求められるなかで、両雄がいかなる仕上がりを見せるかは大いに興味深いところだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

山中慎介との騒動は「終わったこと」ネリ、JBCからの“異例”な処分撤回に持論「試合を受けたことを後悔する」