第37期竜王戦(主催:読売新聞社)はランキング戦ほかが進行中。4月10日(水)には1・3・5組の計3局が行われました。このうち、東京・将棋会館で行われた1組ランキング戦の佐藤康光九段―伊藤匠七段の一戦は115手で佐藤九段が勝利。現代矢倉のねじり合いを制して決勝トーナメント進出を確定させました。
○新旧矢倉対決

今期の1組ランキング戦は17名からなるトーナメントを勝ち上がった2名が本戦出場権を得るもの。準決勝に当たる本局は大きな分水嶺です。振り駒が行われた本局は先手の佐藤九段が矢倉を採用、対して後手の伊藤七段が中住まいに組んだのは近年流行のバランス重視策です。

右銀を繰り出して主導権を求めた佐藤九段ですが、角筋を生かした伊藤七段の反撃に手を焼くことに。中央の歩を突き捨ててこの角筋を止めたのはひねり出した受けといった印象で後手ペースの感は否めません。しかし実戦はここから佐藤九段の勝負術が光りました。
○苦境跳ねのけ佐藤九段勝利

銀で角取りをかけられた局面、これを手抜いて左桂を跳ね出したのが駒効率を重視する指し回し。直後に見せた成り捨ての歩も味のよい利かしで、これで後手は確実に攻めを一手遅らされています。伊藤七段としては中盤で金銀交換を拒否した消極策が裏目に出た形です。

苦しい時間を耐えた佐藤九段は軽妙な攻めで優位を拡大します。先に跳ね出した桂が後手陣中央に成り込めては勝負あり。終局時刻は21時45分、最後は自玉の受けなしを認めた伊藤七段の投了で佐藤九段の11年ぶりとなる1組ランキング戦決勝進出が決まりました。

佐藤九段は決勝で久保利明九段―山崎隆之八段戦の勝者と対戦、敗れた伊藤七段は出場者決定戦に回ります。

水留啓(将棋情報局)
(将棋情報局)

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