商船三井さんふらわあが関東-北海道航路に投入する新造船「さんふらあ かむい」がついに進水しました。日本で3隻目、東日本では初となるLNG燃料の大型フェリーは、塗色も一新。船首の構造も奇抜です。

「東のさんふらわあ」もLNG燃料に!

内海造船は2024年4月11日、同社因島工場で、商船三井が発注したLNG(液化天然ガス)燃料フェリー「さんふらわあ かむい」の命名・進水式を開催しました。同船は2024年12月に内海造船から引き渡しを受けた後、商船三井グループの「商船三井さんふらわあ」が用船し、2025年初頭に大洗(茨城県)―苫小牧北海道)航路の深夜便に投入される予定です。

新造船「さんふらわあ かむい」は、商船三井グループで3隻目のLNG(液化天然ガス)燃料フェリーとして計画されました。進水式では荷主である道内コンビニ大手セコマの丸谷智保会長が命名を行いました。

船体は“さんふらわあ”の象徴である大きな太陽のマークは残しつつ、白を基調とした従来船からデザインを一新。海と空を表す「青」が船体の半分以上に塗られており、「夜明けの海」と「新しい時代を照らす光」をイメージしたデザインだそうです。大洗―苫小牧航路への就航後は同型船と共に、既存の「さんふらわあ だいせつ/しれとこ」を代替します。

船体の大きさは約1.4倍となる1万5600総トン。全長も既存船の190mから199.4mへと長くなりました。積載能力は大型トラック(13m)換算で135台から155台に増加しましたが、乗用車は62台から50台に減っています。旅客定員は157人で、客室は従来の大部屋を廃止し全室個室化しました。トラックドライバー向けに快適な空間を提供することで、モーダルシフトを促進し、「2024年問題」の解決を図っていくのが狙いです。

主機関にはLNGと重油(適合油)を使用できる2元燃料低速エンジン1基を搭載。LNGは従来の燃料油に比べてCO2二酸化炭素)を25%、SOx(硫黄酸化物)を100%削減できる効果が見込まれており、海事産業全体で課題となっている環境負荷を大幅に低減することができます。

これに加えて、斜め向かい風を推進力に利用する船首形状「ISHIN船型」をはじめ最新の環境技術を加えることで、従来船に比べCO2排出量を約35%削減することが可能になりました。また、内海造船が開発した省エネ装置などの新技術を取り入れており、さらなるCO2の削減を実現するといいます。

「今すぐできる環境対策」LNG燃料フェリー4隻体制に

商船三井グループは2050年までにネットゼロ・エミッションを達成することを目指し、次世代燃料の積極的な導入を掲げています。このうちLNG燃料は従来の重油焚き船と比べ25~30%のGHG(温室効果ガス)削減効果があることから「今すぐ実現可能な取り組み」と位置づけて、外航・内航問わずLNG燃料船の整備を進めています。

すでに大阪―別府航路へ「さんふらわあ くれない」「さんふらわあ むらさき」を投入済みで、さらに大洗―苫小牧航路にもLNG燃料フェリー2隻が投入され、4隻体制となります。

LNG燃料のバンカリング(供給)は、複数台のタンクローリーと船を同時に接続し短時間で補給を行う「トラック・ツー・シップ」方式で実施されており、「くれない/むらさき」は別府港で燃料補給を行っています。「さんふらわあ かむい」が就航する大洗―苫小牧航路は距離が長いため、大洗港と苫小牧港の両方で「トラック・ツー・シップ」方式によるLNG燃料の補給を実施します。

大洗―苫小牧航路のLNG燃料フェリー1番船となる「さんふらわあ かむい」は2025年中の就航を予定しています。2ストロークエンジンによる東日本初のLNG燃料フェリーは、どのような乗り心地になるのでしょうか。

新造船「さんふらわあ かむい」進水式の様子(深水千翔撮影)。