お笑いコンビ・くりぃむしちゅーがMCを務める「くりぃむしちゅーの熊本どぎゃん!?」が4月12日(金)夜7:00より熊本県民テレビにてスタートする。いまや“メディア王”と呼ばれる存在となったくりぃむしちゅーにとって、初となる地方局ゴールデンレギュラー番組はいかにして実現したのか。熊本県民テレビ・コンテンツ戦略担当取締役の平田毅氏と、番組プロデューサーの東美希氏に、番組制作の経緯や意気込みを伺った。

【写真】居酒屋で談笑するくりぃむしちゅーの上田晋也と有田哲平

■「てれビタ」に代わる熊本県民テレビの新たな名物番組に

結成30年超えの人気お笑いコンビ・くりぃむしちゅー。二人の故郷である熊本は2016年4月に震災に見舞われた。くりぃむしちゅーはそのわずか2ヶ月後からニッポン放送主催で熊本の支援を目的としたチャリティトークライブを各地でスタート。2017年には熊本でもライブが開催され、熊本県民テレビがサポートに入ったことがきっかけで、特番「くりぃむしちゅーのぎゃん!行って ぎゃん!行って ぎゃん!!」が制作され、2018年10月に放送された。

同番組は、4月から新たに始まる「くりぃむしちゅーの熊本どぎゃん!?」と同じ金曜日の19時に放送され、自社制作の番組としては過去最高となる世帯視聴率24.5%を記録。平田氏は、「局にとっても非常に画期的な出来事となり、くりぃむしちゅーのお二人とも『またいつか番組ができたらいいですね』というようなお話をしました」と振り返る。しかし、その後、くりぃむしちゅーの二人はさらに多忙を極めていき、なかなか実現できずにいた。

そんな中、熊本県民テレビは大幅な改編に打って出る。27年間、熊本の人々に愛されてきた夕方の情報ワイド番組「てれビタevery.」を3月末に終了させたのだ。そこには、「てれビタ」に集中させてきた人員と制作費を分散し、若いクリエイターたちに色んな番組を経験させたいという思いがあったという。そして、昨年夏に番組プロデューサーの東氏をはじめとした若手中心で新番組の検討チームを設立した。

「名物番組を閉じる以上は、これ以上ない最高のキャスティングを狙いたい。そこで再度浮上したのが、くりぃむしちゅーさんのお名前でした。けれど、お二人は今まさに“メディア王”となろうとしている最中。きっと受けてくださらないだろうと思いながらも、当社の宗田英成社長からつないでもらった日本テレビの高橋利之氏さんにご指南いただき、昨年の秋頃から交渉を進めて参りました」(平田氏)

高橋利之氏は日本テレビ執行役員コンテンツ制作局専門局長で、『行列のできる法律相談所』『有吉反省会』『絶対に笑ってはいけないシリーズ』などの人気番組の総合演出を務めてきた。くりぃむしちゅーがレギュラー出演し、3月末に惜しまれつつ最終回を迎えた『世界一受けたい授業』も手がけた高橋氏の全面協力もあって、年末に交渉が成立。そこから内容を具体化していく中で、同じく熊本県出身の3ピースロックバンド・WANIMAが番組テーマソングを書き下ろすことも決定した。平田氏は「我々が想定していたよりも、もっとステージが上がってくという、なかなかない経験をしているところです」と、いまだに信じられない気持ちを明かした。

■番組名には、くりぃむしちゅーから「ダサくないか」とツッコミが

くりぃむしちゅーさんと一緒に番組を作ることがずっと夢だったので、念願叶って社員全員大喜びでした。お二人は19歳で故郷を離れ、以来ずっと東京に住んでいらっしゃいます。ご本人たちも最近の熊本については、ほぼ無知とおっしゃっていたので、お二人と共に初歩の初歩から熊本について知っていきながら、新たな魅力を発見していけるような番組にしたいと思っています」(東氏)

くりぃむしちゅーの熊本どぎゃん!?」は、10代で故郷を離れたくりぃむしちゅーがオール熊本ロケで、東京で自慢できる熊本の人・モノ・場所を「いまの熊本、どぎゃん?」と探っていくロケバラエティ。「どぎゃん?」とは、標準語で「どう?」を意味する熊本弁だ。最初にこの番組名を伝えた時には、二人から「ダサくないか」と言われたとのこと。初回の収録でも「やっぱり変わってないじゃないか!」「ダサいままで行くんか!」と散々ツッコまれたという。

記念すべき初回の放送では、今まさに地震の被害から復興を遂げようとする熊本城から幕を開け、熊本市の中心市街地を巡っていく。色んな人から「熊本のおすすめの店を教えて」と言われても、答えられないのがずっと悩みだったという二人。ロケでは、熊本城のお膝元にある商店街を歩きながら青春時代に想いを馳せつつ、二人が熊本にいた頃にはまだなかった、“東京の代官山に負けないくらい”お洒落なカフェにも訪れたそうだ。

「お二人の高校時代や子供の頃のエピソードトークも、おそらくふんだんに入ってくるだろうと思います。初回のロケでも、テレビ初出しの話が飛び出しました。そんな風に故郷で思い出に浸り、英気を養って東京に戻っていただければ、我々としても嬉しいです」(平田氏)

そんな二人のロケを彩るテーマソングは有田哲平も好きなラップ調で、かなりディープな熊本弁も盛り込まれた。WANIMAの“新たな魅力”も垣間見える、番組趣旨にぴったりなお洒落な楽曲に仕上がっているという。「1回目の放送では、WANIMAの皆さんがくりぃむしちゅーのお二人と対面し、完成した楽曲を聴いてもらう場面があります。お二人の反応にも注目してみてください!」と東氏は見どころを語った。

TVerで熊本発のコンテンツを全国に届ける

熊本地震から8年。大きな被害を受けた街がどんどん復興を遂げていく中、熊本に今年、台湾の半導体メーカー・TSMCの日本初の生産拠点となる工場が建設された。平田氏は「これから熊本は台湾から来る人も増え、我々も想像がつかないような変化を遂げていくと思うんですね。そういうタイミングで、くりぃむしちゅーのお二人とこうした番組をスタートできるのは非常に嬉しいですし、今の熊本を象徴しているのではないかと思います」と語る。

今回の番組作りを通して、平田氏自身も新たな熊本の魅力に気づいた。

くりぃむしちゅーのお二人は高校の頃から地元では有名人だったそうです。服のセンスが良く、他校の生徒の間でもカリスマ的存在だったとか。そんなお二人が東京に進出され、大スターになられた。食事をご一緒した際の雑談でさえ、テレビを見ているかのように面白くて。なのに、飾り気がなく親しみやすいんですよね。そんなお二人を熊本が生んだんだと思うと、感慨深い気持ちになります。改めて考えてみると、くりぃむしちゅーさんやWANIMAさん、ものまねタレントのコロッケさんなど、熊本出身の方は唯一無二の魅力を持った有名人が多いんです。やっぱり熊本はすごいなって、思いました」(平田氏)

熊本の人は郷土愛が強く、キー局の番組でも地元のローカルネタが扱われると途端に視聴率が伸びるそう。熊本で生まれ育った東氏も「都会に出た友達から『熊本って全然遊ぶとこないね』なんて言われると、普段自分もそう思っているくせにムカついちゃうんですよね。私だけじゃなく、基本的に熊本県民はそういうところがあって、どこか熊本のものが一番!っていう根拠のない自信があるんです」と語る。

そんな郷土愛強めの東プロデューサーが手がける「くりぃむしちゅーの熊本どぎゃん!?」は、4月から月に1回、10月から週に1回のペースで放送される。3月末まで夕方の情報番組をやりながら準備に追われていたため、さすがに現場も対応できないとのことで、最初は月1からのスタートとなった。

くりぃむしちゅーのお二人は自分たちのスケジュールの都合で月1になったと思っていたようで、『すみませんが、半年間トライアルを一緒にやってください!』とお願いしたら『そっちの都合かい!』とツッコまれてしまいました(笑)。そもそも、この番組は熊本で撮ったVTRを東京でお二人に見ていただくスタイルにしようと思っていたんです。けれど、お二人の方から『月1回でもロケに行きたいです』とおっしゃっていただいて、今回の形になったという経緯があって。そこにすごく熊本愛を感じました」(東氏)

なお、本番組はTVerでも見逃し配信される。TVerのサービスが2015年に始まって以降、『マルコポロリ!』(関西テレビ)や『かまいたちの掟』(さんいん中央テレビ)など地方局が制作する番組が全国で注目されるようになった。「熊本どぎゃん!?」もその一つになれば、という期待はあるのだろうか。

TVerに関してはキー局の名だたるバラエティー番組との競合になってくるので、どこまで太刀打ちできるのかは正直言って未知数です。ただトライする価値のある企画であるという自負は持っています。『熊本県民テレビの社運がかかっています』とお二人にプレッシャーをかけさせていただいたところ、上田さんからは『なんでそんなもん背負わせるんだよ』とツッコミが返ってきました(笑)」(平田氏)

これまでも『てれビタ』では、熊本の旬のネタを届けてきたが、夕方の時間帯はそれよりもニュースを求められる傾向にあるそう。そのため、ここ数年は一生懸命取材したものが見てもらえない辛さがあったという東氏は「ずっと熊本から全国で見てもらえるコンテンツを送り出したいという思いがあったので、これが最後のチャンスというくらいの気持ちでチーム全員の力を注ぎ込んでいきたいと思います!」と意気込んだ。

くりぃむしちゅーの熊本どぎゃん!?」の記念すべき1回目は4月12日(金)よる7時から放送。以降の放送日は、番組の公式ホームページやSNSをチェックしてほしい。

4月12日よりスタートする新番組「くりぃむしちゅーの熊本どぎゃん!?」 /(C)KKT