―[シリーズ・駅]―


 3月16日に金沢―敦賀の125㎞の区間が延伸開業した北陸新幹線新駅や新線を訪問する鉄道ファンのことを“誕生鉄”と呼ぶのだが、今回筆者は開業初日に新たに新幹線駅となった敦賀、越前たけふ、福井、芦原温泉、加賀温泉、小松の6駅を訪問。開業フィーバーで盛り上がっていた各駅の様子をレポートする。

敦賀駅

 前日に富山で1泊し、16日の同駅6時21分発のつるぎ3号に乗車。最初は空いていたが、金沢駅で大勢の乗客がなだれ込んで一気に満席に。この新幹線は各駅ではなく福井駅にのみ停車し、7時27分に敦賀駅に到着。すでに開業セレモニーは終了しており、会場の撤去が始まっていたが開業初日に駅を訪れることができるのは感慨ひとしおだ。

 敦賀駅は何度も訪れたことがあるが、新幹線側の東口の供用が始まったのはこの16日から。駅前全体が新しく、目の前を流れる木の芽川沿いにベンチが用意されて河川敷には遊歩道も整備されている。

 ただし、東口と西口を結ぶ自由通路はないので降り口を間違えると大変だ。7~19時まで15分間隔で無料の連絡バスが運行されているが、散歩がてら歩いてみることしたが、移動距離は約2㎞で25分もかかってしまった。

 でも、敦賀駅西口の駅前から伸びる『シンボルロード』と呼ばれる大きな通り沿いには、筆者が好きな『銀河鉄道999』や『宇宙戦艦ヤマト』といった松本零士作品のキャラクターの銅像が並んでいた。こんな意外な発見に出会えるのも旅の醍醐味かもしれない。

 さらに延伸開業から2日間は『つるが街波祭』が開催されており、歩行者天国に並ぶブースで無料配布していたバッチやクリアファイル、トートバッグなどの記念品をゲット。短い滞在ながら思った以上に満喫することができた。

越前たけふ駅

 敦賀駅からはJR西日本から経営分離され、北陸新幹線の延伸開業に合わせて16日に開業したハピラインふくい武生駅に移動。地元の越前市は現在放送中の大河ドラマ『光る君へ』で吉高由里子演じる紫式部が一時期住んでいた場所としても知られ、少し足を伸ばして市内で今年末まで営業中の『越前大河ドラマ館』を見学。

 ここから武生駅は約1.8㎞、新幹線駅の越前たけふ駅に至っては約5㎞と少し離れている。ただし、シャトルバスが運行されており、ほかに観光案内所などで販売しているタクシーチケット『迎車でGO!』を使えば500円と格安で移動でき、筆者もこれを利用した。

 越前たけふ駅は、延伸区間では唯一の新幹線専用駅。駅の隣には道の駅もあり、約600台分の無料駐車場は満車だ。

 敷地内にはミニ新幹線のアトラクションもあり、特設テントでは俳優・小泉孝太郎のトークショーも行われていたが、こちらには残念ながら間に合わず。また、買おうと思っていた新幹線の形をした駅弁も完売で購入できなかった。まさかここまで人、人、人で溢れているとは……。

福井駅

 越前たけふ駅から福井駅までは新幹線でわずか8分。県庁所在地だけあって駅前も賑やかだ。

 ちなみに福井県は、日本で発見された恐竜の化石の8割を占める恐竜王国。駅構内には恐竜との記念撮影スポットがあり、駅舎の外壁には恐竜のイラストなど恐竜づくしとなっている。

 次の列車まで時間があったため、駅併設の商業施設の飲食店は行列ができるほどの大混雑。そこで焼き鯖寿司弁当を買って昼食を取ることにしたが、地元名物だけでやっぱり美味い。

 食後は柴田勝家の最後の居城としても有名な北ノ庄城(福井城)跡、国の名勝でもある養浩館庭園などを散策。駅西口・東口の広場にあるトリケラトプスやフクイティタンなどの巨大な恐竜像も含め、思った以上に駅周辺に見どころがあった。

芦原温泉駅

 芦原温泉駅まで向かうハピラインふくいの車内は、朝晩ラッシュ時の山手線かと思うほどの大混雑。やはり開業初日のせいか筆者同様に延伸区間の駅巡りをしている人が多いようだ。

 福井駅から列車で15分ほどの同駅は、日本三大絶勝のひとつに数えられる景勝地・東尋坊の玄関口。ここでもほかの各駅同様に開業イベントが行われており、駅前の歩行者天国には出店やキッチンカーが並んでいる。

 しかも、筆者が訪れたタイミングで約400年の歴史を持つ県内有数のお祭り『金津祭』で流れる祭囃子が地元の保存会によって演奏。以前から機会があれば見たいと思っていた祭りだったからお囃子だけとはいえ、ちょっと得した気分になることができた。

加賀温泉駅

 芦原温泉駅からはこの日3度目となる新幹線で隣の加賀温泉駅へ。片山津温泉山代温泉山中温泉と北陸を代表する温泉の最寄り駅となり、高架の新幹線ホームからは高さ73mの加賀大観音が見える。

 イベントの特設会場では、グッチ雄三や間寛平ダンディ坂野のステージがあったことを到着後に知るがいずれもすでに終了。それでも加賀市に古くから伝わる獅子舞の演舞を見ることができたので満足。

 そして、嬉しいことに会場では地元の日本酒や名物の加賀棒茶が振る舞われたほか、地元米や加賀三湯の温泉の素の入ったお土産も配布されていた。もちろん、すべて頂いたのは言うまでもない。

小松駅

 最後に訪れたのが小松駅。駅前には地元発の企業で今や世界を代表する建設機器メーカーとなった小松製作所の重機が展示されている。

 ここでも例によって延伸開業当日はイベントが開かれ、グルメ屋台がズラリ。それもよく見ると金沢カレーなどの地元グルメだけでなく、お隣の富山県名物の白エビコロッケやもつ煮込みうどん、長野名物の五平餅など北陸新幹線の沿線の名物料理のブースも多い。

 それだけでなく色鮮やかな上絵が特徴の地元名産の磁器・九谷焼の絵付け体験ができるブースなどもあった。ステージでも動物の着ぐるみ姿のバンドが演奏しており、会場の子供たちが大はしゃぎだった。

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 終わってみると駅巡りというは各地のイベント巡りになってしまったが、1か所滞在時間が短い中で効率よくその土地の文化や食などに触れられるのはよかった。次はぜひ時間をかけてじっくり観て回りたいものだ。

<TEXT/高島昌俊>

【高島昌俊】
フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。3度の世界一周経験を持ち、これまで訪問した国は50か国以上。現在は東京と北海道で二拠点生活を送る。

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敦賀駅に入線した北陸新幹線