5月に開催される第77回カンヌ国際映画祭の、オフィシャル部門のラインナップ第1弾が発表になった。第1弾というのは、これから各部門で例年通り、追加作品が出ることがすでに予告されているからだ。

フランスの気鋭、カンタン・デュピューの「Le Deuxième Acte」(アウト・オブ・コンペティション)で開幕を迎える今年のコンペティション作品は現状19本。デビッドクローネンバーグ、パオロ・ソレンティーノ、ジャック・オーディアール(ミュージカル)、クリストフ・オノレ、アンドレア・アーノルドといった常連に加え、カンヌは久々となるフランシスフォード・コッポラ、ポール・シュレイダー、「哀れなるものたち」でベネチアアカデミー賞を席巻したばかりのヨルゴス・ランティモス、「聖地には蜘蛛が巣を張る」のアリ・アッバシ、カンヌは6年ぶりとなるジャ・ジャンクー、ショーン・ベイカー、ミゲルゴメス、キリル・セレブレンニコフなど。

注目はふたりの新鋭フランス人監督で、ひとりは映画祭ディレクターのティエリー・フレモーが「ダルデンヌ兄弟的」と評する、初長編でいきなりコンペ入りしたアガット・リダンジェール。ふたり目は前作「REVENGE リベンジ」が日本でも公開されたコラリー・ファルジャ。新作も再びヴァイオレントなジャンル映画のようだ。果たして「落下の解剖学」のジュスティーヌ・トリエや、「TITANE チタン」のジュリア・デュクルノーのようなダークホースとなるだろうか。

4作が並ぶアウト・オブ・コンペティションは、ジョージ・ミラーの「マッドマックス フュリオサ」、ケビン・コスナー監督、主演のウェスタン、ケイト・ブランシェットが主演するガイ・マディンら3監督の共同制作によるコメディピーターチャンの新作。

ある視点部門は15本が発表になり、そのうち初監督作が6本とフレッシュな顔ぶれに。日本からは奥山大史監督の「ぼくのお日さま」が入選した。

カンヌ・プルミエール部門は、レオス・カラックスの個人的エッセイとも言える「C'est pas moi」や、リティ・パンのドキュメンタリーなど6本。ミッドナイト・スクリーニング部門には、韓国のアクション映画2本、ニコラス・ケイジ主演の「The Surfer」、俳優ノエミ・メルランの監督作の4本が並ぶ。

また業界における技術促進を反映し、今年から新たにVR作品部門の「コンペティション・イマーシブ」が新設されることが発表された。こちらのラインナップはまだ未定だが、8作品が選ばれる予定。一方、今年の栄誉パルムドールは、ジョージ・ルーカスに授与される。

4月11日にパリで発表会見を開いたフレモーによれば、今回のセレクションにはハリウッドストライキの余波が関係したということだが、およそ2000本の応募作から選ばれたラインナップは、カンヌらしい作家主義的な個性派が目立つコンペティションと、スターが揃う華やかな他部門のバランスが取れたものと言える。

コンペティションの審査員長は「バービー」のグレタ・ガーウィグ、ある視点部門の審査員長にはグザビエ・ドランが決まっている。映画祭は5月14に開幕し、26日の閉幕式で各受賞が発表される。(佐藤久理子)

▼コンペティション部門入選作(4月11日現在)

「THE APPRENTICE」(原題) アリ・アッバシ
「MOTEL DESTINO」 (原題)カリム・アイノズ
BIRD」(原題) アンドレア・アーノルド
「EMILIA PEREZ」(原題) ジャック・オーディアール
「ANORA」(原題)ショーン・ベイカー
「MEGALOPOLIS」(原題) フランシスフォード・コッポラ
「THE SHROUDS」(原題)デビッドクローネンバーグ
「THE SUBSTANCE」(原題) コラリー・ファルジャ
「GRAND TOUR」(原題)ミゲルゴメス
MARCELLO MIO」(原題)クリストフ・オノレ
「CAUGHT BY THE TIDES」(英題)ジャ・ジャンク
「ALL WE IMAGINE AS LIGHT」(原題) パヤル・カパディア
「KINDS OF KINDNESS」(原題)ヨルゴス・ランティモス
「L'AMOUR OUF」(原題)ジル・ルルーシュ
DIAMANT BRUT」(原題)アガット・リダンジェール
「OH CANADA」(原題)ポール・シュレイダー
「LIMONOV - THE BALLAD」(原題) キリル・セレブレニコフ
「PARTHENOPE」(原題)パオロ・ソレンティーノ
「THE GIRL WITH THE NEEDLE」(英題) マグヌス・フォン・ホーン

映画祭ディレクターのティエリー・フレモー(左)