「価格の安さだけじゃ勝負できない。付加価値が大事なのだ」

鼻息も荒くやってきた缶詰博士の黒川氏。突然なにを言い出したのかと思いましたが、その手には見慣れないサバ缶が。

「これはプロテインを配合した高タンパク質のサバ缶です。アスリートにもいいし、健康志向の人にもいいのでは」

→これまでのお話はこちら

○若い人にも食べてほしい

昨年のある日のこと。千葉県銚子市にある信田缶詰に、銚子商業高校の先生と生徒、そして武内製薬の社員が訪れた。プロテインを配合したサバ缶を造りたいという。

「アスリートの人や、ふだん缶詰を食べない若い人に食べてほしいんです」
「うん。いいんでない」
「武内製薬のコラーゲンプロテインを配合して、缶のデザインも同社のプロテインブランド〈THE PROTEIN〉と共通化できたらいいかなと」
「うん。いいんでない」

そんなやり取りがあったと言われている。

そうして試作と試食を経て、ついに4月1日に発売されたのが「ザ・プロテインさば水煮」であります

○缶汁がウマい

フタを開けてみると、半透明の缶汁がたっぷり入っていて、その下にサバの切り身が見えた。サバは小振りだが、数量は5切れと多い。

立ち昇る匂いは一般的なサバ水煮と変わらない。缶汁にトロミがついているわけでもない。コラーゲンプロテイン配合というから、何となく缶汁がプルプルしているのかと思っていた。

取りあえず缶汁をすすってみると、塩味が強めに利いている。サバのうま味も溶け出ているから、濃く煮出したサバの出汁のようでまことにウマい。

それと、汁の舌触りが何だかすっきりしている。単純な水煮よりもサラサラしている気がするのだ。不思議である。

○引き締まった身

サバの一片を取り出すとこんな缶じ。小振りのサイズで、身がきゅっと引き締まっているのが箸ごしに伝わってくる。

今どきは日本近海で獲れるサバが小型化しているから、国産サバを使ったサバ缶はこのサイズがスタンダード化するかもしれない。しかし、それでもいいのだ。小型には小型なりの戦い方があるはずである。

プロテイン増し増し

かくのごとし。食パンにバターを塗ってから、トマト、ブロッコリーとともにサバを乗せ、こんがり焼いて朝食とした。

食パンは10枚切りを使い(炭水化物を減らしたつもり)、逆にサバは1缶の2/3を乗せてある。さらにコラーゲンプロテインが入った缶汁も上から掛け、プロテイン増し増しにした。

サバは歯応えがあり、赤身の魚らしい味と香りがある。脂身は少ないが、例えば脂の乗りが少ない初ガツオなんかが好きな人だったら、これでモーマンタイでありましょう。

ちなみに、コラーゲンプロテインは粘度が低く、水に溶けやすい性質を持っているそうだ。だから缶汁がサラサラしていた、のかもしれない。

缶詰情報
信田缶詰/ザ・プロテインさば水煮 105g 実勢価格429円
スーパー、ドラッグストア、コンビニなどで販売予定。同社直販サイトでも販売予定あり

缶詰博士 かんづめはかせ 昭和41年福島県生まれ。公益社団法人・日本缶詰協会認定の「缶詰博士」。世界50カ国以上・数千缶を食している世界一の缶詰通。ひとりでも多くの人に缶詰の魅力を伝えたいと精力的に取材・執筆を行っている。テレビやラジオなどメディア出演多数。著書に「旬缶クッキング」(ビーナイス/春風亭昇太氏共著)、「缶詰博士が選ぶ!『レジェンド缶詰』究極の逸品36」(講談社+α新書)、「安い!早い!だけどとてつもなく旨い!缶たん料理100」(講談社)など多数。初のエッセイ本「缶詰だよ人生は」(本の泉社刊)も絶賛発売中!公式ブログ「缶詰blog」とFacebookファンページも公開中。 この著者の記事一覧はこちら
(缶詰博士)

画像提供:マイナビニュース