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 自作PCのパーツの中でも中核となるのは名前のとおりマザーボードだろう。マザーボードはさまざまだ。メーカーを決め、チップセットが決まったとしても、それでも複数枚の中から1枚を選ぶことになる。そこで参考になるのがマザーボードのシリーズ名だ。シリーズ名はターゲット層やデザインごとに付与されているので製品選択に悩むユーザーの助けになる。

 今回掘り下げたいのはMSIのゲーミングエントリー「GAMING PLUS」シリーズ。比較的最近登場したシリーズだ。MSIのゲーミングマザーボードはこれまでエンスージアスト向けの「MEG」、ハイエンド向けの「MPG」、メインストリーム向けの「MAG」といった3つのシリーズで展開してきた。しかし昨今PCパーツは値上がりしている。もっと手軽にゲーミングPCを自作したいという方も多い。こうした声に応えてくれるのが「GAMING PLUS」シリーズだ。

「GAMING PLUS」シリーズが特徴に挙げているのは「シンプルな機能」&「シンプルなデザイン」。上位シリーズのマザーボードで重要なのは「付加価値」や「差別化」で、豪華なVRM設計、豪華デザインに追加チップもモリモリとするところだが、シンプルを追求する「GAMING PLUS」シリーズは、VRM設計はゲーミングの基準を満たしつつコストを抑え、デザインはコスト上昇を抑えつつ個性を演出、追加チップはできるだけ使わないといった方向と言える。とくにVRM設計についてはどのくらいマージンを見積もるか、メーカーの腕の見せ所だ。

 さて、その「GAMING PLUS」シリーズも現行各CPU、チップセットごとに展開されており、フォームファクタ(ATX/microATX)の異なるモデルが発売されている。最初に現在展開中の「GAMING PLUS」シリーズをIntel LGA1700向け、AMD AM5向けのモデルで紹介しよう。

現行LGA1700向けのIntel Z790、B760搭載GAMING PLUSは3モデル

Z790 GAMING PLUS WIFI

 コスパを重視しつつも拡張性に妥協できないという方は、上位チップセットとなるがIntel Z790を搭載する「Z790 GAMING PLUS WIFI」を選んでほしい。拡張スロットPCI Express 5.0 x16、PCI Express 3.0 x1、PCI Express 4.0 x4、PCI Express 3.0 x1と計4基備えており、M.2スロットPCI Express 4.0 x4×4基と豊富だ。拡張カードを挿したい、SSDを豊富に搭載したい……本当にエントリーかと疑うが、自作PCなら予算のついた段階で追加搭載していけるから決して異端なわけではない。

 VRM14+1+1フェーズ。SPSではないものの十分な数で負荷分散ができ発熱も抑えられる。そしてヒートシンクVRM部のものはとくに大型のアルミ製、チップセットは当然として4基のM.2スロットすべてに搭載しており高見えする。

B760 GAMING PLUS WIFI

 コスパを求めるユーザーに最適チップセットはIntel B760。「B760 GAMING PLUS WIFI」はIntel Z790モデルの「Z790 GAMING PLUS WIFI」と比べてさらに1万円ほど安く、一方でIntel B760のゲーミングマザーボードとしてDDR5採用の中では最廉価クラスの位置にいる製品だ。

「B760 GAMING PLUS WIFI」は「GAMING PLUS」シリーズの中でも少しユニーク。写真のとおり、5本並ぶPCI Express x16スロットは夢が広がる設計だ。ゲーミングマザーボードではあるが、TVチューナーを複数搭載すれば多チャンネル録画PC、キャプチャなら多チャンネル収録PC、NICならサーバー的な用途を検討している方にも刺さるスペックではないだろうか。

 M.2スロットPCI Express 4.0 x4×2基と少なめ。とはいえ、最近の拡張スロットを減らしてM.2スロットを増やすといったトレンドを嘆いていた方にとっては英断と言えるのではないだろうか。なお、M.2スロット自体が少ないのでヒートシンクの数は少なくPCBの露出が多め。VRMは12+1+1フェーズだ。

B760M GAMING PLUS WIFI

「B760M GAMING PLUS WIFI」はここまで紹介してきたATXマザーボードよりもひとまわり小さなmicroATXフォームファクタの製品だ。ATXモデルの「B760 GAMING PLUS WIFI」がユニークだっただけに、「B760M GAMING PLUS WIFI」はやや「GAMING PLUS」のシンプル路線がより強調されがちだが、ヒートシンクのカラーがシルバー、その上のプリントがグレー+パステル系グリーンと、少しPOPな見た目が精彩を放っている。

 microATXで低価格となるとメモリスロットを2本に減らすものもあるが、ゲーミングモデルの「B760M GAMING PLUS WIFI」はしっかり4本備えている。拡張スロットPCI Express 4.0 x16、PCI Express 3.0 x1、PCI Express 4.0 x4で、M.2スロットPCI Express 4.0 x4×2基。microATXの拡張性はATXに劣るが、オンボードオーディオ機能に加え2.5GbEにWi-Fi 6E(+Bluetooth 5.3)も搭載しているので、エントリーゲーマーのニーズの範囲では十分に足りるだろう。

AM5向けのAMD X670E、B650を採用する3つのGAMING PLUS

 つづいてAMD AM5向けの「GAMING PLUS」シリーズマザーボードを紹介していこう。

X670E GAMING PLUS WIFI

 AM5の最上位チップセットAMD X670Eを採用。AMD X670EなのでPCI Express 5.0 x16スロットを搭載しており次世代への備えも万全。M.2もPCI Express 5.0 x4対応スロットを1基搭載している。そのほかは拡張スロットPCI Express 3.0 x1×2、PCI Express 4.0 x4×1、M.2スロットPCI Express 4.0 x4×3基。エントリーグレードとは思えぬ拡張性だ。

 VRM14+2+1フェーズで、80A対応のSPSを用いているため、上位シリーズの「MAG X670E TOMAHAWK WIFI」と同じ。PCBについてはさすがにMAG X670E TOMAHAWK WIFIが8層に対し「X670E GAMING PLUS WIFI」は6層でコストを抑えている。なお、シルバーヒートシンク上にグレー×パステル系グリーンのパターンというカラーリングで、ATXのモデルは現在のところ本製品のみなので、個性的なデザインを求める方にもオススメだ。

B650 GAMING PLUS WIFI

 AM5でコスパ重視のゲーミングPCを組みたいならAMD B650チップセットの「GAMING PLUS」シリーズがオススメ。よく知られるところだが、上位のAMD X670はAMD B650のチップを2つ搭載しているため、どうしても高価になりがち。チップ1つのAMD B650こそ本来のスペック&価格であって、スペック敵にもメインストリームユーザーのニーズは完全に満たせる。

「B650 GAMING PLUS WIFI」はそのAMD B650を採用したATXフォームファクタのモデル。拡張スロットPCI Express 4.0 x16、PCI Express 3.0 x1、PCI Express 4.0 x4という3本だが、仮に3、4スロット厚のグラフィックスカードを組み合わせたとしても残りの拡張スロットに被らない絶妙なレイアウトで実運用時の拡張性は高い。M.2スロットは2基と少なめだがどちらも性能を引き出せるCPU直結のものとなっている。VRMは12+2+1フェーズ。

B650M GAMING PLUS WIFI

 AMD B650チップセットのmicroATXモデル。B650 GAMING PLUS WIFIとはフォームファクタだけでなくヒートシンクカラーやレイアウトから異なる。まずカラーリングはシルバーにグレー×パステル系グリーンのパターン。AMD AM5向けでは「X670E GAMING PLUS WIFI」と同じカラーリングだ。microATXのコンパクトなマザーボードだが、ヒートシンクVRMが大型アルミに加えチップセットと2基のM.2スロットも装着されているため、このサイズとしてはPCBに対するヒートシンク専有面積が大きい。見た目にこだわる方にもオススメだ。

 拡張スロットPCI Express 3.0 x1、PCI Express 4.0 x16、PCI Express 3.0 x1、M.2スロットは2基。microATXの標準的なものと言えるだろう。インターフェースでは2.5GbEにWi-Fi 6E、USB 3.2 Gen2x2 Type-Cも備えている。VRMは10+2+1フェーズで今回紹介した中では少なめだが、スタンダードマザーボードよりは多い。

構成例1 安さと安定感を両立する王道ゲーミングPCを20万切りで

 ここからは、「GAMING PLUS」シリーズのマザーボードを用いたPCの構成例をご紹介しよう。

 まずはIntel B760チップセットの「B760 GAMING PLUS WIFI」を用いたプランから。ATXフォームファクタの本製品にミドルタワーケースを組み合わせたゲーミングPCの王道スタイルだ。「B760 GAMING PLUS WIFI」を用いて価格を抑えつつも拡張性を持たせて発展性も期待できる。ゲーミング性能を左右するのはおもにグラフィックスカードで、これによって予算規模が大きく変わってくる。ただ、今回はエントリーグレードのゲーミングPCの予算規模を10万円台半ば〜20万円までの範囲とし、それでもRTXをあきらめない方向で検討してみよう。フルHD〜WQHD環境で満足できるフレームレートを実現できるPCだ。

■CPU
Core i5-14500」(インテル
実売価格3万8000円前後


■CPUクーラー
「AK400」(DEEPCOOL)
実売価格3000円前後


 CPUは最新世代のCore i5-14500。Pコア6基、Eコア8基で14コア20スレッド対応なので、昨今の6コア以上を求めるAAAタイトルの推奨スペックもクリアできる。もちろんCore i5「K」SKUよりは低価格であるし、PBPが65W、MTPが154Wというように熱量も抑えられているからCPUクーラーのためのコストも抑えられる計算だ。

マザーボード
「B760 GAMING PLUS WIFI」(MSI
実売価格2万円前後

■メモリ
「ARD5-U32G88MB-48B-D」(サンマックス)
実売価格1万1000円前後
または
「W5U4800CS-16G」(CFD販売)
実売価格1万2000円前後

 動作モードDDR5-4800のものを選んでいるのはCPUのサポート上限ということもあるが、DDR5-5600(Core i5-14500ではOC扱い)と比べて若干安いこともある。16GB(8GB×2枚キット)のほうが安いが32GB(16GB×2枚)を選択しているのは、一部ゲームで容量不足によりパフォーマンスが発揮できない可能性があるためだ。

■SSD
「PG3NF2 CSSD-M2B1TPG3NF2」(CFD販売)
実売価格1万2000円前後
または
「P3 Plus CT1000P3PSSD8JP」(Crucial)
実売価格1万2000円前後

 ストレージについては必要な容量を選んでいただくのがよいが、ここでは参考として1TBのものを選んでいる。B760 GAMING PLUS WIFIPCI Express 4.0 x4サポート。PCI Express 4.0世代でも高価・高速のものから安価・低速(x2接続のものなど)のものまであるが、シーケンシャルで5GB/sクラスのミドルレンジモデルが費用対効果的にベストだろう。

■グラフィックスカード
GeForce RTX 4060 VENTUS 2X BLACK 8G OC」(MSI
実売価格4万9000円前後

 GeForce RTX 4060カードはシングルファンならより安く抑えられるが、今回はミドルタワーを組み合わせているのでサイズにこだわる理由はなく、一方でシングルファンは動作音がやや気になるレベルになってしまうところがネック。デュアルファンでコスパのよい「GeForce RTX 4060 VENTUS 2X BLACK 8G OC」で、性能と静音性を両立させよう。

■電源
「MAG A650BNL」(MSI
実売価格7000円前後

 Core i5-14500にGeForce RTX 4060の組み合わせなら、実消費電力のMAXは300W程度となるので電源出力は550〜650Wクラスで十分だ。今回は比較的余裕のある650Wの「MAG A650BNL」を選択した。コスパのよい電源だがケーブルは直付けタイプなので、余ったケーブルはうまくまとめて隠せるケースを選びたい。

■ケース
「MAG FORGE 320R AIRFLOWパソコン工房限定モデル)」(MSI
実売価格1万980円前後

 ガラスサイドパネルが今どきのゲーミングデザイン。電源カバーにより余ったケーブルも隠しやすい。加えて製品名にもあるエアフローもポイント。フロントメッシュに加え、標準でフロント×3基、リア×1基の12cm角ファンを搭載しているので、ケースファンの追加購入なしでも十分なエアフローが確保できる。コスト重視の自作では、CPUやグラフィックスカードの性能に価格比重を置く傾向にあるが、実際に使う、安定して動かす、より長く使いたいなら冷却も軽視できない。激安ケースではなく本製品を選んだのはこうした理由からだ。

■OS
Windows11 home」(マイクロソフト
実売価格1万6000円前後

 上記価格はパッケージ版のもの。パーツと同時に購入するDSP版なら2000円程度安い。ただしDSP版はセットで購入したパーツにライセンスが結びつけられるため、そのパーツ故障が壊れて交換した場合や次回PCを新調する際に引き継ぐことが出来ない。コストは上がるがMicrosoftアカウントに紐づけられるパッケージ版のほうがトータル的には安く済む場合もある。このPCを今後どのように使っていくのかも想定して選ぶのがよいだろう。

合計価格16万6980円前後

 この構成は予算内に収めつつも信頼性の高いものを選びつつ、ここぞというところには予算を多めに配分している。半導体の寿命を縮めるのは熱。4基のファンでしっかり冷やし、CPUやGPU、各パーツのVRM(電源回路)の温度上昇を抑えられれば、PCの寿命や安定性に寄与するという見積もりだ。

構成例2 グラフィックスカードは後々追加プランでまずは予算10万円のメインストリームPC

 もうひとつのプランは、この時点ではゲーミングPCとは言えない。グラフィックスカードレスの構成だからだ。自作PCは完成後も発展させていけるものだ。つまりは後々、グラフィックスカードを搭載した時こそこのPCの最終形態であり本当の完成と言える。このプランを検討してほしいのは、とくにバイトなどでコツコツとお金をためて1台組もうという方。目指すはゲーミングPCとしても、モチベーションを高く保つべく高価なグラフィックスカードは後回しとしても先にPCとして使える状態にしておくことは悪くない。予算は10万円前後。第1形態としても手を出しやすいだろう。

■CPU
Core i5-14400」(インテル
実売価格3万6000円前後

 先のCore i5-14500と違ってCore i5-14400はPコア6基、Eコア4基で計10コア16スレッドといったスペックだ。ただしポイントはゲームでとくに重要なPコア数が6基で同等というところ。もちろん予算がつくならCore i5-14500を狙ったほうが高性能なのは間違いないが、コストをとことんセーブしたい方はこうした選び方をしてみるのもよいだろう。また、CPUクーラーも最初はCPU付属のリテールクーラーで予算を抑える方向とした。

マザーボード
「B760M GAMING PLUS WIFI」(MSI
実売価格2万0000円前後

■メモリ
「CFD Selection W5U4800CM-8GS」(CFD販売)
実売価格5000円前後
または
「D5D4800-8G2A」(ドスパラ
実売価格6000円前後

 メモリーは計16GBとしている。スタンダードPCとしては標準的な容量だが、正直に言えば、ゲームはけっこうメモリーを消費するのでもう少し多めのほうが理想だ。ただしそこは先のとおり「後で追加をすればよい」的な考え方ができる。マザーボードのメモリスロットは4本。第1形態の8GB×2枚に、必要と感じた時もう8GB×2枚を追加するという方法が可能だ。メモリ4本挿しは(最近は改善したと言うが)相性問題などが生じやすい。メモリー追加の際は同じ型番のメモリーを選ぶことでリスクを抑えたい。

■SSD
「PG3NF2 CSSD-M2B1TPG3NF2」(CFD販売)
実売価格1万2000円前後
または
「P3 Plus CT1000P3PSSD8JP」(Crucial)
実売価格1万2000円前後


ストレージに関しては同製品を選んだ。

■電源
「MAG A650BNL」(MSI
実売価格7000円前後

 本来、CPUの統合GPU機能を使うなら電源出力も最小クラスの450W、550Wといったもので十分に賄える。しかし今回は最終的にはグラフィックスカードの搭載を目指すプランだ。グラフィックスカードを搭載しても問題ない十分な出力のものを最初から選んでおく。

■ケース
「MAG FORGE M100R(パソコン工房限定モデル)」(MSI
実売価格7980円

 フロントメッシュの通気性がよいmicroATX用ケース。クリアサイドパネルであるとともに、電源カバーも採用しているので電源MAG A650BNLの余ったケーブルをうまく隠せる。本製品も標準でフロント×3基、リア×1基の12cm角ファンを搭載しているので追加投資なしでもエアフローはかなりよい。

■OS
Windows11 home」(マイクロソフト
実売価格1万6000円前後

こちらも同様にパッケージ版を選択した。

合計価格10万3980円前後

 Core i5-14500→14400の変更はそれほど価格を抑えられていないが、ほかにもCPUクーラー代やメモリー容量を抑え、ケースもmicroATX用として、グラフィックスカード抜きで比較をしても先の王道プランに対し1万円近く予算を圧縮している。この1万円分、PCを手に入れられるまでの期間が早くなるし、あるいはこの1万円分グラフィックスカードに予算を回すといったプランも組める。CPUの切り換わり時期にはオススメしづらいが、仮にグラフィックスカードの切り換わり時期なら新GPUを見据えてといったことも可能だ。モノは考えようである。自作PCへのモチベーションが高まればそれが正解なのだ。

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