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 日米のプロ野球で活躍した元投手の長谷川滋利氏が、現在メジャーで話題になっているピッチクロックと投手の故障に対して、さらに日本人投手の変化球が次々と話題になることについての見解を示した。選手側からネガティブな反応が出ているピッチクロックには「実はメンタル的にはすごくいいこと」とコメント。また変化球については「流行の逆張りが有効なんです」と語った。

【映像】全米で話題のヨーヨーカーブ!凄まじい落差に打者絶句

 長谷川氏は1991年からオリックスで主に先発投手としてプレー142試合で57勝45敗1セーブの成績を挙げると、翌年から昨年までは大谷翔平投手が所属していたエンゼルスに移籍。主にリリーフとして5年間プレーすると、2002年から4年間はマリナーズでもプレー。9年間で517試合に登板し、45勝44敗33セーブ83ホールドの成績を残した。

 日米球界に精通する解説者としても人気の長谷川氏だが、昨年からメジャーで導入されたピッチクロックが、投手の肩・肘を中心とした故障につながっているという話題について、むしろポジティブな面もあると私見を述べた。

 長谷川氏 早く投げればいけないのは身体には負担がかかることだが、それだけがケガの理由ではもちろんないです。球速も速くなって投球の出力も上がっているし、色々な理由があるんです。ただ一方で実はテンポよく投げることはメンタル的にはいいことなんですよ。自分主導で始まるピッチャーはマウンド上でどうしても考えすぎてしまって、それで野球人生を終えてしまう人も多い。練習だったり、準備だったりマウンド上以外のところではじっくり野球を考えてやらないといけないけど、いざマウンドに上がった時は意識的に“無”になれることが大事。そういう投手が結果を残しやすいですよね。

 もともとピッチクロックの導入は、試合時間を短縮して、より多くのファンに楽しんでもらうために導入されたものでもある。まだ導入から2年目でもあり、審判団も細かくジャッジしているという。

 長谷川氏 全体的に見てもMLBのためにはすごく良いことです。ファンも試合時間が短縮して喜んでいるし、他のアメリカのスポーツ、フットボールバスケットなんかと比べても変わらない試合時間になっている。ただ選手の立場になってみたら、ここまで早くする必要あるの?とは思ってしまいますよね。去年ぐらいの秒数でも良かったのにさらに今年に入って早くなったから。ただ今は取り分け厳しく取り締まっていると思うんですよ。ルールが浸透していけばもうちょっと柔軟になると思う。だって仮にワールドシリーズの最終戦がピッチクロック違反で試合終了になったら面白いですか?(笑)ピッチャーバッターの真剣勝負が野球の面白いところなのに、それで終わっていいのかという。そうならないように今は取り分け厳しいんだと思います。

 投手については、今シーズンもドジャース山本由伸投手、パドレス松井裕樹投手、カブス今永昇太投手がメジャーデビューを果たし、それぞれ活躍し始めている。昨シーズンはメッツ千賀滉大投手の「おばけ(ゴースト)フォーク」が全米で話題となり、今季は早くも山本の大きなカーブが「ヨーヨーカーブ」と呼ばれている。毎年のように日本人投手の変化球が注目される理由はなんなのか。

 長谷川氏 確かにすごく今注目されているんですよ。ある球団なんかは日本人のフォークがいいから、そのためだけに日本人のコーチを招聘しようとしていて。ただ大きな落差のフォークも弧を描くカーブも元々はアメリカから来たものです。ノーラン・ライアンが投げていた当時はカーブが全盛で、当時は大きく変化する球種が主流でした。それからカットボールやツーシームなど小さな変化をする球種が出てきてバッターが対応できないから、みんなが投げるようになった。でもそうすると打者もそれに適応しおうと対策を立てる、これの繰り返しなんですね。よって今は縦の大きな変化球を投げる人が少ない、だから山本投手のカーブが希少で打てないんです。流行の逆をいくとバッターも対応できないんですよね。

 メジャー投手最高額の契約を結んで大注目となった山本は、前回登板でメジャー初勝利を挙げた。週末には韓国での開幕戦でKOされたパドレスとのリベンジマッチが待っている。

 長谷川氏 どうしても日本人同士の対決に注目がいってしまうけど、チーム同士の対決にも注目ですね。同地区のライバル同士、これから何度も対戦していくわけですから、前半戦を占う意味でも面白いですね。ここで苦手意識を持ってしまうと今後どんどん差が開いてしまうのでパドレスは本気でぶつかってくると思う。ドジャースはそんなに意識してないと思うけど、仮にここで3連敗してしまうとそのイメージが残ってしまう。意外にシーズンの試合の一部と思ってしまうんだけどそうでもないですね。あるんですよこれ、僕らの時はエンゼルスヤンキースに強いけどレッドソックスは苦手とか。そういうイメージがつかないようにした方がいいですね。

 山本投手は韓国では打たれたけど「場所が違う」と、こっちがメジャーの舞台だと思って切り替えられる。なんでもポジティブに考えますから(笑)。問題ないと思います。さらにアメリカで登板したこの2試合を見ていると、日本にいる時のようなピッチングになってますから、本人も安心してるんじゃないかと思います。ただ日本時代からずっと見てきたので我が子のように心配です(笑)。
 

長谷川滋利氏、MLBで物議のピッチクロックに「実はメンタル的にいい」日本人投手の変化球がブレイク連発「流行の逆張りが効く」と見解