ユニクロが、回収した古着由来の商品を販売する「UNIQLO古着プロジェクト」の取り組みを続けている。2023年10月に原宿店で実施した第1弾に引き続き、ポップアップストアを設置した。

【画像】ユニクロの古着、リメーク商品(全8枚)

 第2弾は、東京・世田谷千歳台店と福岡・天神店の2カ所にポップアップストアを設置し、8月末まで続ける予定だ。ポップアップストアでは古着のほか、ビンテージ加工でリメークした商品も販売する。果たして、古着を活用する取り組みは、今後ユニクロの新業態となっていくのだろうか。

●新品よりも「やや割安」の古着を販売

 ポップアップストアは、ユニクロの古着をリサイクル・リユースする取り組みである「RE.UNIQLO」の一環だ。全国の店舗で回収した古着を基にした商品を販売している。冒頭の通り、ポップアップストアは23年10月に原宿店で、12日間の期間限定として開催していた。

 筆者は、実際に世田谷千歳台店を訪問してみた。同店は小田急線千歳船橋駅から徒歩で15分ほどの場所に位置している。環八通り沿いにあり、徒歩よりもクルマで来る客を想定していると思われる店舗だ。同じ施設には、スポーツクラブや温浴施設が入居している。

 世田谷千歳台店のポップアップストアは、店舗内のワンコーナーとして設置していた。原宿店と同様に、洗浄済みのリユース品とビンテージ風に加工したリメーク品を販売している。

 前者のリユース品はいわゆる「古着」。長袖シャツが1500円、デニムは2000円、ジャケット類は3000円という価格設定になっていた。ユニクロにおいて、デニムの新品価格は概ね4000円、シャツ類は3000円以上のものが多い。リユース品の価格はやや割安、といったところだろうか。古着らしく商品の色やサイズはバラバラであり、主にカジュアルな服が並んでいる。

●ビンテージらしくない、ユニークな色合いが特徴

 リメーク品は、特殊な染色加工でビンテージ風に仕上げた商品を陳列していた。とはいえ、正直なところ年代物のレトロ感があるビンテージ品というよりは、色あせるように仕上げた染色品、という印象を受ける。商品は全体的に色あせた感じであり、ところどころに味がある色むらやシワを見かけるといった形だ。主にパーカーやシャツ類があり、価格帯は2000~3000円と、こちらもリーズナブルである。

 ポップアップストアの品ぞろえについて、さまざまな色・形状の服が並んでいるリユース品に対し、リメイク品はピンク・青・茶色など、ある程度の統一性があった。染色パターンがいくつか決まっているのだろう。

 リメーク品の加工では、衣料用生地大手・小松マテーレの染色技術「ガメダイ」を採用している。小松マテーレでは自社の生地だけでなく、他社から回収した服の染色にも対応。独自の高圧染色機「染料役者」を用いた技術であり、部分染めやムラ染めといった、ビンテージに見せる染め方も可能だという。

 一般的なビンテージ品は、加工品も含めて茶色や黒など暗い色が多く、明るい色はあまり見かけない。その意味で、ポップストアで陳列しているリメーク品の色合いは「ユニクロユニーク」といえ、固定のファンがつきそうだ。「古着」ではなく、あくまで「新品」として全国の店舗に展開すれば、ある程度売れる予感がする。

 ポップアップストアの隣には「RE.UNIQLO STUDIO」も設置していた。世田谷千歳台店を含め全国11店舗(4月9日時点)に展開しており、ユニクロ商品を対象に、傷がついた箇所をミシンなどでリペアするサービスを提供している。オリジナルの刺繍をつけるようなリメークも可能だ。リペアは500円から、リメークは700円からという価格設定になっている。

●古着の回収を20年近く続けている

 ユニクロは06年に、全商品が対象服となる回収活動を開始。現在では、ファーストリテイリングが運営するGUも含め、各店舗で古着の回収を行っている。回収した服は難民キャンプや被災地への支援に使うなど、もともとは人道支援に関連する活動が主だった。

 昨今は世の中の潮流を反映してか、有効活用の幅を広げたり、古着を商品化したりする動きがみられる。20年9月には、回収した古着をリユース・リサイクルするプロジェクトのRE.UNIQLOを開始。回収したダウン商品の素材を活用した「リサイクル ダウンジャケット」を同年11月から販売している。

 22年11月にはサステナビリティに関する説明会を実施し、ビジネスモデル全体で循環型経済の実現を目指す方針を掲げた。そして23年10月に、UNIQLO古着プロジェクトとしてポップアップストアの第1弾を開催した。

 第1弾で販売した商品も、リユース品とリメーク品だ。しかし、ユニクロの取り組みを取材した記事『ユニクロが海外展開先で聞かれた衝撃の一言「わが国に何をしてくれるのですか」』によると、古着商品をただちに多店舗で展開することは考えていないという。各店舗でのトライアルを通じ、事業化の可否を検討していくようだ。

 第2弾となった今回、原宿店のような駅前の店舗ではなく郊外の店舗で実施した背景には、ロードサイドの需要を見極めたい思惑があるのかもしれない。今回は第1弾よりも長期間にわたって開催する予定だが、果たして第3弾、第4弾と実証店舗は増えていくのだろうか。売れ行き次第では、古着販売がユニクロの新定番となり、全店でリサイクル・リメーク品を扱い始めるかもしれない。

●著者プロフィール:山口伸

経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。

古着を活用したサービスを始めたユニクロ