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 1500年前に現在の南米アルゼンチン、パタゴニア地方で暮らしていた狩猟採集民は、キツネをペットとして飼っていたのかもしれない。

 「カニャーダ・セカ遺跡」にある人間の墓のすぐ近くにきちんと埋葬された絶滅種キツネの骨が発見されたからだ。

 遺骨の分析からは、彼らが人間と同じような植物をたくさん食べていたらしいことも明らかになっており、当時の人々と密接な関係を築いていたことがうかがえるという。

 

【画像】 人間と一緒に埋葬されていたキツネの骨を発見

 『Royal Society Open Science』(2024年4月10日付)に掲載されたこの研究は、アルゼンチン西部のメンドーサから南へ210kmのところにある、「カニャーダ・セカ遺跡」を調査したものだ。

 1991年に発見されたこの遺跡からは、子供を含む少なくとも24人の骨のほか、この人たちの所持品と考えられるネックレスビーズ・石器・テンベタ(下唇に孔を開けて取り付ける装飾品)などが発掘されている。

 放射性炭素年代測定の結果によるなら、彼らはおよそ1500年前にこの遺跡で暮らしていた人たちであるようだ。

 そんな遺跡の墓の1つから、キツネの骨が見つかったのだ。

・合わせて読みたい→野生のキツネを犬のような従順なペットにするための交配実験から明らかとなった家畜化遺伝子(ロシア研究)

 当初、イヌ科のスジオイヌの仲間だろうと推測されていたが、正確な測定とDNA分析の結果、すでに絶滅した「Dusicyon avus」というキツネの仲間であることが判明した。

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動物の骨を調査したところ、約500年前に絶滅したDusicyon avusであることが判明 / image credit:Francisco Prevosti

絶滅したキツネは人間と共に暮らしていた

 こうした人間と一緒に埋葬されたキツネは、南米では2件目の発見で、おそらくは意図的なものだと考えられている。

 DNA分析により、この動物は当時の狩猟採集民と一緒に食事をし、ともに暮らしていたことが明らかになったのだ。

 オックスフォード大学の動物考古学者オフェリー・ルブラスール氏は、「おそらく狩猟採集社会やその個人と深い関係があったのでしょう」と語る。

 キツネが遺跡の人々から可愛がられていただろうことは、食べ物によっても裏付けられている。

 骨に含まれる炭素と窒素の同位体を調べたところ、このキツネが墓の中の人物と同じ植物をよく食べていたことが明らかになったのだ。野生のキツネならば、もっと肉を主体としたエサを食べていたはずだ。

・合わせて読みたい→青銅器時代、キツネは家畜化されていた(スペイン)紀元前3千年から2千年

 論文ではこう述べられている。

もっとも妥当な説明は、このキツネが狩猟採集民グループの大切な仲間だったというものだ

生前人間と強い絆で結ばれていたからこそ、飼い主やキツネと交流のあった人々の死後、そこに埋葬されたのだろう
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Dusicyon avusは体重10~15kgの中型種で飼い犬がパタゴニアに到着してから数百年後の約500年前に絶滅した / image credit:Juandertal / WIKI commons

現在のパタゴニアの犬は絶滅したキツネとの混血ではない

 ルブラスール氏によると、「イヌ(Canis familiaris)」は4000年ほど前に人間と一緒に南アメリカ大陸にやってきたが、3000年前までパタゴニア北部にはまだ住んでいなかったようだ。

 それを示すように、この地域にイヌがいたことを示す最初の証拠は、先住民社会がヨーロッパ系のイヌを繁殖させ始めた16世紀からのものだ。

 こうしたことから、現代のこの地域に見られるイヌたちが、キツネとの混血であるという仮説がある。

 だがルブラスール氏によるなら、この仮説が正しいとは考えにくいという。

 カニャーダ・セカのキツネのDNA分析からは、キツネとイヌの間に生まれた子供のほとんどは子供を作る力がなかっただろうことが明らかになったからだ。

 遺跡のキツネたちの子孫は、その後、ヨーロッパからの移住者たちに生息地を奪われ、環境が変化したことで絶滅したのではないかと考えられている。

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photo by iStock

 ヨーロッパのイベリア半島北東部でも青銅器時代(約5000~6000年前)に人間と共に多数の犬や有蹄動物にまじってキツネが埋葬されていることが判明している。

 骨折したキツネに人間が治療をした跡も残されており、昔の人はキツネをペットとしてかわいがっていたのかもしれない。

追記:(2024/04/13)本文を一部訂正して再送します。

References:Patagonian partnerships: the extinct Dusicyon avus and its interaction with prehistoric human communities | Royal Society Open Science / Pet fox with 'deep relationship with the hunter-gatherer society' buried 1,500 years ago in Argentina | Live Science / Was an extinct fox once man's best friend? / written by hiroching / edited by / parumo

 
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キツネはペットだった?人間と絶滅種のキツネが埋葬された1500年前の墓が発見される