元セクシー女優でフリーライターの「たかなし亜妖」がお届けする連載コラム。2016年に「ほかにやることがなかったから」という理由でセクシー女優デビュー。女優生活2年半が経過したところで引退を決意し、現在は同人作品やセクシービデオの脚本など、あらゆる方面で活躍中。

セクシー女優の体型維持にまつわる裏事情

 ある程度の容姿レベルに達していなければ、セクシー女優はデビューも継続もままならない。たとえスタートラインには立てても専業で食べられないとか、活動期間が1年と持たないとか、今はなかなかシビアな世界だ。トップを張る面々は必ず顔が可愛くて何らかの特徴があるため、「個性」が重視されやすい。

 ただ一般の芸能人に比べると、体型に関するジャッジはやや甘め。出るところが出ていれば少しくらいポヨンとしたお腹でもまぁ許されるので、名前が売れてから体重が明らかに増える女優がとても多い。というか、彼女たちはある程度仕事が回るとほぼ必ず「一回は太る」。実際に「応援している推しがどんどん肥えてきた……」なんて経験をしたユーザーは多いのではないだろうか。

 最初から最後まで全く同じボディをキープできる人は少なく、誰もが一度はポヨッとしてしまうのには理由がある。今回は彼女たちが「太ってしまう理由」についてお話していこう。

◆食べるものが贅沢になる

セクシー女優、売れると太りやすくなる問題」に関する理由は様々だが、体重が増える原因はどれも職業病的なものと考えてほしい。

 昔に比べて単価が下がったとはいえ、セクシー女優は相変わらず高収入の職業だ。売れっ子なら単体作品をいっぱい出せるし、数か月先までスケジュールが埋まる。どんな女性でも月収3ケタ万円や、稼働時間が少なく月数十万を手にする可能性を秘めた世界である。

 収入が上がれば金銭感覚が変わるのは当然のこと。お金が入る→生活水準が上がる→徐々に食べるものが贅沢になり、焼肉やちょっと高いお寿司もお酒も我慢せずにお腹いっぱい食べられるとなれば、一気に食事が楽しくなってしまう。「食」に目覚めれば太りやすくもなるので、気づくと体重増加まっしぐら……という女優は多い。

◆お金も時間も余り、結果的に食べてしまう

 たまにいる、「暇だと何か食べちゃう人」。手持無沙汰だと食に走るタイプは、セクシー女優になると太る傾向が強い。彼女たちは昼間に働く社会人とは違い、週5日×8時間勤務といった概念がない。毎日決まった時間と場所へ行く必要がないため、仕事がなければ完全に自由の身だ。

 会社勤めの人間より明らかに自分の時間を取りやすいし、女優によっては「基本的に暇です」なんて人も多いから、食に走りまくると確実に太る。おまけにお金が入れば徐々に電車を使わなくなり、移動はタクシーがメインになる人も。お金と時間があるうえに運動をしなければ、あっという間に体重が増えてしまいがちになる。

 また、多忙すぎる、ファンがめんどくさい、キャラ作りがだるい、本当は家で寝ていたいのに……など人前に出る者にはありとあらゆるストレスがのしかかる。自分で選んだ道とわかっていても、時に割り切れないのが人間というものだ。

 ストレス発散方法は人によって異なるものの、“食ってモヤモヤを解消する”タイプは結構多い。

 一般人でも「上司がむかつくから今夜はやけ食いだ! やけ酒だ!」なんてのがあるが、それと全く同じ感じ。特に精神的負荷が強い職業だと「イライラする=食べる」となりやすいため、売れっ子ほど太りやすいのはストレスが関係するといっても過言ではない。

◆仕事続きで不規則な生活が災いする

 もっとも悩ましいのが、仕事による不規則さで体型が乱れること。売れっ子女優だと毎日が現場続きで自炊をする暇なんてないし、口にするのは制作が用意したお弁当かコンビニなどで買ったツナギ(お菓子や軽食のこと)。脂の摂り過ぎや野菜不足で太るなんてのは、決して珍しい話ではない。

 体力勝負の仕事だからこそ食事を一切しないのは難しいし、仕事の都合上撮影が連チャンになれば睡眠時間3時間とかも普通。健康的な生活から遠ざかる要因といえば多忙・睡眠不足・ストレス。女優業はこのトリプルコンボを食らいやすいため、「嫌でも太ってしまう」パターンに当てはまるケースもよくあることだ。

セクシー女優の体型管理の難しさ

 体型管理も仕事のうちだが、職業上仕方がない部分も多い。ぽっちゃり系の需要も多く、芸能界に比べると脱ぎの世界は体型に関して寛容なので、意識が甘くなりやすい。これはセクシー業界だけではなく、実はグラビアアイドルなんかも割と同じような概念を持つ。

 細身ならスレンダー系として売り出せるし、元がガリガリならちょっと肥えても普通体型レベルなので許容範囲。むしろ健康的でいいなんて意見が上がれば当の本人も痩せようなんて意思が芽生えづらくなり、マネージャーとしても指摘をするまでに至らない。

 また、バストヒップが大きければ肥えてもむっちり系キャラとして売り出せばOKなので、“その手の客層”に刺さりやすくなる。適材適所という事実をわかってしまえば、体重が増えてもどうにかなるのが、この世界の特殊なルール。ちょっと太ってもオファーを取れることが多いので、相当なプロ意識がない限りデビュー時から変わらぬボディを保つのは非常に厳しい。

◆太り過ぎると仕事がなくなる恐れも

 とはいえ、「太っても全然大丈夫! だって肥えてもその手のユーザーに需要があるんだからサ!」とお気楽に考えるのはNG。女優それぞれのキャラクターがあるし、体重増加によって今までのイメージが崩壊すればあっという間に仕事がなくなる。特にスレンダー系で売り出していた場合だと、細身女性好きのファンが集まるので、既存の客が一気に離れる恐れがあるのだ。

 いくらデビュー時からムチムチキャラだったとしても、あまりに度が過ぎると「ぽちゃで可愛い」からただのドスコイお相撲さんになり、“可愛らしさ”が抜ければ当然ファンはいなくなる。

 また専属だった場合はメーカーの看板となるので、見た目に関してかなり厳しい。メーカーの許可なく髪を切る、カラーを変える等がご法度であり、人によってはカラコンの有無まで決まっているため、当然ながら体重の増減も大きく関わってくる。あまりに肥えすぎて途中で契約を打ち切られるケースも、実際に起こり得る悲しき事例だ。

◆太ってしまうと行き先は先細ってしまう

 ぽちゃでも生き残れる可能性はあるものの、やはり行き過ぎると道はどんどん先細っていく。体重が増えすぎるといずれマネージャーから指導が入るか、本人が危機を感じてダイエットに励むかして、女優生命を引き延ばしていくのだ。

 実際自分も、女優を続けている間に太ったうちの1人。私の場合は売れてなかったくせに体重だけは増えるという最悪のケースだったけど、要するにお金があって時間を持て余すと人は肥えるのだと、あの時学んだ。

 話は逸れたが、セクシー業界は太りすぎるとダメなものの、ある程度の体型には寛大である。AタイプにはAタイプのファンが、BタイプにはBタイプのファンがつくので、許容範囲はなかなか広い。「業界が特殊」と言われる理由には、たぶんこんなところも関係していると思う。だって一般では受け入れづらい概念が、当たり前のようにこの世界でまかり通っているのだから。

文/たかなし亜妖

【たかなし亜妖】
セクシー女優のフリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ソーシャルゲームシナリオライターを経て、フリーランスへと独立。WEBコラムから作品レビュー、同人作品やセクシービデオの脚本などあらゆる方面で活躍中。

―[元セクシー女優のよもやま話]―


元セクシー女優で現在はフリーライターの「たかなし亜妖」