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 本と一緒に蜂の貸し出しはいかがですか?といわれたら、つい耳を疑いそうだが、その図書館は、事前にレクチャーを受けた人に本物の蜂を預けて飼育させてくれるのだ。

 カナダのウェストバンクーバー記念図書館は、毎年冬に蜂を貸し出すユニークなプログラムを3年前から続けている。

 これは同館独自のプログラムで、その目的は、生態系を維持するのに大切な花粉媒介者である「蜂に関する基礎知識」を人々に教え、育てた蜂を環境に役立てることだという。

【画像】 カナダの図書館が実施する蜂の貸し出しプログラム

B.C. library creates buzz with bee lending program

 カナダブリティッシュコロンビア州のウェストバンクーバー記念図書館で貸し出すのは本だけじゃない。

 ここではなんと蜂(ハチ)を借りることができる。そのハチたちは繭の中のさなぎの状態で、小さな「家」に収まったまま貸し出されるので、そのまま持ち帰ることができる。

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 ただ、いきなりすぐに始めることはできない。希望者はまず、この蜂に関する1時間のレクチャーを受けるというきまりがある。

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 そこで蜂の暮らしやお世話のしかた、家のお手入れなど基礎的なことや安全に関する知識を身につける。それからハチの家を受け取る、という流れだ。

貸し出すのは受粉が上手な刺さない蜂

 この図書館で貸し出す蜂は、Blue Orchard Masons (ブルーオーチャード メイソン:Osmia lignaria)という種だ。カナダのブブリティッシュコロンビア州原産で、受粉が非常に上手なハチとして知られている。

 見た目はいわゆる黄色と黒の縞々のミツバチとは違い、黒くて少し青みがかっている。

 ブルーオーチャード メイソンは一般に、他の蜂とは違い単独で生活するため、働き蜂は存在しないという。彼らの場合オスの寿命は極端に短く、繁殖時期以外の家にはメスしかいない。

 なおオスはというと、繭から羽化して成虫になり、まもなくメスと交尾し終えたら、数日内に死ぬのが一般的だそうだ。

 その後は、メスが花粉や花の蜜を材料にして営巣し、完成した巣の中に産卵する。孵化した幼虫は、繭を作ってさなぎのまま越冬。そして春に羽化して成虫になる。というサイクルらしい。

 なおブルーオーチャード メイソンは温和で、刺すことはめったにない。またもし刺されても針には棘も無いのでさほど痛くないそうだ。

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image credit:WVML

幼虫たちが繭を作ってさなぎになったら図書館に返却

 利用者たちが図書館から持ち帰る蜂の家は、ブルーオーチャード メイソンを30年間飼育しているタレン・アークハートさんと彼女の父親が設計したもの。

 その家は、長さ10センチ程度の筒の中に葦の茎を差し込んだもので、茎の中に蜂の繭が入っている。つまりこの茎が巣の代りになってるわけだ。

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 その家を裏庭やベランダに吊しておくと、春に羽化した蜂たちが卵を産み、そこから幼虫が孵ったら育児のために花粉や花の蜜を運んでくる。なお設置場所は3階以下の高さ制限があり、4階以上は不可だそう。

 その後、幼虫たちが葦の中に繭を作ってさなぎになると、利用者たちは家を持って再び図書館に行く。集まった利用者たちは家を解体し、残った繭を出す作業をする。このイベントは1月から2月に行われる。

 図書館ではそれらの繭の一部、10~15個の繭をまた新たな家に収め、次回の希望者に貸し出すが、残りの繭は利用者が自分で持ち帰ることもでき、次回借りる予定の人に譲ってもいい。

 その後、繭から成虫たちが出てきた時がライフサイクル一巡の合図だ。そこで約1年間にわたるブルーオーチャード メイソンの貸し出しプログラムが完了となる。

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蜂のおかげで植物はぐんぐん育つ

 このプロジェクトが実現し、さらに3年も続いているのは、この種の蜂を30年間飼育してきた養蜂家のタレン・アークハートさんのおかげだ。

 アークハートさんは、この蜂の種はいわゆるミツバチとは違うと語る。彼らは蜂蜜は作らないが、とても穏やかで育てやすく、どこにいっても花の受粉を助けてくれるという。

このプログラムで、私の考えていることが伝えられたらうれしいです。ミツバチと同じぐらい重要な蜂がいることを知ってほしいです。

私たち人間は不器用で、自然や生き物に最善を尽くすことも上手にできません。ですからこのプログラムでも、教える立場の自分はまず、この種の蜂について学んでもらい、それから家を託すことにしました。

ブルーオーチャード メイソンはとても魅力的な蜂です。一度始めたら夢中になるでしょう。彼らはとてもおとなしいし裏庭で簡単に飼育できますよ。

 図書館の活動だから、読書家の人たちの新たな趣味にもなりそう。

 蜂に関する学びと実践が一度にできるこの取り組みが広まれば生態系が豊かになる。飼育を通じて自然への関心も高まりそうだ。

References:reshareworthy / nsnews / youtube / wikipediaなど /written by D/ edited by parumo

 
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