ヒゲ

アメリカで、救急救命士の養成学校に通う男性が、ヒゲがあるために実技訓練の参加を拒否され退学に。のちに「宗教差別」だと学校を提訴した。『Miami New Times』『JUSTIA(政府運営の訴訟事件データーベースサイト)』などが伝えている。

 

■「ヒゲ」を注意された訓練生

2023年8月、アメリカ・フロリダ州在住の男性(30代前半)が救急救命士の資格を取得するため、マイアミ・デイド郡消防局が管轄する養成学校に入学した。

最初の数週間は座学の授業を受けていたが、実技訓練を直前に控えたタイミングで、講師から「ヒゲを剃るように」と言われたという。

男性は宗教上の理由からヒゲを剃らないことを説明したが、翌日の昼休憩中にも講師がやって来て、「ヒゲを剃らなければ、消防隊員とともに救急車に乗る訓練を受けることができません」と説明されたそうだ。

 

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■入学前に許可を得ていたはずが…

職務規定上、救急救命士はマスク着用が必須だ。しかしヒゲがあるとマスクの密着性が薄れてしまうため、医療従事者には敬遠されがちだという。

CDC(アメリカ疾病予防管理センター)のマスク着用ガイドラインでは、ヒゲを生やすこと自体は禁止されていないが、制限はある。具体的には、N95マスク(微粒子用マスク)の密閉性を阻害しない程度のヒゲに留める、といった具合だ。

男性は正統ユダヤ教徒で、ヒゲを剃らないと決めていることを、入学時のオリエンテーションで学校側に相談していた。この時に責任者から、「ヒゲの長さを1.5ミリ以内に留め、きちんと整えるのであれば、マスク規定の範囲内で問題ない」と説明されたという。

 

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■退学するも授業料は一部返還のみ

そうした説明があったにもかかわらず、学校側はヒゲの有無について、座学はOKだが実技訓練はNGという対応を取ったのだ。

このまま実技訓練に参加できなければ救急救命士の資格を取得できないため、男性は退学を余儀なくされてしまった。そこで支払い済みの授業料の全額返金を求めたが、学校側は男性の「自主退学」を理由に、一部返金にしか応じなかったという。

 

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■「宗教差別」で学校を提訴

今年4月3日、男性は差別により不当な扱いを受けたとして、養成学校に対し支払い済みの授業料をはじめ、懲罰的損害、精神的損害、弁護士費用などの賠償金の支払いを求める訴訟を提起した。

訴状内で男性の代理人弁護士は、男性がユダヤ人だったことで「差別された」と主張。以前、同養成学校には顔ヒゲを生やしたユダヤ人ではない訓練生がいたが、問題なく訓練プログラムを受講している点を挙げている。

これに対し学校側は、「訴訟中の案件のためコメントを控えます」などと各社取材に答えている。

「ヒゲ」を理由に訓練参加を拒否され退学に 救急救命士志望の男性が養成学校を提訴