帝国データバンクは2024年4月7日ゲームセンターゲームセンター)の倒産・廃業が2年連続で増加したことを発表した。ゲームセンターの店舗数は10年間で8000店ほど減少しており、直近5年間では3割減。ゲームセンターが正念場を迎えている背景として、日本アミューズメント産業協会は電気料金の値上げを挙げており、営業利益は売上100円あたり平均で6円に留まっているという。

参考:【写真】格ゲー『ストリートファイター6』のゲーム画面

 現在、電気代の支払いは国民にとって大きな負担になっているが、 ゲームセンターも例外ではない。特にゲームセンターは電気を大量に消費するため、電気料金が少し上がるだけでも死活問題である。また、クレーンゲームの景品価格も上昇していることも大きく、様々なコスト増が倒産・廃業に追い込んでいるのだろう。本記事では、ゲームセンターが倒産する要因を考えていきたい。

(参照:帝国データバンク 「ゲームセンター」の倒産・休廃業解散動向https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p240404.html)

ゲームセンターの倒産の背景に“価格転嫁の難しさ”アリ

 コスト増の歯止めがかからない場合、他の産業であれば“価格転嫁”という選択肢がある。しかし、ゲームセンターでそれを実行に移すのは非常に難しい。なぜなら、ゲームセンターの料金は100円単位(小銭)で上げるしかないため、100円で採算がとれない場合は200円に値上げしなければいけないからだ。ばこれまでの倍額と考えると、値上げのハードルは高いだろう。

 クレーンゲームであれば需要の高い商品を景品にすることで、200円に値上げしても、ある程度の利用者数は見込めるかもしれないが、アーケードゲームはどうだろう。家庭用ゲーム機のクオリティが上がった今現在、ゲームセンターまでの交通費に加えて、これまでの倍額を支払ってアーケードゲームに興じるプレイヤーは多くはないはずだ。

 日本アミューズメント産業協会は「近年はクレーンゲームが主流となり、アーケード機を主流とする従来の店舗レイアウトでは集客力の維持が難しい局面を迎えている」と分析しているが、価格転嫁をやりやすいクレーンゲームが主流になっているのは、ある意味当然の流れなのかもしれない。

ゲームセンターの柱“クレーンゲーム”の難易度を上げる弊害

 とはいえ、クレーンゲームを主流にした生き残り戦略が最適解なのかは疑問である。クレーンゲームを主流とした場合、利益の多くをクレーンゲームで稼がなけれないけない。アニメ『らき☆すた』内で柊かがみクレーンゲームで散在する様を見て、泉こなたが「偉い人は言いました。UFOキャッチャーは貯金箱であると」と口にしていた。まさにかがみのように貯金箱にお金を入れるようにクレーンゲームで散在してもらうことがビジネスモデルになると、必然的にクレーンゲームの難易度を上げるしかない。

 ただ、クレーンゲームの難易度の高さに不満を持っている人はすでに多い。合同会社Makimaが2023年7月に発表した調査結果によると、「ゲームセンターに一番求めることを1つ教えてください」という設問の1位は『クレーンゲームの取れやすさ』(37%)だった。裏を返せば、クレーンゲームで景品があまりに取れないことに不満を持っている人は少なくないと言える。店舗を維持するためにクレーンゲームの難易度アップに走ると、ユーザー離れを加速化させ、中長期的に見れば得策ではない。

(参照:PRTimes 【調査レポート】ゲームセンターに一番求めることを1つ教えてください。1位は「クレーンゲームの取れやすさ」でした!https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000095.000116068.html)

 そもそも、昨今は“コスパ”を重視する人が増加している点も無視できない。一般社団法人日本カプセルトイ協会が2024年2月に発表した調査内容によると、「ガチャガチャ」や「ガシャポン」と呼ばれる「カプセルトイ」の2023年度の市場は2022年度の調査(720億円)から159.7%アップとなる約1150億円だった。カプセルトイ市場が右肩上がりを続け、全国にカプセルトイ専門店が増加している状況を鑑みると、「確実に景品がほしい」と考える人は増えているように思う。

(参照:@Press カプセルトイ市場動向調査 令和5年度(2023年)結果報告  製造元出荷ベースでの市場規模は約1,150億円https://www.atpress.ne.jp/news/385230)

 仮にほしい景品が当たらなくてもSNSで物々交換する文化が根付いており、クレーンゲームよりも効率良くお目当ての景品を手に入れやすい、という背景もある。景品を取る過程を楽しむことがクレーンゲームの魅力ではあるが、コスパ志向が定着している昨今において、その過程はただ単にコスパの悪い行為と映っているのかもしれない。

 景品が確実に手に入らないクレーンゲームを主流にすると、ゲームセンターは今後も苦戦を強いられる可能性は低くないが、かといってアーケードゲームにもこの状況を覆す切り札があるわけでもない。この状況から、どのようにゲームセンターが生き残っていくのか、今後も注視していきたい。

(文=望月悠木)

画像=Unsplashより