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 天を突く勢いでそびえたち、重力に逆らうように配置された巨石建造物は、太古の昔から人々の憶測の対象、謎の源となってきた。

 すぐ頭に浮かぶのは、ストーンヘンジのような有名どころかもしれないが、世界中にはほかにもこうした例がごく普通にあり、ヨーロッパだけでも少なくともおよそ3万5000も存在すると推定されている。

 こうした巨石構造物(メガリス)は、なぜ、いつ、どのようにして建てられたのか?最も古いものは?

 ここでは世界に点在するメガリスの例を取り上げ、その起源と意味について探求していこう。

【画像】 巨石建造物、メガリスとは?

 巨石建造物(メガリス)は、古代の人々が、記念碑、墓、その他の建物として造った大きな石を使った建造物のことを意味する。

 メガリスという名称は、古代ギリシャ語で大きいを意味する〝メガ〟と石を意味する〝リトス〟からきている。

 その起源は古いが、本格的に研究され始めたのは19世紀後半になってからのことで、正式な科学としての扱いではなかった。

 巨石として認定されるにはどれくらいの大きさや重量さが必要なのか、標準化された定義があったわけではなく、その類型は今日よりも限定的だった。

・合わせて読みたい→新たに発見された先史時代のストーンサークル、雷を呼び寄せるために意図的に建設された可能性(スコットランド)

 リュック・ラポルテ氏らの著作『Megaliths of the World』の中には次のようにある。

巨石建造物という言葉はよく聞くが、場所の違いによって研究者や一般人の解釈の仕方はそれぞれ違う

 長い間、巨石建造物にはふたつのタイプがあるとされてきた。

 まずは、英国の諸島やフランスのカルナック地方、チベットのドゥリング、イエメンのティハーマで見られるようなメンヒルという立石だ。

 このタイプの中には世界でもっとも知られている巨石もいくつかあるが、その正確な目的や社会的意味は、たくさんの仮説や示唆、当て推量はあれども、依然として決定的なものはない。

 もうひとつは、ドルメンと呼ばれる墓や葬儀の部屋だ。

 これらは円形または多角形の形をしていることが多く、たいてい大きな石のブロックが使われている。土で覆われていたり、石で囲まれ古墳のようになっているものもある。

 ここにはたいてい石板があって、それを動かして密閉することができるようになっている。

 時代が進むにつれ、イースター島モアイ像のようにメンヒルでもドルメンでもない形状のものが出てくるようになり、巨石建造物のカテゴリーの解釈は拡大され、世界中にあるほかの形態のものも含まれるようになった。

・合わせて読みたい→新石器時代の遺跡、ギョベクリ・テペには高度な幾何学的知識が使用されていた(イスラエル研究)

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新石器時代後期に建てられたとされるスコットランド、カラニッシュのストーンサークル / photo by iStock

では、世界の巨石建造物の中で最も古いと言われるものを3つほど見ていこう。

ギョベクリ・テペ(トルコ)

 古い巨石建造物といえば、トルコの寺院遺跡ギョベクリ・テペがすぐに浮かぶだろう。といっても これはあくまで推測だが、およそ1万1500年にアッパー・メソポタミアで建設されたとされている。

 巨大なT字型の柱など円形構造物がいくつかある。柱の一部には複雑な彫刻が刻まれている。

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現在のトルコにあるギョベクリ・テペ。世界最古の寺院建造物とされている / image credit:iStock

 最近の研究から、この類まれな遺跡は奇妙に配置された構造物の連なりではなく、特定の幾何学模様をベースにした複合体として設計されたものだと結論づけられた。

 つまり、この遺構は農業が始まる前に建てられ、周辺に住んでいた人たちは狩猟採集民族だったことがわかる。

 ほかの複雑な建築物が現れるのは、それから数千年後のことだ。

 当然のことながら、この建造物の謎を説明しようとする考古学者や一般人による数多くの憶測が生まれた。

 古代人はこれほど複雑な構造物を建築できるほど組織化されていなかったと思い込んでいたため、長い間失われていた高度な文明が存在したとか、エイリアンの影響だといった主張をする者もいた。

 だが、狩猟採集民族がなぜこれほどの巨石建築物を造ることができたのかについて、専門家は十分な説明をしてきている。

ナブタ・プラヤ(エジプト)

 英国のストーンヘンジと同様、エジプトナブタ・プラヤは、今日の世界中の巨石建造物は時間の経過と季節の移り変わりを追跡するためのツールとして設計されたと考えられる。

 こうした天体時計は星の動きを追ったり、毎年の夏至や冬至、春分や秋分の太陽の位置を測定するために重要だった。

 ヨーロッパの巨石建造物のほとんどは、6500年から4400年前の間にこうした目的で建造されたが(ストーンヘンジはおよそ5000年前)、これらは最古のものではなかった可能性がある。

 ナブタ・プラヤは、現在最古の環状列石だと言われていて、最古の天文台である可能性もあるが、議論はある。象徴的な共同墓地の一部である石碑の可能性もある。

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アスワンヌビア博物館によるナブタ・プラヤの環状列石の復元 / image credit:WIKI commons

 この遺跡はおよそ7000年前に遊牧民のルアト・エル・バカールによって造られたとされていて、太陽の動きを追跡し、モンスーンの到来を予測するために使ったと考えられている。

 当時、石が建てられているこの場所は砂漠だったが、雨季になると湖が出現する緑豊かな環境だったという。

 この遺跡は1970年代に、ダム開発によって損傷の危険があるとされる古代建造物を見つけ移転するため、ユネスコから資金提供を受けた取り組みによって初めて確認された。

 ここからは、新石器時代中期の竃、文化的遺物、家畜の骨など多くの遺物が見つかっていて、一年の特定の時期に遊牧民がナブヤ・プラヤを訪れていたことがわかる。

カラクプーマ(ペルー)

 エジプトピラミッドが出現する何世紀も前、ストーンヘンジが建造されたのと同時期に、現在のペルーの狩猟採集民族は独自の巨石建造物を造っていた。

 ペルーアンデスのカハマルカにあるカラクプーマの遺跡では、古代の人々が巨石を同心円状にはりめぐらした周囲18メートルの壁を造った。

 現在、これはおよそ4750年前のものとされており、この地域最古の円形広場とされている。

 ここも、農業の出現、陶器の発達よりも何世紀も前に建造された。

 現在の説では、ここには儀式的な意味があり、少なくとも紀元前1800~紀元前200年の間、定期的に祭祀の場として使われてきたのではないかと考えられている。

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カラクプーマの円形広場 / image credit:oohey et al .、doi: 10.1126/sciadv.adl0572

さらに古い巨石建造物が発見される可能性も

 世界のさまざまな地域には、魅力的な巨石建造物の例がたくさんあり、それぞれに独自の物語とそれらがそこにある意味が存在する。

 ここでとりあげた例は、巨石建造物の歴史がそれぞれの民族や文化に特有のものではなく、人類の深い歴史の表現であることを示している。

 古代建造物の年代を正確に特定するのはとても難しく、新たな発見も続々出てきている。

 こうした建造物がもっと出現すればするほど、その重要性についての私たちの理解も進むことだろう。

References:What Are Some Of The World's Oldest Megalithic Structures? | IFLScience / written by konohazuku / edited by / parumo

 
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