4月1日に多くの企業が入社式を行い、新入社員が社会人への一歩を踏み出した。SNSでは「早く一人前になれるよう頑張りたい」「果敢に挑戦したい」といった抱負も見られた。その一方で、新入社員からの退職代行依頼が相次いでいるという。退職代行サービス「モームリ」を管理するアルバトロス東京都大田区)の代表取締役・谷本慎二氏に話を聞いた。

【画像】入社すぐ辞めた新卒、退職理由は?(上位5つ)

 モームリは、2022年3月15日にサービスを開始した。依頼者はまず、Web上でヒアリングシートに記入する。ヒアリングシートの回答をもとに、無料で打ち合わせを実施。入金などのやりとりを経て、モームリから依頼者が勤務する会社へ連絡する流れだ。

 退職確定後は、会社とのやりとりでの確定事項を依頼者に共有する他、退職書類のやりとり・不備の確認といったアフターフォローも行う。料金はアルバイトが1万2000円、正社員が2万2000円だ。昨年度は約6000人が利用しているが、今年度はそのペースを上回る勢いで依頼者が増えているようだ。

●入社から10日、65人の新入社員から依頼

 谷本氏によると、4月1~10日までの依頼者は合計449人。そのうち新入社員からの依頼は65人で、全体の13.5%を占めた。「昨年の依頼者数は4月で20~30人程度でしたが、今年はメディア出演などの影響もあり殺到しています」 (谷本氏)

 入社直後に退職を希望する新入社員の退職理由には、どのようなものがあるのか。実際の声をいくつか紹介しよう。

 「事前に聞いていた内容と違ったり、聞いていなかったりしたことが多かった。自分がやりたかったことではないため、キャリアプランが不安になり、目標としていた仕事を探し直したい」

 「上司や同僚に対し不満はない。自分自身と会社の風潮が全くマッチしない状態が続き、一気に心身ともに落ち込んでしまった」

 「体力・精神面がどちらも辛くなった。バイトの時から誰にも相談できず1人で抱え込み、入社後も毎日苦痛だった」

 「研修初日からずっとモヤモヤしていて、夜中に泣き出したり食欲が無くなったりと精神的に限界が来てしまった」

 こうした退職理由のうち、「業務内容や雰囲気が合わない」が最多を占めるという。

●新入社員の退職理由を分析すると……

 新入社員の退職理由に、何か変化はあるのだろうか。今年と昨年の退職理由を集計し、上位を比較した。

 注目すべきは今年2位と昨年4位だ。順位が入れ替わっており、谷本氏は「『事前の会社説明で言われていた内容と実態が違った』という理由が昨年より多く挙げられている印象があります」と指摘する。

 新入社員による入社直後の退職について、谷本氏は今後さらに増加すると予想している。大きな要因の1つがSNSだ。SNSが普及したことで、自身の仕事の不満や愚痴に対する、他人からのリアクションを目にすることができるようになった。その結果、自身の労働環境がおかしいことに気付きやすくなっているのだという。

 退職代行サービスについて、谷本氏は「無くなることが一番です」と話す。その一方で、日々の問い合わせでは、劣悪な労務環境や違法な対応をとる企業も散見されるそうだ。「昔に比べると簡単に退職をする方が増えている印象を受けます。しかし、それは時代の変化もあるため、受け入れる企業側の考え方も変えていかなければいけないとも感じます」

新入社員からの退職代行依頼が相次いでいるという(提供:ゲッティイメージズ)