共働き夫婦の子どもが保育園から小学校に上がることで、仕事と子育ての両立が難しくなる状況を指す「小1の壁」。賃金が上がらず、物価は上昇を続けるなか、このような壁にぶつかる共働き夫婦は今後ますます増えるでしょう。日本では、共働きを始めとした子育て世帯を支援する育児支援制度が充実してきました。しかし、制度があっても実際には使えないという現状があり……。本記事では、ライフキャリアコンサルタントの江野本由香氏が、日本の育児支援制度について解説します。

育児支援制度を上手に活用する

仕事も、子育ても、自分らしく後悔のない人生を歩んでいくために、働く親として何を考え準備しておけばよいのでしょうか。

1992年に施行された育児休業法。それまで日本の育児休業に関する法律は、雇用は守られるけれど、無給であったり、雇用主の努力義務であったり、対象者が公務員など一部に限られていました。

そのような状況のなか、男性・女性にかかわらず、すべての働く人を対象としたことは、たった1年、無給にもかかわらず社会保険料は負担せねばならない、といった法律であったとしても画期的なものでした。

あれから30年以上経ち、休業できる期間の延長、社会保険料の免除、雇用保険から支給される給付金など、日本の育児支援制度は充実の一途をたどり、制度としては海外と比較しても恵まれているといえます。

充実した育児支援制度があるのに…

しかし、しばしば聞かれるのは、「制度があっても使えない」という声。制度を利用するためには職場の理解が必要なのです。

日本の育児支援制度は小学校入学前までの制度が充実していて、それ以降は会社に拠るところが大きいという特徴があり、「小1の壁」「小4の壁」といった言葉が存在するのは、それも理由のひとつです。

また、国が定めた法律ではなく、会社の制度としての待遇はフルタイム勤務や正規雇用を基準に考えられているため、パートタイム勤務や非正規雇用の場合、勤務日数や勤務時間、契約期間など契約内容によっては十分に制度が使えないこともあります。

女性の非正規雇用の比率が高いことを考えると、「恵まれているはずの育児支援制度の恩恵を、すべての働く女性が受けられているわけではない」ともいえるでしょう。

一方、仕事・子育てに対する価値観は人それぞれ。子どもを産むか産まないかの選択も人それぞれ。親の役割は、子どもの成長段階や状態によって変化します。

どれほど制度を充実させたとしても、すべてが自分にマッチして満足するのはむずかしいことです。であれば、いまある育児支援制度を上手に使いながら、幸せな子育て期間を過ごし、自分らしいキャリアを築いていくことを目指しませんか?

江野本 由香 ライフキャリアコンサルタント

※本記事は『キャリアと子育てを両立する!自分と家族の価値軸で築く幸せな生き方』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

(※写真はイメージです/PIXTA)