4月27日(土)~6月23日(日)の期間、兵庫県立美術館ギャラリー棟 3階ギャラリーに巡回する『キース・へリング展 アートをストリートへ』の音声ガイドを務める磯村勇斗と写真を出品している村田真からのコメントが到着し、展示内容とオリジナルグッズも公開された。
1980年代初頭、ニューヨークの地下鉄駅構内の空いた広告板に貼られた黒い紙にチョークで描く「サブウェイ・ドローイング」を開始したへリング。コミカルで人々の思考や想像力を刺激するイメージは、瞬く間にニューヨーカーを魅了。猿のような動物が大勢の人びとに持ち上げられている「無題(サブウェイ・ドローイング)」のように社会風刺的な作品や、新年の挨拶のようなコミュニケーションツールとしての作品も制作された。
同展では日本初公開を含む150点の作品を通して、社会に潜む暴力や不平等、HIV・エイズに対する偏見と支援不足に対して最後までアートで闘い続けたヘリングの世界を体感できる。神戸展のメインビジュアルは、フランシス・ベーコンやジャン=ミシェル・バスキアの展覧会を手がけた80年代のソーホーの大手画廊、トニー・シャフラジ・ギャラリーより1983年に出版された版画シリーズのうち「無題」。同作には蛍光インクが使われ、ブラックライトにより光を放つ。
幅6メートルの超大型作品も登場。『スウィート・サタデー・ナイト』のための舞台セットは、黒人歴史月間にニューヨークの芸術劇場ブルックリン・アカデミー・オブ・ミュージックで行われたダンス・パフォーマンスの舞台背景として制作された。同舞台は、 1985年に上演された黒人のストリートダンスと、社交ダンスの誕生300周年を記念したパフォーマンス。大画面いっぱいに黒い線でダンサーが踊るように描かれており、この作品の前で踊られたブレイクダンスが絵に息を吹き込んだ。
そしてへリングのトレード・マークにもなっている、版画のシリーズ「イコンズ」にも登場する光り輝く赤ん坊、通称ラディアント・ベイビーも展示。ヘリングは赤ん坊が人間の完璧な姿であり、社会の色に染まらず純粋無垢で、未来への希望の象徴であると考えていた。ストリートでマーカーやチョークを使って絵を描き始めてから、死の寸前まで描かれたベイビーは今でも未来を象徴している。
同展には1982年12月~1983年1月にかけ約10日間、ニューヨークでキース・ヘリングを密着取材した、美術評論家の村田真による写真資料26点も出品。
●村田真コメント
本人を知らずに作品を見ていた時は、ポップで漫画チックで子どもが喜びそうな作品を描く人だと思っていました。本人も、あまり大人なアーティストではないのかな? と。しかし、インタビューを始めると理路整然と話し出す。アメリカ・ニューヨークの厳しい環境を背に、深く考えた上で活動しているんだと思いました。子どもっぽい顔をしているんだけど、地下鉄に乗り、駅が近づくたびに獲物を探すように目が鋭くなる。そして駅の広告版の黒いスペースを探して、ドアが開いた瞬間に走り出していく。一生懸命、僕も追いかけました(笑)。
当時のカメラはデジカメじゃないしスマホも無い。それに、夜にカメラなんかを担いで地下鉄に乗ったら「絶対に盗られる」っていわれていた時代。そこで、重い一眼レフのNikonのカメラを担いで、彼を必死に追いかけて取材しました。当時は自動の機能も少ないから、自分でシャッターを切って、ピントを1回ずついちいち調整しての撮影。なのに、彼はすぐにどっか行っちゃう(笑)。
子どもっぽいような感じがするけれども、まさに「ハンター」みたいな。そういう顔が見られたこともあって、すごく大変で、でも楽しい取材でした。
グミ 各972円 (c) Keith Haring Foundation. Licensed by Artestar, New York.
作品情報とともに展覧会オリジナルグッズも発表された。同展のためだけにデザインされたアイテムや、お土産にぴったりなお菓子などが登場。
トートバッグ 3,300円 (c) Keith Haring Foundation. Licensed by Artestar, New York.
音声ガイドは、かねてからキース・ヘリングの作品が大好きだったという俳優の磯村勇斗が務める。磯村は現在、キース・ヘリングが亡くなった31歳とちょうど同じ年齢。音声ガイドでは、キース・へリングが駆け抜けたおよそ10年のアーティストとしての人生をドラマティックに振り返ると共にそれぞれの作品の魅力もわかりやすく解説する。
●磯村勇斗コメント
チケットはイープラスほかプレイガイドにて販売中。
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