裏カジノオーナー生活保護受給者etc…。ヤクザをやめた中高年の現在地とは?’22年末時点での全暴力団勢力約2万2400人中、50代以上が54.9%。福岡県では指定暴力団の組長や組幹部が、’22年までの5年間で47%離脱。高齢化が進む中、元ヤクザ中高年の境遇を追う。

◆長すぎたヤクザ人生の先に待っていた悲喜交々の結末

【田中誠治さん(仮名)・48歳】

 東北地方の山間部に生まれた田中誠治さん(仮名)が裏社会に足を踏み入れたのは、成り行き同然だった。

「主たる産業もなく、住んでるヤツらはみんな目が死んでるような街でした。自分は働く気がなかったので高校卒業後にブラブラしていたら、地元の先輩に誘われたんです」

 先輩と一緒に、裏ビデオの販売や身分証の偽造販売など小さな違法行為を繰り返していた田中さん。そんななか、いつの間にか地元の暴力団に構成員として組み入れられていたという。

 シノギは「殺人以外は全部やった」。組員だった10年間に詐欺と空き巣で2回逮捕され、服役もした。最後は覚醒剤の密売に注力した。

「ある日、祖父が買いに来たのはびっくりしましたね。先輩が対応して俺は隠れてたんだけど、見つかってぶん殴られそうになって……お前が言えた立場かよって」

◆組を抜け出し、上京。だが問題を起こし……

 それを機に地元に嫌気が差した田中さんはほどなく出奔。組からは「飛んだ」形だ。そして昨年、あてもないまま東京に辿りつき、ネットカフェで寝泊まりをしながら歌舞伎町に入り浸った。そこで出会った人物のツテで風俗店に勤めたが、嬢に手を出し解雇され路上生活へ。

 その後、夜行バスで関西に流れ、現在は日雇い労働に従事している田中さん。労働意欲がないため、月給は9万〜10万円どまりで、簡易宿泊所代を引くと生活は貧しい。組の人間の追跡にも怯える毎日だ。

「飛んだ身分でこっちのヤクザにも入れないし、しばらくここにいるしか思いつかない」

 脱会届も出していないため、元暴5年条項の対象にもならない。未来は不透明なままだ。

■元暴5年条項とは?
暴力団排除条項の一つ。暴力団を脱退しておおむね5年以内の人物を対象とした規定で、多くの自治体が採用している。
5年経過していないうちは、業界や金融機関の独自データベースや警察への照会などをもとに「反社会勢力」とみなされ、銀行口座の開設、携帯電話、クレジットカード、各種ローンの手続きなどが制限される。

◆家、子供の塾などが契約不可。元ヤクザの家族へのとばっちり

 多くの元ヤクザ中高年が抱えるもう一つの問題が、家庭への影響だ。「5年条項」の期間を経過しても企業の個々の判断により、不利益が及ぶことがある。

 Aさん(40代後半)は5年前に暴力団を脱退した夫が自宅売却を断られ、理由は説明されなかった。そのため偽装離婚し、土地建物をAさん名義に変更。

「夫は自分のためにヤクザをやめてくれたし、仲もいいので、偽装でも離婚したくなかった。こんなことは孫に説明できない」

 10年前に小さな組織の組長をやめた男性(40代後半)と「年の差婚」したBさん(20代)は、いまだに住所が組の事務所と認識されているという。

「家電が故障して、買った量販店に修理を依頼すると、『そこは暴力団事務所ですよね』と……宅配を断られることもあります」

◆「ネットで名前を調べられているのでしょう」

 Cさん(40代)の夫が脱退したのは20年以上も前だが、今も車のローンが組めない。夫は一度、事件を起こして報道されたことがある。

「ネットで名前を調べられているのでしょう」

 Dさん(30代・2児の母)は夫の暴力団脱退後、5年たっても幼稚園や学習塾の契約ができない状態だ。

「クレジットカードが突然、スーパーで使えなくなり、恥ずかしい思いをしたこともあります」

 あくまで5年は「目安」。家族ともども、曖昧な運用に振り回されているのが現状だ。

◆元暴力団員が契約困難なもの

ETCのパソカ
使えず訴訟に至ったケースも

スーパーマーケットポイントカード
暴排条項のあるポイントカードのポイント分を「詐取した」と逮捕、不起訴になった例も

③都市ガス
ターゲットは組事務所などがメイン

④幼稚園、学習塾
学校側に暴排条項がある場合、学費支払いが拒否され実質的に入学不可能に。主に私立

⑤売買サイトでの販売者登録
「売り手」としてサイトに登録できない

⑥車や家、賃貸マンションの契約
個々の判断で却下されることも

⑦銀行口座
警察庁金融庁を通じて口座開設支援を要請したが、銀行個々の判断で断られるケースも

取材・文・撮影/週刊SPA!編集部 写真/Adobe Stock

―[[ヤクザをやめた]中高年の現在地]―


田中誠治さん(仮名)・48歳「逃げてきたはいいけど、どうしていいかわからない」